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TWO PUNKS 見張られて

 8月11日(木)

 1945時/平和荘103号室


「面白い人たちですね」


 俺と赤星は平和荘の一室、103号室の清掃を行なっていた。

 日向と月代は100円均一ショップで生活必需品の買い出しに行ってくれている。

 当然月代は嫌がったが、人の良い日向に付き合わされている。できた彼女でなによりだ。


「てか椎名さんみたいなのにマジで彼女がいるとか終わってますよ。あ、椎名さんがじゃないですよ。薫殿の感性がです。椎名さんは始まってすらいないので終わりなんて来ません」


 しかし赤星、俺にだけこの態度なのかと思いきや日向と月代に対しても不遜に振舞うのか。きっと関心のない者には礼儀正しく取り繕い、興味を覚えた者には素を見せるのだろう。

 なんと極端なコミュニケーション力、これも小学校三年生以降"学校に行っていない"が故なのだろうか。


「しかし信じるものなんですね、あんな与太話」


 この場合の与太話とは、先ほど俺が語った九州旅行のトラブルについてに他ならない。


「ちょっと語りたいって欲求ありません? まぁまぁの体験してますし」

「必要ない。正直に話したところで」

「得るものはない、わかってますよ。でも思い出すとコーフンしちゃうんです」


 恍惚とした表情の赤星はこちらへ歩み寄り、ぎゅむと俺の体を抱きしめた。


「暗い森の奥で出会った"奴ら"のヤバさ。そして――、椎名さん(あなた)のヤバさを」


 いいや違う、俺はヤバくなどない。

 壊滅的にヤバい人間は赤星ちひろ……お前の方だ。




ーー

ーーーー

ーーーーーー




 8月10日(水)

 0235時/某ダム森林


「消してください」


 虫と木々が鳴く闇の中、赤星は俺が持っていたLEDライトを手で押さえつけた。


「誰か、います」


 森の奥深くにぽつんと建つ、廃屋と思しき小屋の方向から俺たちは人の気配を感じ取った。

 茂みに身を寄せ、小屋を注視する。やはり人の気配がある。しかし光は見えない。


「見えます?」

「いや、闇が深すぎて見えない。でも複数の人間がいるのはわかる」


 彼らは明かりもつけずにひそひそと何かを話しているようだ。

 状況が工事関係者や行政の者ではないことを物語っている。


「豆連れてこなくてよかったです。絶対はしゃいで凸ってました。アレって多分、ヤバいですよね」

「ああ。ただなによりヤバいのは」


 俺たちの所在は既にバレているということ。


「あ!?」


 背後から何者かによって腕を掴まれた赤星は悲鳴をあげて慄いた。


「ッぐ」


 かくいう俺も、同じく背後から現れた巨漢から思い切り首根っこと片腕を掴まれ、地面に叩き伏せられてしまった。LEDライトなんて目立つものを使用していればこうなるのは必然だ。


「죽이고 싶지 않다면 침묵」


 ――そしてこの言語を聞いた瞬間、俺は腹をくくった。

 即座に空いた手で自身のベルトに手を伸ばし、護身用のバックルナイフを引き抜いて男の足の甲を突き刺す。


「아프다~~‼」

「せぇい‼」

「깜짝이야!?」


 俺が男から解放されたとほぼ同時に赤星は背後の男を投げ飛ばしていた。

 さすがの手際だ。男もまさか小柄な少女が柔を駆使するとは思わなかっただろう。


 すぐに脱兎の如く俺と赤星は元来た方向へと駆け出した。

 男たちの慌ただしい声を置き去りにすべく、とにかく全力で闇の森をひた走る。


「椎名さん手を!」


 必死の形相の赤星は並走しながら手を伸ばしてきた。

 そうか、一切のIT機器を持っていない俺が深夜の森の中ではぐれれば死活問題になりかねない。

 中々親切で冷静だなと感心しながら手を繋ぐが、俺の想像は的外れだったらしい。


「いいですか絶対この手を離さないでください! ミーがコケないよう細心の注意を払いながら速く引っ張ってください! 追いつかれたら囮になってください! なにがあってもミーだけは無傷で帰してください! 決してひとりで助かろうとなんてしないでください! 見捨てたりしたらあなたは稀代のクズです! 最底辺のビチグソ野郎です! わかりました!? わかりましたか!? 返事しろインポ野郎‼」

「うるっっっっさい」


 ともかく俺は赤星の罵声を浴びながら手を握り合い、一心不乱に駆けたのだった。


   ◇


 0311時/森の中


「ダメです、先回りされてます」


 赤星のスマホナビを頼りに駐車場へと戻ってきた俺たちは、遠巻きにCB400の近くに座り込んでいる中年男性を視認した。


「足は特定されちゃってますかー。歩いて下山しようにも絶対押さえられてますよね」

「十中八九」

「てかあれ、堅気だと思います?」

「深夜にダムの立入禁止区画で密会していた複数人の大陸系外国人を堅気と解釈するのは無理がある」

「ワンチャン、キャンプに来てたとか」

「結果論だけど、足を深く刺されてるのに救急車や警察を呼んでない時点で間違いなくアウトローだ」

「足って?」

「これで刺して拘束を解いた」


 血の痕が生々しいバックルナイフを掲げると、赤星は表情を引きつらせることなくほほ笑んだ。


「ためらわないんですね椎名さんて」

「よく言われる」

「というか、そんな深手負わせたんなら絶対奴ら諦めませんよ。見てくださいあのガタイ」


 中年の体格はかなり厳つい。きっと軍隊経験者なんだろう。


「すまん。余裕がなかった」

「責めてはいませんよ。あの言語聞いた時ゾッとしましたもん。逆の立場なら同じことしてます」


 そう、謝りこそしたが俺はあれが最善だったと信じて疑わない。

 最悪某ならず者国家に誘拐だってされかねないのだから、抵抗は全力以上に行なうべきだ。


「これからどうします?」

「しばらくはこのまま身を隠す。そして五時頃に警察へ通報して脱出を図る」

「なんで五時……あぁ、深夜徘徊って四時が解禁ですっけ」


 そう、今通報しても未成年者の俺たちは深夜徘徊で捕まってしまう。

 だから解禁時刻である四時以降に俺たちは外出したというシナリオをでっち上げ、そのうえで通報を行なわねばならない。


「警察に怪しまれず、そして無理のないシナリオを考えなきゃですね。ただでさえふらふらしてるのに警察のご厄介にまでなったら親から勘当待ったなしです。成人するまでは養ってもらわないと」


 俺も補導されれば退学は免れない。それだけは避けねば。


「じゃあとりあえず、もっと見つかりにくい場所に移動してシナリオ考えながら五時を待ち、警察が現れると同時に駐車場へ行き、どさくさでバイクを取り返して下山し、ホテルへ帰るって感じですね」


   ◇


 0528時/牛頸ダム駐車場


 すっかり夜が明けた頃、俺たちの通報に応じて三台のパトカーが駐車場へとやってきた。

 サイレンを鳴らしながらやってくるパンダカーはさしづめ救いの使者だ。


「通報したのは君たちか」


 パトカーとほぼ同時に駐車場へと入った俺たちは真っ先に警察官へ接触した。

 バイク付近にいた男はサイレンの音を聞くなりバイクから離れ、距離を取りつつどこかに電話を始めた。しかし視線はずっと俺たちへと向いている。


「はい。実は――」


 お互いが旅行者であることからホテルで意気投合した俺たちは、早朝からバイクに乗って絶景と名高いこのダムへと日の出を見に来た。

 しかしこの駐車場にて既にたむろっていた暴走族にからまれてしまい、なんとか逃げ果せるもバイクを押さえられてしまったので通報した。

 暴走族はサイレンの音を聞いて別の道から去っていったが、帰り道に待ち構えているかもしれないから街に下りるまで並走してほしい。


 ――俺たちがでっち上げたシナリオと、やってきた警官に訴えた内容は以上の通りである。

 もちろん件の男たちについて一切警察には話していない。無法者の外国人が絡むかもしれないとなると事がややこしくなり、やれ実況見分だ署への出向だ調書の作成だと拘束されかねないからだ。


暴走族(あいつら)の旬はセミと一緒で夏休みなんだよ」


 そう言い捨てた三十代の警官は俺たちの身元確認とホテルの滞在記録を無線で照合。結果俺たちの言い分を信じてくれた。

 外出時間を探られなかったのは幸運だった。しかし決して安心できない不確定要素は未だ存在している。


 駐車場の奥に停まっている灰色のバンと黒いセダン、その傍らにはいつの間にかバイク付近にいた男を含めた五人の中年男性が立っていた。

 警官に囲まれている俺と赤星を眺める彼らは唇を閉じた真顔でいて眼光は冷たい。まるで機械のようだ。

 しかしひとりだけ人間味のある殺意を発している者もいる。セダンの後部座席から俺を睨みつけているあたり、きっと彼が俺に襲い掛かった男なんだろう。


「じゃあ下の街までね」


 警官の同意を得た俺は赤星と共にバイクへ跨り、ゆっくりと発進していくパトカーに追従する。

 そんな俺たちの背後から二つのエキゾーストが吼えた。さしずめグリズリー(灰色バン)黒豹(黒色セダン)のような威圧だ。


「あいつら、まさか……」


 セダンの後部座席に座る男は俺と目が合うや、人差し指を掲げ――、己の首を真一文字に掻っ切った。


   ◇


 0707時/街中路上


「やっぱりあいつら、ついてきてます」


 一台のパトカーを追うように下山した俺たちは未だ得体のしれない敵意に晒されていた。

 歯に衣着せない赤星も流石に緊張を覚えているようで、声色が重くなっている。


 ふと、パトカーがハザードをつけて脇に逸れた。

 運転席側に回って警官に何事かを問う。


「我々はこの先の交差点を右折する。キミたちのホテルは直進だ。ここまででいいね?」


 安全保証はここまでか。


「さっきからダムの駐車場に停まってた車がずっとつけてくるんです。ほら、向こうもハザード出して停まったのに降りて来ません。絶対暴走族の仲間です。職質してください」

「んー、でも彼らなにもしてないからねぇ。ただ車を運転してるだけだよ」


 そう、現状彼らはなにも違反行為を働いていない。故にどうしようもない。


「でもなにしてるか聞くくらい」

「いいからもう行きなさい」


 助手席に座るもう一人、五十代と思しき警官が赤星の申し出を一蹴する――、


「キリないんだから」


 とても、乾いた眼で。


「あ? お? てめコラ誰の金で飯食ってると思ってんだよクソ公ぼk」

「お世話になりました。黙って掴まれ赤星」

「え――、わ!?」


 とんでもない暴言を吐こうとした赤星を制し、ここというタイミングで一気にアクセルを開けて急発進。振り絞れるだけの加速を行ない、今まさに信号を赤に変えんとした交差点を突っ切っていく。

 サイドミラー越しに後方を確認してみると、やはり奴らの灰色バンと黒セダンも発進して追走を試みたようだが、想定通り赤信号に捕まって停車を余儀なくされている。

 流石にパトカーを前に信号無視はしないようだ。これで少々のバッファは作れた。


「椎名さんどうして!」

「多分無駄だ。某かの協定なのか地域性なのか不文律なのかは知らないけど、警官はなにかを察してる。そのうえで動く気がない」

「なんですかそれ、都市伝説じゃあるまいし。日本て法治国家じゃなかったでしたっけ」

「さあ、初耳だ」


 とにかく彼らの追走を振り切らねばならない。地理に明るくないのが悔やまれるな。


「ホテルに帰ってすぐにチェックアウトと荷物の郵送手続きをする」

「身軽にならないと逃げ足が重くなりますもんね。手続きが済んだ後はどうしますか?」

「お互い達者でやろう」

「見捨てるなって言いましたよねビチグソ野郎」


 もうビチグソ野郎になっているのなら見捨てていいってこと……ではなさそうだ。


   ◇


 0736時/ホテル


 後方を確認しつつ追跡がないことを確認しながらバイクを敢えて裏手の従業員用出入口前に停め、早足に受付カウンターへと赴く。


「503号室の椎名です。チェックアウトと荷物の郵送手配をお願いします」


 カウンタースタッフにそう告げた俺は自室から荷物を回収し、再び赴いたカウンターにて配達伝票の記入を行なう。赤星も既に同様の手配に入っている。


「ちとせ、何してんだお前」


 ふと、バタついている赤星に豆太郎もとい豆が声をかけてきた。


「すいません豆太郎さん、ミーは先に帰ります。今日の分の日当は要りませんが、昨日分までの分はちゃんと振り込んどいてくださいね」

「帰る⁉ 明日は正午から福岡市内でコラボ企画の生配信だぞ!」

「生配信は当初の予定通り、事故ってこっちに来れなくなってた撮影班のキュア阿奈流(あなる)さんに任せればいいじゃないですか。後から完パケいただければ仕事はします」

「キュア阿奈流(あなる)


 ダメだ、他の下劣なキュア某が頭に浮かんでくる。やめろ、いたいけな少女たちの夢を汚すな。


「はい、結構です。お荷物は責任をもってご自宅へ配送を……どうされましたお客様?」

「い、いえっ、よろしく、お願いっ、しますっ」


 さておき手続きは済んだ。とっとと空港、もっと言えば保安検査場の奥へと駈け込もう。そうなればもう彼らは俺に手出しできない。

 飛行機の出発時間は1030時。ここから空港までは約30分。まだ二時間ほど余裕はある。


「なにを行こうとしてるんですか」


 身軽になれた俺は空港への道順をガイドブックで確認しながらホテルから出ようとするが、やはり赤星に捕まった。


「夜いなかったと思ったら、まさかお前その陰キャ野郎と⁉」

「ええそうです。どっかの豆野郎がやらかした窃盗未遂の件で責任を取れと迫られ、部屋に連れ込まれたミーの純潔はこの男の肉欲によって花と散りました。なのでミーはこのケダモノを法的に訴えるべく……ッ⁉」


 ドン引きしている豆太郎に戯言を吐いていた赤星は瞬間的に驚愕の表情を浮かべた。

 さもあろう、なんとホテルの玄関前に奴らのバンとセダンが乗りつけられてきたのだから。


「裏から出ますよ椎名さん!」

「すいません、これください」

「え、お客様!? そっちは関係者以外――」


 荷物の梱包に使ったガムテを拝借し、裏口に停めていたバイクに跨ってエンジン始動。ホテル前を突っ切って敷地の外へと脱出する。

 通り過ぎ様に確認した男たちの顔つきは相も変らぬ冷酷さを浮かべていた。そしてすぐに追ってきた。

 殺る気満々か。しかも奴らのうちひとりはスマホで電話をしていた。もしかしたら……。


「俺はこのまま空港へ向かう」

「ミートゥーです。マッハでお願いします」


 カァンと甲高い音を響かせながら県道を行く。やはり奴らは結構な速度で追ってきており、しかもセダンだけが別の道に入っていった。

 しまったな、旅行者と察した奴らは俺たちの行動に予測をつけたようだ。駅や空港を押さえるために先回りされたかもしれない。


「赤星、裏道を駆使して行くからマップアプリでナビを頼む」

「無理です。昨夜なんやかんやと使ったのでスマホのバッテリーがあと7%しかありません」

「単車のソケットに差せば充電できるコネクタがある。充電ケーブルを出してくれ」

「荷物と一緒に預けちゃいましたンゴ」

「携帯用バッテリーは」

「あったら最初から断ってねーっつーの」

「ならこのガイドブックで」

「自分地図読めないんでwさーせんww」

「……下りろ」

「絶対嫌です」


 なにがあっても離れんぞという意思が込められた抱擁という名の拘束を解く術は、現状ない。


「コンビニで充電器を買おう」

「あ、財布も荷物と一緒に送っちゃったんで支払いもお願いします。ついでに飛行機代も」


 あり得ない。俺たちはリチャード・ギアじゃないしジュリア・ロバーツでもない。


「そこまでしてやる義理はない」

「フェラくらいならしてあげますから」

「気持ちの悪い。本気でいらない」

「いやんっっ、吊り橋効果でワンチャン狙わないでくださいよぉ」


 世の中にはいるもんなんだな狂人って――⁉


「わ⁉」


 ぐおんと迫るグリズリーの猛威は後方僅か3メートルの距離から襲いかかってきた。

 運転席に座る男の殺意は尋常でなく、すぐに停めねばどうなっても知らんぞ、と言っている。


「しがみつけ」

「あいさー」


 丁度差し掛かった交差点。信号は今黄色から赤に変わった。交差点内に車はいない。警察もいない。――諸々の好条件が合致した。


「わっ」


 減速しながら交差点を左折。グリズリーも減速して交差点へと飛び込んできた。

 その瞬間を狙ってリーンアウト、バンク角を稼ぎながら切り返してUターンを敢行する。


「わっ、わっ、わっ、わっ」


 なるべく減速せず交差点内を周って反対方向、即ち来た道の右折方向の道路を直進。アクセルを開ける。

 暴走族の如き危険運転へ向けた数発のクラクションを無視しながら細道を左折。閑静な住宅街へと侵入し、角を曲がりまくるジグザグ走行を行なう。


「ナイスと言いたいとこですが、今日びドライブレコーダーもあるんですから通報されません?」

「さっき単車に跨る前、ガムテをナンバープレートに貼っておいた。万一身元がバレても事故らない限り県外までは追ってこないと思う」


 法というものは守ったところで恩返しなどしない。ただそこにぼーっとつっ立ってるだけの案山子でしかないのだ。


「なるほどですね。でも剝がしておかないとそれだけで職質対象になるんで、良きところで剥がしておきます」

「ああ。むしろ指示したら後部座席(そこ)から貼れるようにしておいてくれ」


 腕に通しておいたガムテを赤星に渡し、更に住宅街を行く。

 ここまで距離と方角を悟られないようできたのであればスピードを出す意味もなく、緩やかに空港方面を目指す。


「あ、ちょっとあの親子スレスレまで寄せてください」


 そろそろガムテを剥がすかと考えていた俺に赤星はそう指示した。

 言う通り、こちらに背を向けている親子と思しき通行人へ単車を寄せると――、


「よっと」


 なんと赤星は子供の持っていた未開封のパ○コを掠め取った。

 ギャン泣きしている子供をあやす母親からの驚愕の視線がサイドミラー越しに刺さってくる。

 まだガムテ取らなくてよかった。とりあえずスピード上げて逃げよう。すいませんお母さん、坊や、この子は頭がおかしいんです。


「食べます?」

「食べる」


 手が使えない俺の代わりに赤星はパ〇コの頭を千切って口へと差してくれた。


「あいあとう」

「どーいたしまして。ん~美味し♡ やっぱ夏はパピコで間違いない」


 パピコって言っちゃったよこの子。まぁいいか。


「いい天気ですねー」


 しみじみと赤星はそう言った。きっとこの高く、青い空を見上げながらパピコを啜り、これでもかと夏を感じているのだろう。


「ああ。いい天気だ」


 今の俺と同じように。


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