ピテカントロプスになった日
7月31日(日)
0630時/県道
地元を離れて早一時間、トラさんに跨った俺と日向は県内のとある一車線道路を南に向かってひた走っていた。
Bluetoothイヤホンマイク越しに行われる軽快な日向主導のトークを肴に、俺は海を目指している。
早めに行って早めに帰る、これが最も混雑を避けられる方法だと踏んだ俺の提案により早朝から行動を開始したのはやはり正解だったと思う。方向を同じくする車は少なく、至極快適な道行だ。
「見えたぁ!」
大きなリュックを背負って俺にしがみつくコアラの如き愛らしさの日向は、海と対面した喜びを後部座席から身を乗り出して表した。
あそこが恋人と興じる永遠の夏の風物詩――、恋のスタービーチ。
◇
0700時/海水浴場
「わぁ、ほぼ貸し切りじゃん」
召し上がれ♡とでも言わんばかりに弾ける笑顔で俺の眼前に太陽の天使が現れた。
黒地に白い水玉模様があしらわれた日向の水着は、いわゆるバッククロスタイプのタンキニビキニで、持ち前の愛嬌とほんの少しのセクシーさを取り入れた見事な装いだ。
慎ましいバストも、小ぶりなヒップも、男の情欲をかき立てる仕草さも、ノーメイクだからこそ際立つ神から授かりし愛愛しさも、すべてが夏というフィルターを通して眩く煌めいている。
片や俺は普通中の普通。男の水着にファッション性を求めても無駄だ。
一応日向合わせて黒地に太い白ラインが入った膝上ショートパンツを履いている。
「誰もいない海って何気に初めてかも。早朝だからか暑さもちょうどいいし♪」
「でも正午近くになったら熱くなるし人も多くなるだろうから、その前に捌けよう。それなら上りで渋滞に巻き込まれることもないと思う」
「それでも全然時間あるね。海の後もなにかできるだけの余裕はあるし、遊ぶ時は早起きに限る!」
「同感」
木陰のある適当な場所で二人分の荷物が入った大きなバッグからシートや飲料水やオイル等を取り出す。
貴重品と充電中のスマホはダイヤルロック式のセキュリティバッグへGPSと保冷剤と共に入れ、茂みに隠しておく。
「オイル塗るよ」
「ありがとう」
お互い手の届かない箇所へサンオイルを塗り合う。
日向の肌のきめ細やかな弾力はオイルによって淫靡さを醸し出している。実に艶めかしい。
「うひっ、くすぐったい。やられたらやり返す! 倍返しだ!」
膝立ちになった日向は俺の両脇腹をこちょこちょと強襲……しかしノーリアクションの俺に口を尖らせた。
「なんで効かないのもぉ……んーちゅ♡」
ふと、そのとんがった唇はそのまま我がそれへと合わされた。
ちゅっちゅっと俺の唇を啄み続ける日向の陽光を受けて艶めく睫毛、海風に舞って揺れる髪、首に回される優しい腕と指先は、一瞬で我が五感の大部分を征服する。
「はぁ、明日から十日間会えないよ」
「ああ」
「ん、ちゅ、ぁむ」
だから十日分のお前の生気を寄こせ。そう言わんばかりのサマーサキュバスはどこまでも可愛く、そして蠱惑的だった。
◇
オイル塗りが終わった後、俺たちは真っ白なラッシュガードを着てビーチへと立った。
あまりに強い紫外線とスキンケアの観点から、昨今では水着のまま歩く者も少なくなったのだという。
故に水着のお披露目はさっきでほぼ終わりだ。次に拝めるのは日陰に入った時くらいだろう。
「ひゃあ~! 気持ちいい~!」
おっかなびっくりだった日向も五分経った頃には浅瀬を右往左往としていた。
デカい浮き輪こそ装備しているが、海水浴を存分に楽しんでいる。
「受け止めて~♪ ん~~♡」
バタ足で迫ってくるプリティー日向を正面から顔面で受け止める。
キス魚雷のロックオンは見事我が唇に命中するが、少々勢いがあり過ぎてしまった。
「いちっ、歯が当たっちった。スイミングキッスは難易度高いなぁ。よしもう一回! 受け止めて~♪」
夏に狂って賢さをどこかへ置いてきた日向もまた、可愛い。
しかし海からあがったらいつもの彼女に戻っていてほしい。頼むから。頼むから。
◇
「絶対離さないでね! フリじゃないからね!」
浮き輪の上に10秒立てたら勝ちという、ウェイト差を考慮しないケンも真っ青の鬼畜勝負を持ちかけられた。
先鋒は日向。俺は日向の腰を支えながら起立をサポート。この時点で最早危うい。転倒は必至だ。
「っととっ、っっおぉ、あぶなっ、むずいっっ」
日向のキュートなヒップが俺の鼻先でズッキンドッキンしている。――たまらない。
あ、俺の顔面が日向のお尻に埋まった。――もう我慢できない。
「やん♡ 椎名くんのエッ――⁉」
パァァァァァァァァァァン、と水飛沫が大きく爆ぜる。
自由落下の数倍ものスピードで背中から海面に叩きつけられたのは我が彼女、日向薫。
腰に回していた両手をロックし、欲求に負けて高速バックドロップを敢行したのはその彼氏、椎名みづき。
「……………………」
日本を代表する大怪獣のBGMを背負い、ゆっっっっっくりと海面から顔を上げた日向係長の据わった目は怒りと呪いと殺意に染まっていた。
これはいかんとし、謝罪の意を込めて丁寧にキスをする。しかし――、
「つぉあ!」
鳩尾に拳を添えて全身の関節を稼働させた寸勁を撃ち込んできた。ゔッてなった。
この後なだめるのに結構な時間を使ってしまった。我慢は大事だ。
◇
「もうちょっと右! そのまままっすぐ!」
夏の伝統芸である、目隠しをして回転した後に果物を武器で粉砕する遊びを日向の提案で実行。
俺の目標物はスイカではなく日向であり、得物はなく素手、もといハグだ。
「そのままそのまま! あ、ちょっと止まって。すいません、どうぞ。はい、いいよ~。まっすぐまっすぐ」
しかし……かれこれ20分は炎天下の中を歩かされている。
終わる気配がない。発汗による脱水も著しい。この遊びはこんなにも過酷な遊びだっただろうか。
周囲からクスクスとした嘲笑も聴こえてきている。未だムカつきあそばされている彼女を抱きしめんと両手を掲げてふらつく姿はさしずめ、海辺を彷徨う迷子のゾンビ。さぞや滑稽だろう。
「こっちこっち! ん~んん! ん~ん~ん!」
ナニカを口に含んだかのような呼び声が聴こえる。あそこがゴール、もといオアシスか。
「ん~ん♡ んっくんくんくんく」
失われた水分と好感度を取り返すべく、一心不乱に日向を抱きしめ、合わせた口から吸い上げていく。
真夏の拷問ないしSMプレイを乗り越えた安堵に俺は膝をつき、横たわってしまう。
「こっちだって超怖かったんだから、馬鹿」
と言いつつ日向は俺の頭を己の膝に乗せてくれた。その身にもうラッシュガードはない。
犬キャラ故なのか、逆になのか、日向にはブリーダーの才能がある。もしくは女王様。
「気持ちいいね」
日陰で味わう海風が運んでくる波の音は、疲れと乾きを潤してくれるこの涼しさは、寝かしつけるように俺の頭を撫で続ける日向の手は――、
「ああ」
とても気持ちがいい。
◇
1020時/海水浴場
「由美からメッセと画像が来てる」
小休止の後、数時間ぶりにスマホを開いた日向はにこやかにそう言った。
今日、月代はダンススタジオがらみのグループと別の海水浴場へ行っている。
一応気を使うだけの脳はあったのか、合流を提案しなかったことは評価しておこう。
「楽しそーな集合写真。てかめっちゃエロカワ集団。こりゃビーチの視線は独占だわ」
きっとアゲハさん、ミホさん、ヨーコさんもいるのだろう。
そのうち三分の二の裸身を拝んでいる身としてはどんなにはっちゃけた色気を振り撒いているか容易に想像がつく。
「あ、もう由美ちょびんてば、これ三人のトークルームに貼ってるじゃん。むぅ……椎名くん見ちゃうよねこれ」
「多分」
「うぅ、みんなダンサーだけあってスタイルいいから、絶対わたしと比べる……」
「比較なんて成立しないと思うけど」
「え? どして?」
「日向だけが俺の一番なんだと決定しているんだから、二位以下なんて決める意味ない」
そういう意味では一番という概念すらないと言えるかもしれない。
日向は俺の奇跡、それは揺るがない不変不動の理だ。
「ラブ~♡♡」
感極まった日向はルパンダイブの如く俺に襲いかかり、押し倒してキスの雨をちゅちゅちゅと降らせ始めた。俺の体の上で悶える日向は実に煽情的、というかエロい。
「しぃなくん♡ しぃなくん♡ 好き♡ 好き♡」
塗り直したオイルがローションのように作用して動くたびにちゅくちゅくと鳴って性感を刺激してくる。
これは第三者が見れば晴天と青海の只中で性行に耽っているように見えるのではないだろうか。
「……え? 薫、ちゃん?」
「ちゅっちゅ……へ?」
俺の頭上に影が差したその時、日向が女性に名を呼ばれた。
我が貞操を解放した日向が面を上げて出くわしたのは……複数人の水着男女が驚愕の表情を浮かべている光景だった。
「やっぱ薫ちゃんじゃん! それに、椎名くん!?」
……ああ、クラスメイトだ。
「なーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん‼」
一瞬で顔面の毛細血管を爆ぜさせた日向は絶叫しながら俺から離れた。
「なにしてんの薫ちゃん! てかなに考えてんの⁉」
「真昼間のこんな人目につくとこでエッチとかする普通!?」
「肉食系にもほどがあるし青姦にもほどがあるでしょ!」
「…………死にたい」
あ、犬曲もいる。曲犬だったか。まぁどっち曲がりでもいい。
「待って待って待って待って待って待って待って待ってっ! エエエエエエッチなんてしてないよっ! そんなことするわけないじゃんっっ!」
「「「いやしてたようにしか見えないから」」」
「ホントだってばぁ! なんというかそのっ、感極まってっていうか舞い上がってっていうか椎名くんのせいでっていうかっ」
「椎名くん、なにかしたの?」
「いやなにも。突然襲い掛かられて有無も言わさず唇を塞がれて騎乗位で全身を擦りつけてきた」
「言・い・か・たー--------------‼」
それもうレイプじゃんの熱い意見を浴びせられる日向とは裏腹に、俺へ投げかけられる言葉は冷たかった。
「椎名お前、今が絶対人生の絶頂期だぞ……」
「前世でどんだけ徳を積めば薫ちゃんに襲われることができるんだろう……」
「今来たトコなのにもう帰りてー……」
爆熱する日向弄りはここから20分程続いた。
俺にも飛び火したが「ああ」「そうだな」「えぐいな」の三つで淡々と処理した。
「もう帰るっっ‼」
◇
1100時/駐車場
弄られ過ぎて感情が照れから怒りに傾いた赤面日向がそう言うのであれば是非もなく、ちょうど時間も頃合いなことから俺たちはご同輩に先んじて帰路に着くことにした。
クラスメイトの「ごめんごめんもう言わないから」「せっかく会ったんだから一緒に遊ぼうよ」の声をいなし、荷物をまとめて単車に跨る。
「途中にあったガソリンスタンドで給油するから、反対側にあったファミレスで昼飯を食っていこう」
「トラさんのランチ(ガソリン)代はわたしも出すけどそっちはバカ椎名くんの奢りだからね! みんなも絶対変な風に言いふらさないこと! バイバイ!」
キーを回してエンジン始動。クラスメイトのバイバイを掻き消しながら発進。海水浴場を後にした。
「……最初は絶対あり得ない組み合わせとか思ったけど、なんかお似合いだねあの二人。てか椎名くんって学校とだいぶ雰囲気違くない? むしろかっこいいかも」
「月代さんも言ってたけど、流れてた椎名くんの噂って結局ウソだったってさ。薫ちゃんずっと信じてたもんね。見る目あるなぁ」
「私ら誘っといてあからさまに落ち込んでる失礼極まりないこんな男どもとは違う、大人っぽい彼氏が私も欲しいなー」
「はぁ、どれだけの男が薫ちゃんを狙ってきたのかアイツわかってんのかな……」
「男を一切寄せ付けないあの月代さんとも最近普通に喋ってるよな。どんなメンタルと幸運だよマジで」
「薫ちゃんの濃厚なキスシーン、見たかったような見たくなかったような。いや、もう忘れよう。そして見守ろう(そしてオカズにしよう)」
こうして俺と日向との初海水浴は一応の終わりを告げたのだった。
◇
2200時/スチームネット(三人部屋)
kaoru_hinata:憤慨の極み!
mizuki_shiina:こんばんは
yumi_tsukisiro:どしたん薫
kaoru_hinata:こんばんびー
kaoru_hinata:にのさんで早速拡散されてたし!
kaoru_hinata:もうこれは裁判しかない!
kaoru_hinata:椎名くん告訴用紙持ってきて!
mizuki_shiina:そんな用紙はない
yumi_tsukisiro:あーなんかいじられてたね でもそれは
yumi_tsukisiro:映画カクテルよろしくのいちゃつき方した
yumi_tsukisiro:あんたらの自業自得じゃん
kaoru_hinata:憤慨の極み2!
kaoru_hinata:誰がセックスオンザビーチやねん! してへんわ!
kaoru_hinata:痴漢冤罪の過程をありありと見せつけられた!
kaoru_hinata:絶望した! もう電車は全部女性専用車両だ!
mizuki_shiina:論理と倫理と思想と言語と仮定された社会が軒並み破綻してる
yumi_tsukisiro:写真撮られてないだけマシじゃん
yumi_tsukisiro:こっちは盗撮されたあげく勝手にここに貼られたし
kaoru_hinata:ん?? 集合写真を盗撮?
kaoru_hinata:勝手にって他人のスマホのメッセアプリのトークルームにどうやって?
yumi_tsukisiro:盗撮はまちがえた
yumi_tsukisiro:スマホのバッテリー切れたから
yumi_tsukisiro:スマホ貸してって言われて
yumi_tsukisiro:貸したら貼り付けられてた
mizuki_shiina:そんなにも使い古された嘘を信じて
mizuki_shiina:事実確認も目的確認もせず
mizuki_shiina:プライベートデバイスを他人に渡した月代の自業自得だ
yumi_tsukisiro:は?
yumi_tsukisiro:うるせーよインフォキチガイ
yumi_tsukisiro:てか嘘とかって決めつけんなし
kaoru_hinata:ほんとだったの?
yumi_tsukisiro:嘘だった
mizuki_shiina:明日からしばらく留守にする
mizuki_shiina:日向 元気で
kaoru_hinata:うぅ(泣
kaoru_hinata:早く帰ってきてね(寂
yumi_tsukisiro:てめえらッ
yumi_tsukisiro:事故れし
kaoru_hinata:ユミチョビン?(凶
yumi_tsukisiro:ごめん今のは不謹慎だったマジでごめんウソウソなしなし
mizuki_shiina:そろそろ準備に入る
kaoru_hinata:飛行機乗る前にまた電話かメッセしてね
kaoru_hinata:いってらっしゃいダーリン♡
mizuki_shiina:いってきます
yumi_tsukisiro:同じとこ七回蚊に刺されろし
◇
2215時/スチームネット(椎名⇔月代)
yumi_tsukisiro:エロいあたし(画像)
yumi_tsukisiro:エロいヨーコ先輩(画像)
yumi_tsukisiro:いっぱい出して♡
yumi_tsukisiro:↑わかってると思うけど
yumi_tsukisiro:送ったのあたしじゃないから
yumi_tsukisiro:盗撮したのも貼ったのもヨーコ先輩
mizuki_shiina:わかってる
yumi_tsukisiro:ぜってー変なことすんなし
yumi_tsukisiro:保存もすんな
mizuki_shiina:わかってる
yumi_tsukisiro:ちなみにヨーコ先輩の感想は?
mizuki_shiina:すぐに乳を放り出すヨーコさんの大胆さは好きだが
mizuki_shiina:恥じらいがないと趣深さのない二次元的なエロになる
mizuki_shiina:でも4Dかよってくらい迫力のある
mizuki_shiina:すごくいい乳をしている
mizuki_shiina:ありがとうございましたと伝えてくれ
yumi_tsukisiro:語るなキモイ
yumi_tsukisiro:乳て
yumi_tsukisiro:伝えるかっての
yumi_tsukisiro:ちなみにあたしは
yumi_tsukisiro:エロとかじゃなくてファッション的な意味で
mizuki_shiina:ローウエストの三角黒ビキニ
mizuki_shiina:ボディメイクもしっかりしてるし
mizuki_shiina:ヒップアップもばっちり
mizuki_shiina:下腹部のふくらみは母性を感じる
mizuki_shiina:持ち前のスパニッシュな雰囲気を際立たせた
mizuki_shiina:月代に一番似合った水着だと思う
yumi_tsukisiro:そんなこというなし
yumi_tsukisiro:他の着れなくなるじゃん
mizuki_shiina:ただその格好だと恐怖の対象を呼び寄せる
mizuki_shiina:月代が嬉々としてその格好をしたとは思えない
yumi_tsukisiro:アタリ
yumi_tsukisiro:これって上下ともラッシュガード着る前提の格好なんだよ
yumi_tsukisiro:濡れていい下着くらいの認識だったから
yumi_tsukisiro:男に見せるつもりなんて全然なかった
yumi_tsukisiro:それを着替え中にヨーコ先輩が以下略
mizuki_shiina:納得
yumi_tsukisiro:マジで変なことに使ったら殺すから
mizuki_shiina:わかってる
yumi_tsukisiro:たまにさ 怖いんだったらもっとおとなしいカッコしたらって言われることもあるけど
yumi_tsukisiro:男のせいで自分のしたいことできなくなるなんて
yumi_tsukisiro:負けたみたいでやだ
yumi_tsukisiro:怖がってる時点で負けてるようなもんだけど
mizuki_shiina:怖がることが負けだとは思わない
mizuki_shiina:屈することこそが負けだから月代は正しい
yumi_tsukisiro:ふーん
yumi_tsukisiro:ねえ
mizuki_shiina:ああ
yumi_tsukisiro:海 あたしも行きたい
mizuki_shiina:ナンパなんかがあまり出没せず
mizuki_shiina:ひとけのない穏やかな場所を探しておく
yumi_tsukisiro:ありがと
yumi_tsukisiro:あ 三人でって意味だからね
yumi_tsukisiro:二人でじゃないからね
mizuki_shiina:わかってる
mizuki_shiina:そろそろ準備する
yumi_tsukisiro:あそっか ごめん
yumi_tsukisiro:気が向いたらでいいからさ
yumi_tsukisiro:出発前 あたしにもメッセちょうだい
mizuki_shiina:わかった
yumi_tsukisiro:ほんとに気をつけて
yumi_tsukisiro:いってらっしゃい
mizuki_shiina:いってきます
yumi_tsukisiro:マジで変なことに使わない?
mizuki_shiina:しつこい
◇
2300時/自宅
ふぅ、と一息つきつつ、窓の外を見やる。
ヨーコさん、いつもありがとうございます。この礼はきっといつか。
星に誓いを立てながらスマホに表示されている『保存』ボタンをタップした俺は、改めて晴れ晴れとした気持ちで荷造り作業へと戻ったのだった。




