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吾輩は猫のYouTuberである  作者: 灰庭論
未来猫 編
13/18

13 謎が明らかに

 軽い挨拶のつもりで言ったのに、タカカズの言葉を真に受けて、ユメミコは翌日も本当に遊びに来るのだった。


 学校帰りということもあり、この日は制服を着ているのだが、モコと比べると明らかに上級生に見えた。


「じゃあ、ゆっくり下ろすよ」

「うん」


 吾輩の部屋にテーブルを運び込んで、一緒に宿題を片付けるらしい。それを吾輩の許可なく行うのである。


 モコは本当に無礼な奴だ。


「トラちゃんが見てるね」

「お母さんから離れるなんて珍しい」


 友達には「ママ」ではなく「お母さん」と呼ぶようである。


「なに考えてるのかな?」

「また遊んでほしいんでしょ」


 モコは悪魔のプラス思考を持っている。


「でも、近寄ちかよってこないね」

「アズキちゃんがいないからかな?」

「家のお手伝いだっけ?」

「うん」


 それを聞いて、興味が失せた。


「あれ?」


 反応したのはユメミコ。


「どうしたの?」

「いま、トラちゃん、ガッカリしなかった?」

「そう?」

「残念そうな顔をしたよ」

「この子は元々ガッカリ顔だから」


 その言葉に二人がキャッキャッするのだった。


 タカカズとモコが吾輩をガッカリさせてばかりいるから表情が固まったのだが、本人は自分のせいだとは思っていないらしい。


 その、鈍感に生きられるメンタルが羨ましかった。


 ルンルン気分で旅行に行くと言って家を出て、その足で病院に連れて行かれた時の恨みは忘れない。


 怖がらせないために、良かれと思って芝居をしたのかもしれないが、嘘は良くない。


 嘘だけはダメなのだ。


「ああ、やっぱりダメだ」


 モコが制服のスカートを気にする。


「どうしたの?」

「スカートに毛が付いちゃって」

「着替えたら?」

「いいの、わたしだけ?」

「うん」

「ありがと」


 と言って、立ち上がり、


「行ってくる」


 と、吾輩を部屋に残して、ユメミコと二人きりにするのだった。


 タカカズは、まだ学校から帰ってきていない。


 昨日のように助けてはくれぬのだ。


 女がシャーペンを置く。


 緊張の一瞬。


 ユメミコがジロリ。


 吾輩はゴクリ。


 巨大生物と戦う怖さを想像してほしい。


 あれだ。


 パンチ力は互角。


 でも、腕の長さが違う。


 それが致命的。


 リーチの差を足でカバーする。


 フットワークは吾輩の方が上。


 それも圧倒的に。


 だったら、スタミナ勝負か?


 それは未知数。


 ダイエット食に切り替えたばかりだからだ。


 もうすでに、腹が減っている。


 全集中、ならず。


「トラちゃん」


 ユメミコは対話を望んでいるようだ。


 捕獲する意思はないということか。


 しかし、気は抜けない。


「警戒しなくても大丈夫」


 油断させる気か?


「あなたが人間の言葉を理解していることは知っている」


 確信しているようだ。


「わたしはあなたの動画を観て、そのことを発見した」


 だとしたら、本物だ。


「お尻を振って文字を伝える『尻文字』という遊びがあるけど、トラちゃん、あなたはそれを尻尾でやってるのよね?」


 まさか、吾輩のメッセージに気が付く者が現れるとは思わなかった。


「あなたは動画の中で撮影者に向かって『バカ』とか『アホ』とか、何度も『尻尾文字』を発信していた」


 完璧な分析だ。


「わたし、間違ったこと言ってる?」


 尻尾の先端でマルを書いてあげることにした。


「やっぱり」


 ユメミコがほっとするのだった。


「やっと見つけた」


 そう言って、目をウルウルさせるのだった。


 悪い子ではないようである。


「さぁ、一緒に帰りましょう」


 ?


 どこへ?


 ユメミコがキョトンとする。


「あれ? あなた、ひょっとして、記憶がない?」


 記憶がないことすら分からなかった。


「大変、ほんとうに記憶がないみたいね」


 吾輩は何者なのだろう?


「あなたはね、百年後の未来から来たのよ」




 エエエエエエッ!




 土曜日の夕方にタカカズと一緒に観ているドラえもん。


 まさか自分が、そのドラえもんと同じだとは思わなかった。


 ロボットじゃないけど。

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