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魔法使いになんてなりたくない  作者: 葉山田 高尾
1/1

終わりも始まりも、だいたい突然やってくる

連載物にはしたけれど、続きなんて考えてない。

エタり上等まかしとけ。

 大打者だって3割しか打ってない。

 世の中の半分以上は上手く行かないようにように出来ている。

 だから俺は高望みもしないし、出来ない事はやらない。

 かといって、勉強を怠るわけでもない。

 たいして期待せず、あんまり望まず、そこそこ程度にやっていく。

 それだけの事だ。


 俺は、そこそこ勉強もするし成績も悪くない。

 それなり友達もいて、部活もやるし、遊びもする。

 とりたて変な先祖は居ないし、手からビームも出さないし、目から術とか使わないし、超スピードで走ったりもしない。

 オシャレな呪文で地面がドカーン! 光がビューン! とか、漫画みたいな事も出来ないし、そもそもしたいと思わない。

 「特別になりたい」とか「力が欲しい!」なんて思った事だって無い。

 強いて言えばもう少し数学の成績が上がればなーと思ったくらいか?

 ひょんな事から厄介事にー!とか、変なヤツと友達になってからー!とか、出生の秘密ー!とか、漫画の中の話だと思ってた。

 なのに……。

 俺の部屋の真ん中で、光り放ち浮き上がる、『本』が俺に向かって、

 『私と契約し、魔法を継承せよ。田中寿和!!』

 「……え、嫌だけど」

 どうしてこうなった……。


 「ねーちゃん、ご飯」

 開かずの扉に呼びかけて、晩のお膳を廊下に置く。

 今日は親子丼に吸い物と漬物。

 店屋物みたいなメニューだが、俺の手作りだ。

 部屋から返事はない。バラエティー番組の音声は聞こえるんで、部屋の中にはいるだろう。

 空になったを昼飯の器があるから、食ってはいるんだろう。それをもって、居間に戻る。

 「お膳上げてきたよ」

 「うん、じゃあ座れ。食おう」

 親父に促されるわけでなく、いつもの席にいつものように座ると、お母さんがいつもと同じように手を合わせる。

 「いただきます」

 「いただきます」


 いつものように、いつもの通りの、そこに姉貴の居ない食卓。


 --「魔法少女。

 幼稚園の頃、姉貴と一緒に見ていた覚えがある。

 自称何の取り柄もない普通の女の子が、魔法の国の妖精から変身アイテムを貰って、派手な色の魔法のドレスに身を包み、町中に愛と希望を振りまきつつ、わるい悪魔をヤッツケル的なヤツだ。

 正直俺はコレが好きじゃなかった。

 俺としては同じ時間に放送してた男子向けのヒーローロボットモノが見たかったし、姉貴の魔法少女ゴッコに付き合わされるのも嫌だった。

 小学校1、2年の頃まで、ナンチャラステッキで叩かれたり、ヒッサツワザで殴られたり。

 毎日毎日そんな感じで、その頃から姉貴とは一定の距離を置くようになった。

 当然だ。殴る相手の側に居たいなんて奴は、そうそう居ない。

 姉貴はテレビっ子だったんで、距離を置くと必然的に俺はTVを見なくなり、姉弟の会話も減った。

 殴られる事も無くなったが、中学を出る頃には姉弟の間には断絶に近い溝が出来た。

 姉貴が引き籠もりになったのは、俺が高校に上がってすぐだった。

 テレビっ子から卒業した後は、普通に部活に勉強に遊びにと、学生生活を謳歌していたんだが。

 翌日。


 一一野球部の活動を当面の間停止とする一一


 月曜。朝練に出た俺たちが、部室の扉に張り出された張り紙に呆然とするしかなかった。

 先輩共が不祥事をやらかして、警察のお世話になったのが校長と監督に伝わり、と。

 月曜日の朝に、活動停止のお知らせが出た。

 何をやったのか。飲酒か、暴力沙汰か。お察しでしか無いが、俺は突然目標を失った喪失感に、呆然とするだけだった。

 

 学校側はこの件を真剣に受け止めてるって事なのか、活動停止は無期限。部員には転部が勧告され、野球部の道具は、部室から学校の倉庫へと移された。

 大山と田崎と滝田さんは他校から声がかかり、新沢と森田は転校していった。

 一年も引き抜きや転校で、バラケていった。友達が軒並み居なくなった。

 俺には、引き抜きの声もかからなかったし、転校するにも、親に負担はかけたくなかった。

 俺も、メダルと、盾と、集合写真を一箱にまとめ、自分のグラブと、スパイクと、バットを丁寧に磨いて、家の物置にしまい込み、洗ったユニフォームを、丁寧にたたんで、箪笥の衣装箱にしまい込むと。

 少し泣いた。


 「としー、としかずー。ごはんよー」

 「…ごめん、後で食うー。置いといてー」

 我ながら涙声だった。

 「置いとくからー、ちゃんと食べなさいねー」

 「わかったー」


 「……ふぅーーー……」

 灯りもつけず、ベッドに倒れこむ。

 リトルの頃からやってた。でも、正直俺は上手い選手でも強い選手でもなかった。

 大義高で一年やってきて、二年目。レギュラーの目も見えてきたあたり。新しく入ってきた一年も経験者揃いで、今年は良い所まで行くんじゃないか?なんて言ってた矢先の出来事だった。

 なにも、甲子園で優勝!とか、プロ選手にスカウト!とか、派手なもんじゃない。

 勉強もやって、野球もやって、大学行って。実業団あたりで就職の糧になれば、くらいは考えてたけど。

 高く飛んだ打球を、全力で走って捕ったアウトの感触も、狙ったバットの一振りが、相手の投球を吸い込んだ感触も、ホームに帰ってくる返球と競りながら、ホームベースに飛び込んだ感触も、たぶん、そのうち消えてくれる。

 この涙は、それらが体から出て行ってる証だ。

 ……、さて。メソメソするのもここまでだ。晩御飯食わないと。

 と、身を起こした時、隣の部屋、ねーちゃんの部屋からドスン!と大きな音がした。

 なんだ? と思ったのもつかの間、俺の部屋に閃光が奔り、輝く本が現れた!

 『私と契約し、魔法を継承せよ。田中寿和!!』

 「……え、嫌だけど」

 どうしてこうなった……。

キャラ設定も舞台設定もフンワリ。

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