第八話
登校日の次の日。、電車に揺られ三駅移動し、駅に隣接した商業施設にやってきた。
未央から呼び出されたのだ。
「あ、せんぱ~いこっちです」
入り口でどこにいるか確認しようとスマホを取り出していると、中から未央が手を振りながら声をかけてきた。
「おまたせ」
「いえいえ、それより……どうですこれ?」
服の裾を持って聞いてきた。
「似合ってるんじゃないか?」
今日は薄いピンクのワンピースを着ていて、女の子らしさがまして見えた。
「はぁ、先輩それじゃあモテませんよ?」
「別に、モテる必要はないだろ?」
「そうでしたね、浮気したら怒りますよ」
「しないよ」
僕は未央の頭を撫でる。なんだか癖になるな。
「それよりも、何で制服なんですか?」
「落ち着くから?」
「はぁ、そうなんですね……まあ、行きましょう」
なんだろう、少しがっかりしているような。
ウインドウショッピングを開始する。
「今更だけど、何で先輩なんだ?」
「え、先輩ですよね? 学園の」
「同い年なんだよな?」
昨日留年したと言っていたので、聞いてみた。
「そうですけど。先輩は、先輩なんです」
よくわからなかったが、迫力に押されてそれ以上何も言えなくなる。
「あ、ちょっとすみません」
未央がレンタルビデオの前で立ち止まった。
「どうした?」
「いや、見たかった映画がもうレンタル開始みたいなんですよ」
ポスターを指さして、教えてくれる。
「借りとくか?」
「うん~。あ、先輩。この後、時間ありまくりですよね?」
「決めつけてるな。まあ、暇だけど」
「ですよね! せっかくですし映画見ませんか?」
「それはいいけど、どこで?」
「それは……私の家で何てどうですか?」
僕の反応を窺うように、見つめてきた。
「未央が良いなら、僕はいいけど?」
どうしてそんなに頬を赤くしているんだ?
「分かりました。では、行きましょう」
善は急げとばかりにDⅤDを借りて、モールから歩くこと十数分。閑静な住宅地に未央の家はあった。二階建ての一軒家で平屋に住む僕の家よりでかかった。
「入っていいのか?」
「もちろんです。ウエルカムですよ、先輩」
そう言われて家に入り、二階に上がり部屋に案内してくれる。
「……」
部屋の中はわりとシンプルで、ベットに小さ目のテレビ。女の子らしい3段のドレッサーがあり、他には部屋の真ん中に置かれた小さなテーブルが目に入った。
「先輩~。あまりじろじろ見ないでくれますか?」
未央に声をかけられて、我に返る。
「ごめん」
「お茶入れてくるので、適当に座って待っててください」
「ありがと」
部屋を出ていく未央にお礼を言う。
「あ、下着は二段目ですよ」
「触らないよ」
顔だけ覗かして、いらない情報をくれる。
少しの間落ち着かない時間を過ごして、未央が戻ってきた。
「おまっとさんです。て、何で正座してるんですか?」
テーブルの前で正座をする僕に質問してくる。
「いや……」
「もしかして、女の子の部屋が初めてで緊張してるんですか?」
「まあ、それなりに……」
「っっ先輩、可愛いです」
「はぁ、帰ろうかな」
笑いだす未央を見て、そう声を漏らす。
「すみません、先輩。機嫌を直してください。映画、見ましょうよ~」
立ち上がった僕の足をつかんでくる。
「仕方ないな」
「やった~。ではさっそく――」
未央はプレイヤーにDⅤDを入れ、部屋の明かりを暗くして、僕の横に座る。
「近くないか?」
肩が触れ合うくらいに、そばに座ってきたので聞く。
「え~。いいじゃないですか~。あ、始まりますよ」
未央の声でテレビに視線を向ける。
映画の内容は、世界のヒーロー協力して悪と戦うアクション物のようだ。
「――ぱい。ふふ、可愛い寝顔」
何故か上のほうから未央の声がする。
吐息を耳元で感じた。
「う……?」
「……」」
頬に柔らかいものが当たった気がして、目を開けると未央の顔がはなれていくのが見えた。
「未央?……なにして……」」
意識が徐々に覚醒していく。どうやら途中で寝てしまったようだ。
「あ、起きちゃいましたね」
「悪い、寝てたな」
起き上がろうとして、未央に止められる。
「もう少し……このままでいてください」
「重くないか?」
膝枕をしてくれていたのでそう返す。
「いえいえ、全く問題ないですよ」
幸せそうに笑顔を向けてくれる。
「外、なんか凄い音してないか?」
「え? あ、本当ですね。気が付きませんでした」
確認するために立ち上がり、窓に近づく。
「まずいな……テレビつけてくれるか」
窓の外は灰色の雲が広がり、雨が激しく降っていた。
「はいあいさ~」
テレビのニュースをつけてもらう。
「やっぱり」
「台風が直撃してますね~」
テレビでも突発的な台風の話題で盛り上がっていた。
「電車止まってるな」
スマホで交通情報を確認する。
とりあえず、母に帰れない事をメールで伝えた。
「どうしたんですか?」
「とりあえず、駅で電車が動くのを待つよ」
部屋を出ようとして声をかけられたので、そう返事する。
「ダメです。今日は泊まって下さい」
「でも、僕も男なんだぞ」
目を見つめて言う。
「先輩はヘタレなんで、そんな心配はないですよ」
笑いながらひどいことを言われる。
「あのな~」
「やっぱり……したいんですか?」
未央は座ったまま、目を潤ませて聞いてきた。
「ばか」
「痛っ」
頭をこずく。
「わかったよ、いさせてもらう。映画、ほかにないか?」
「う~ひどいです。映画ですね? いっぱいありますよ」
未央はすぐに笑顔に戻って、テレビの下からDVDを取り出す。
そこからお勧めの作品を、何本も見ていく。
夕食として、未央が作ってくれたミートソースパスタはすごく美味しかった。
続きは二十時を予定してます。 読んでもらえると嬉しいです