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現との境界   作者: 藤沼
1/1

-序章-

周りの音がかき消されるくらい激しい雨が降っている。


天気予報で雨が降るとは聞いたけれど、こんな激しい雨だなんて言ってなかった。


傘を差しているが、それが無意味なくらい全身が濡れる。


特に足元なんて最悪だ。


道全体が水溜まりになっていて、歩くたびに水がパンプスの中に入ってくる。


ストッキングだって水で濡れて、肌に張り付いていて気持ちが悪い。


普段なら雨予報の日は、スカートなんて穿かないけど今日は面接だったから仕方なく着た。


それなのに肝心の面接は、大雨の影響で人事のお偉いさんが足止め食らって来れないから延期だなんて。


しかも会場についてから知らされるとか本当最悪。


せっかく大学の授業休んで行ったのに。


あ~、今日はついていない。


このまま家に帰るのも嫌だったから私は、面接会場近くの街中を散策していた。


雨で全身濡れていたからこのまま寄り道してもたいして変わらない。


おしゃれな街並みをあてもなく歩きながら、ふと路地を見ると表通りの賑やかさには似合わない少し古びた街並みが見えた。


普段ならそんなことは気にも留めないのに、その時は無性に気になり、路地を進んだ。


路地を進むとそこには昔ながらの商店や家が並び、この通りだけ時間の流れ方が違うように感じた。


そのまま道を進むと木が生い茂る場所が見える。


何だろう、そう思いながら足を進めると、そこには辛うじて「神社」と読み取れる劣化してしまっている石柱と境内へ続く参道があり、参道の先には赤い鳥居が見える。


背筋に悪寒が走る。


なんだか気持ちが悪い、この先に行ってはいけない。


そう本能的に思った。


来た道を引き返そうとするが、足が動かない。


出せる限りの力を出すが、地面に接着剤が付いているかのようにビクともしない。


なんで動かないの?


焦る気持ちとは裏腹になぜか足が鳥居の方へ動き、石柱を通り過ぎた。


嫌、あっちには行きたくない!


引き寄せられるように一歩、また一歩と鳥居の方へと足が勝手に動いていく。


先程と同様に抵抗しようとしても、勝手に動くのだ。


自分の体が自分じゃないみたい。


暗く鬱蒼とした参道を進んで行くと、入り口でも見えた赤い鳥居が近づいてくる。


この古びた街並みには似合わない、やけに新しく眩しいくらいの朱色をしていた。


鳥居を潜ると、パッと視界が明るくなった。


鬱蒼とした茂みが開けており、鳥居を境にしてこちらは晴れていた。


さっきまであんなに激しい雨が降っていたのに…


先程までの体の重さはないが、やはり元来た道を戻ろうとするが、鳥居から先にいけない。


仕方がないので、境内を散策することにした。


砂利を踏みしめながら散策をすると、季節外れの梅が咲いていた。


誰かいないのかな、そんなことを考えながら散策をしていると少し場違いのような薄汚れた白い布を被り、腰には刀らしきものをぶら下げた男性が立っているのが見えた。


何かの撮影?邪魔しちゃ悪いかな。でもこの場所からの出方を知っているかも!


そう思い、男性に近づく。


ザッザッと砂利を踏む音に気付いたのか、男性がこちらを振り向き、驚いた表情をした。


「あの、すみません。なぜかここに辿り着いたのですが、元来た場所に戻りたくて…。道を教えて頂けませんか?」


男性に声をかける。


近づいて分かったのだが、男性は金髪で、整った顔立ちをしていた。


カメラは見当たらないが、やっぱり何かの撮影だろうか。


「あんた、俺が見えるのか。いや、今のは聞かなかったことにしてくれ。ここまでどうやって来たんだ?」


見えるのか?何だか気になる言葉を言っていたが、気にしないことにして事情を説明する。


「そうか。導かれるようにここにきてしまったのか。普通であればここに入れないはずなんだが…」


男性はそう呟くと、何か考えるように黙り込んでしまった。


普通なら入れない場所ということは、やはり撮影場所で閉鎖でもしていたのだろう。


迷惑をかけてしまったな、そう思っていると隣の男性が叫んだ。


「おい!光忠はいるか」


男性が社に向かって叫ぶと、全身黒ずくめで同じく刀らしきものを持ち、眼帯をしたこれまた顔の整った男性が出てきた。


「どうしたんだい、そんな大声で僕を呼ぶなんて。あれ?その女性は?」


「迷い込んだらしい。返す方法を知っているか?」


「僕は分からないな。もしかしたら陸奥守くんなら知っているんじゃないかな」


そう呟くと、眼帯の男性は社に戻り、しばらくすると今度はオレンジ色の衣装を纏った男性を連れてきた。


「おんしゃが迷い込んだちゅう女性やか?」


まるで子犬のような笑顔を浮かべながら近づいてくる。


「はっ、はい!なんかここに辿り着いてしまって…!撮影中に入り込んでしまい、すいません!」


「がっはっは!撮影なんかしちょらん。大丈夫じゃ!こがなところではなんやき、こっちで話そう」


そういうと私の手を引っ張り、社の中へ案内された。

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