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ネガティブな俺じゃ世界は救えない  作者: ロマンティック帰宅戦士 死更 コールツルセットモドキが駆け抜けた366日の軌跡はサイクロイドを描くのか。いや、玄関
2日目
27/30

逃げるが勝ち

夏休みだー!更新するぞー!!

 


「――『ラブ』は勇者に仕えていた『あああい』ですよ!!」


 それはつまり、ラブが先代勇者の仲間だったということだ。それならこの強さにも納得がいく。

 他にも思い当たる節はあった。亜空魔法のことだったり、やたらと先代勇者である姉貴の話を聞きがっていたり、そして世界一の魔術師と知り合いだったことだったり。


 じゃあ、なんでバーサーカーなんかに……


(今はそれどころじゃありません!)


 確かにそうだ。今、ラブとアシュリーは副王に攻撃を繰り出している。

 副王はアシュリーの魔法を打ち消すので一杯だった。


「《白恋(ラースノーヴ)》!!」


 ラブの亜空魔法。両手で斧を生成した彼女は、乗ってきた釘を飛び、回転しながら副王に襲いかかった。

 勇者の仲間だったというラブ。俺もバーサーカーと戦った経験から、彼女の攻撃は通用すると思っていた。しかし、副王はいとも簡単にラブの身体を掴み上げてしまった。

 ヤツは不敵な笑みを浮かべる。


「貴様、虹色の巫女。抹消」

 あいつ、握りつぶす気だ。

 感付いた俺はアシュリーよりも先に突っ込んでいた。

「《展世(ファンタジスタ)》!」


 俺が生成したのは刃渡り150cmほどの剣だ。正直、これでもリーチ差で負けている。そして、俺にこの重さを使いこなせるかどうか分からない。


「でも、俺がやるんだ!」


(距離を詰めてください! 副王は至近距離の相手に魔法は使いません!)


「なるほど! アシュリー、副王を止めてくれ!!」


「偉そうに……言われなくても」


「《美恋(レムラント)》!」


 副王の背後の地面から大きなシャボン玉が現れ、その周りにラブの魔法陣が展開する。副王は俺を迎え討つようだ。


(狙うはヤツの右腕。狙いを絞って、回転させるんです!!)


 俺は天の声の言うことを言葉ではなく、感覚で、身体で理解した。


「エックス……斬りィッ!!」


 軸を定め、素早く切り返す。俺は一瞬のうちに2回の斬撃を繰り出していた。剣の重みは俺を助けたのだ。


 しかし――


「救世主、貧弱」


 ――いや……ほんの少しだけでも副王に隙を作ることができた。アシュリーの勝ち誇ったような魔法が聞こえる。


「《崩壊(スプリート)》!」


 副王は思うように避けられなかった。ラブの《美恋(レムラント)》がマントを地面に打ち付けていたからだ。


 シャボン玉の破片が、体勢を崩した副王の背中を切り刻む。俺は懐に潜り込んで、右腕を――斬り落とした。



 ヤツの右腕から解放されたラブは、その場に倒れ込んでしまった。危ないところだったらしい。

 俺は間髪入れず、立ち上がろうとする副王の左腕も、斬った。俺は燃えるように熱い血を浴びてしまう。

「血は、赤いんだな」


 巨体は前に倒れ込む。


 ラブを抱き寄せ、その場から引いた。

「ナゴミ、ラブを頼む」

「分かりました……!!」


「やるわね。素直に感心したわ」

 ここで初めて、アシュリーは表情を緩めてみせた。いや、これはドヤ顔なのかもしれない。


「でも、まだ、なんだよな……?」

 正直、手応えがない。怪物のときのような、勝った感じがしないのだ。


「そんなに心配しなくても、副王は伊達じゃないのよ?」


 アシュリーの言う通り、両腕を失った副王が起き上がった。


「我、生き返れなかった、呪い、ここで、解放」


 何やら、彼の影よりも広い血のプールが蠢く。俺の浴びた返り血も例外ではないようだ。


「な、何だコレッ!?」


「恨むなら、ネクロマンサー(・・・・・・・)、恨め」


 血が、返り血だったものが、俺を殺そうとしている。それは俺の顔にまで這いずり上がり、口の中に入ろうとしてきた。これの狙いは俺の窒息死だ。

 俺は必死で口を閉じた。


 方や、あの血溜まりは龍のように連なり、こちらに向かってくるのだが、アシュリーのシャボン玉が俺たちを囲っていた。


「エックス。あーん、して」


 アシュリーは背伸びで、俺の肩をトントン叩く。振り返った俺の頬に、彼女の小さな指が刺さった。


「ブフっ」


 そうやって開いた俺の口に、血よりも早くアシュリーの魔法陣が入り込んできた。口の中でシャボン玉が膨らむ。


「栓をしといたわ。無論、これでも窒息死するけど」


 ダメじゃん!、と叫ぼうとしたが、叫べなかった。彼女は俺の鼻にもシャボン玉を詰めているらしい。


「ナゴミ、ラブを背負って。飛び降りるわよ」


 何で!?、とワケを訊くこともできない。


 彼女が指を鳴らすと、俺たちを守っていたシャボン玉が強い風圧とともに弾ける。副王の血は勢いで飛ばされるが、再び飛んでくる。


 アシュリーは何も躊躇わず浮き島の縁まで走り出す。ナゴミも必死で付いていってる。

 俺も行かなきゃ。今や、どうすることもできない俺は彼女らの後を追った。


 しかし、見えてきたそれは地の見えない落下距離。

 背後には副王の残した血。ベチャベチャという音が迫っている。飲み込まれたら終わり。


(エックス!)


 ――分かってる。

 高所が何だ。今となっては何も怖くないじゃないか。いや、元々、怖がる必要だってなかった。いつの間にか、俺は高いところが好きなバカになってしまったらしい。

 バカでもいい。俺は変わったんだ。



 その空は、気持ちよかった。


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