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吾輩は猫のYouTuberである  作者: 灰庭論
未来猫 編
14/18

14 未来から来た猫

 ユメミコによると、吾輩は未来からやって来たらしい。記憶がないので、その話が本当かどうか分からないけれど。


 ユメミコがドアを開けて、廊下の様子を窺う。


「まだ大丈夫ね」


 静かにドアを閉めて、振り返る。それから制服の内ポケットから手帳を取り出して、吾輩に見せるのだった。


「わたしは時間修復師タイム・リストレーター


 そう言われても、意味が理解できなかった。


「本当に何も憶えていないのね」


 ユメミコが早口になる。


「あなたは時間旅行者タイム・トラベラーに飼われていたんだけど、タイムマシンへのペットの持ち込みは禁止されているのに、子供のわがままに付き合って、一緒に時間旅行をさせられたの」


 記憶になかった。


「そこまでならよくある話なんだけど、飼い主が目を離した隙に、あなたが逃亡して、それで完全に見失って、それで捜すことになったのよ」


 まるで逃亡犯扱いだ。


不法旅行者イリーガル・トラベラーなら簡単に見つけられるどころか、事件を未然に防ぐことができるんだけど、どういうわけか、あなただけは捕まえることができなかったのよね」


 知能犯として取り調べを受けている気分になる。


「記憶を失くしたみたいだから説明するけど、時間旅行中に問題が起こった場合、タイムマシンの利用そのものを止めさせればいいわけよ。なぜなら未来では『親殺しのパラドックス』は起こらないって証明されてるから」


 タイムマシンで過去に行って親を殺したら、殺人犯である自分も存在しないことになるから、時間旅行ができなくなり、よって殺すこともできなくなるという、矛盾した論理のことである。


「タイムマシンが発明される前は、理論上は開発するのは不可能だと結論付けられていたけど、いざ発明されると、様々な問題が論理の跳躍で解消されたのよ。理論上は不可能である、後発のアキレスが先行する亀を飛び越えてしまうみたいにね」


 ユメミコが話を戻す。


「タイムマシンが一台しかなければ大問題でしょうけど、実際は歴史を維持するために何十台も同時に稼働しているから、過去を変えることは不可能なのよね、あなた以外は」


 その例外が、吾輩らしい。


「時間旅行中に問題が発生した瞬間、出発日に連絡が入り、そこで注意するか、旅行自体を中止させるんだけど、あなたの場合、どこを探しても見つからなかったのよね」


 さすが、吾輩である。


「この場合、旅行自体を止めさせれば、過去の世界で迷子になることはないんだけど、今後も起こりるトラブルでもあるから、改善点を見つけるために、そのまま旅行させることにしたのよ」


 まだ吾輩が悪いと決まったわけじゃないのに、まるでトラブル・メーカーであるかのような言い草だ。


「でも、探し出すのが意外と大変だった。あなたのことは立体映像で確認していたし、人間の言葉を理解できるから、必ずどこかでトラブルを起こすと思った。だけど、しばらく様子を見ても何も起きず、この世界に馴染んじゃうんだもん」


 記憶を失くしたからだろう。


「SNSが普及し始めた時代だから、それを手掛かりに探したんだけど、見つからなくて。それから一年くらい経って、ようやくユーチューブで発見したの」


 タカカズのおかげか?


「まぁ、見つからなかった場合、捜索を打ち切って、迷子になる前のあなたを保護すればいいだけだから、困ることは何もないんだけど、それだとこれまでの労力が無駄に終わるところだったから、本当に良かった」


 そこで部屋の外から、モコが階段を上がってくる音が聞こえてきた。


「続きは、また明日にしましょう」


 明日、未来に帰るということだろうか?

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