第35話 卒業試験編 (ミスリル鉱山編)
翌朝、篝火亭の前でリシアと待ち合わせをし、課題についての打ち合わせをした。
「リシア。先にラディスが所有しているという、ミスリル鉱山に行こうと思うんだけど、それでいいかい?」
そう確認を取ると、
「そうね。先にそっちを片付けてしまいましょう。あ・・・そうだ。一応長旅になるから、父様にミスリルの鉱山までの、お勧めのルートを教えて貰ったらどうかしら?」
シオンは一理あると思い、リシアにストレイル家までの案内を頼んだ。
そうすると、冒険者ギルドから少し歩いた貴族街に入り、少し歩くと左手に・・・立派な豪邸が見えてきた。それをリシアが指さし、
「あれが私の家よ。今父様を呼んでくるわ」
そう言って屋敷の中に入っていった。しばらくするとラディスが出てきて、
「やぁ久しぶりだね。リシア共々元気そうで何よりだ。それでリシアから話があるって聞いたんだけど、何かな?」
そう言われたので、シオンはギルド章を見せ、その上でミスリルの鉱山に行くお勧めのルートは無いか、ラディスに尋ねた。
「そうだね・・・馬車だとどうしても時間がかかってしまう。途中の町で宿泊するか、野営になる。ただ、あくまでそれは普通のルートの話だ。この指定のルートを通ると、少し外れた所にストレイル家所有の山小屋がある。そこを中継して行けば、ミスリル鉱山の麓の、スマトラという町まで距離を短縮できる」
それは山の中を抜けるという事で、馬車は通れないのでは?とラディスに問いかけると、
「そこでシオン。君に良いものを貸してあげよう」
そう言って屋敷の裏手側にシオンを連れて行く。
「これを使って行けば良い。君なら乗りこなせるはずだ」
そう言って見せてきたのは地竜であった。テイムされており、人のいう事を聞くようだ。流石は伯爵家である。
試しに乗ってみなさいと言うので、それに跨る。そうすると地竜は嬉しそうに鳴き声を上げる。
「・・・すごいな・・・この地竜は気難しい性質を持っていて、乗り手を選ぶんだが・・・」
ラディスはあえてシオンに難しい地竜を当てがったようだ。それを簡単に手なずけてしまい、逆に驚いている。
今度はその地竜にリシアも乗ってみたいというので、リシアが跨る。やはり暴れないようだ。素直に言うことを聞いている。
ラディスは間違えたか?と思いつつ、使用人を呼び、その地竜に跨らせる。すると・・・
「グワァァァァ!ドタンバタン!!」
物凄い勢いで地竜は暴れ、使用人は振り落とされてしまう。それを見てシオンは地竜を宥め、リシアは振り落とされた使用人に、回復魔法をかける。それを見てラディスは・・・
「ははは・・・シオンはともかくリシアまでがね・・・」
娘の成長を嬉しく思う反面、自分の手の届かない所に行ってしまう不安に、捕らわれるのであった。
その後、鞍を付けて貰い、リシアを乗せた後に、その後ろにシオンが跨った。そうすると地竜は嬉しそうに鳴き、走り出そうとする。
それをシオンが抑えると、地竜はおとなしく従った。ラディスから地図を貰い、お礼を言って見送られながら、シオンはスマトラの町に向かった。
町の中をシオンは索敵で周りを確認しながら、突っ切っていく。そして、以前学園の課題で来た食品店に一度寄る。店主には地竜を驚かれたが、おとなしくしていた為、興味本位で眺めていた。
その間に、買い込んだ食料をこっそり収納し、店主にお礼を言って、シオン達は町の外に走り抜けていった。
シオン達は休憩を取りながら、3日間森を突っ切っていくと、ラディスが教えてくれた山小屋まで、もう少しである。
しかしそこでシオンの索敵が反応した。地竜も気配を感じ取ったのか、グルルルと威嚇している。索敵の色を確認すると・・・赤が3体!?そして緑と黄が合わせて50体近くいる。これは・・・
シオンは地竜から飛び降り、リシアには地竜の上から援護をお願いした。近づいて来ていた。距離は前方300メートル。相手はオークの集団であった。
シオンはまずリシアと地竜に自動防御を4重で展開。その後、絶対隠蔽を付与し、気配を薄くする。そしてリシア自身にも魔法障壁を張ってもらう。
シオンは先手必勝とばかりに絶対隠蔽を起動し、オークの先頭集団に向かってウインドカッターを飛ばす。
「ヒュパン!」
高威力のウインドカッターが周りの木を巻き込んで、オークの首を数体吹き飛ばす。それを見て、オークも敵がいることを感知。魔法を唱えてきた。
「向こうにも魔法を使えるやつがいるのか」
シオンは走りながら、また数体のオークの首を飛ばす。オークも当たりをつけて、シオンに魔法を放ってくる。シオンの周りが魔法で穴だらけになる。自動防御が2枚破られるが、シオンは索敵を強化する。
「魔法を使ってるのが・・・そうかあいつらか指揮官は」
最初に索敵で赤く表示されたのは、オークキング、オークジェネラル、オークハイマジシャンの3体だった。
シオンは自分一人でも倒せるだろうが、いかんせん数が多い。リシアに援護を頼む。
「リシア!11時方向と1時方向のやつらを薙ぎ払ってくれ!」
そう叫ぶとリシアが魔法を詠唱し、魔法を連射する。
「ファイアーランス!!」
いきなり予想外のところからファイアーランスが乱れ撃たれ、オークたちは大混乱。腹を焼かれ絶命するものや、腕などに突き刺さり、転げまわる個体も出てきた。
リシアの魔法により、20体以上のオークが戦闘不能になる。さすがに上位種も動揺したのか、その隙を狙って、ミスリルの剣でオークハイマジシャンの首をシオンが一撃で落とす。
魔法を多少感知できるマジシャンも、物理攻撃の不意打ちには、対応できなかったようだ。
その後、マジシャンを倒したことにより、シオンは動きやすくなる。
周りにいる下級種にウインドカッターを撃ちまくり、10体近いオークを絶命させる。
後方ではリシアが撃ち漏らしたオークを掃討している。シオンは上位種2体に対し、猛攻をしかける。
「ウインドブレイド!!」
風中級魔法を2体にぶつける。しかしキングを守るようにジェネラルが立ちふさがり、その魔法を押しとどめる。その隙にキングが飛び出し、シオンに大槌の一撃を振るう。
「ガキィィィィン!・・・ピシ!!」
ミスリルの剣で受け止めるが、その重量に足が地面にめり込む。そして耐えきれなかったミスリルの剣が折れる!
まずいと思った時には、シオンは大槌の一撃を食らい、吹き飛ばされる。
「がは・・・げほ・・・くそ・・・馬鹿力め・・・」
シオンは自動防御を2枚割られた状態で戦っていた為、防御を突破されてしまう。
リシアがキングとジェネラル以外を殲滅したので、援護に入る。
「ファイアージャベリン!!」
火の中級魔法で牽制してくれているが、やはりジェネラルに防がれる。その隙にキングがシオンに忍び寄る。
シオンは自動防御を掛けなおそうとする。すると頭の中に、直接情報が流れ込んできた。エキストラスキル獲得・・・と。するとヘルプ欄が表示される。
「スキル自動防御・・・LV6以上の時に発動。最大枚数を突破され、ダメージを受けた場合、自動バリアに変化する。また、MPを消費しない。ONとOFFが可能で自動で修復され、張り直し不要。硬度は自動防御の3倍になる。」
動けないシオンを見て、リシアは泣き叫ぶ!
「シオン!逃げて!!お願い!!!」
オークキングの一撃が振り下ろされる。リシアの悲鳴が聞こえる。
しかしシオンを自動バリアが守る!
「バチバチバチバチ!!!」
オークキングの大槌は半分も貫通出来ない。それどころか相反する力により、大槌の方が砕ける。
それによりキングは動揺し、ジェネラルにも隙が出来る。リシアはその隙を見逃さなかった。
「アイスブレイド!!」
氷の剣がジェネラルに突き刺さる。だがさすが上位種。絶命までは至らない。リシアも魔法を連射して止めを刺そうとするが、懸命にジェネラルも粘る。
傷を負った状態で、シオンは立ち上がり、オークキングに向き直る。
ミスリルの剣は折れてしまった・・・何か・・・何か手はないか?
シオンは戦いの中で思案する。
「この剣がお前を守ってくれるだろう」
そう言っていたアルスの事が思い浮かんだ。シオンは一つ試してみることにした。意識を折れたミスリルの剣に集中する。オークキングが迫るが、それでも集中する。そしてオークキングが襲い掛かろうとした瞬間!
「ウインドブレイドォォォ!!」
シオンは風を折れたミスリルの刀身に流し、剣を形成。そしてオークキングに切りかかった。
キングは即対応し、両腕をクロスさせて防御をしたが、その腕ごとシオンはオークキングを真っ二つにして絶命させる。
キングがやられたのを見て、茫然としているジェネラルに、リシアの魔法が突き刺さり、ジェネラルも絶命した。
戦闘が終わると地竜からリシアが降り、泣きながらシオンに走り寄ってきた。
「馬鹿!馬鹿!死んじゃうと思ったんだから!!何で逃げてくれないのよ!!」
そうリシアに怒られた。索敵で周りを確認した為、魔物は周囲にはいない。
シオンに抱き着いて泣いている為、すまないといいつつリシアの頭を撫でてあげた。
大分落ち着いて来たのか、リシアが回復魔法をかけてくれる。無事に傷が治ったので、地竜にリシアを乗せ、シオンも跨り、山小屋を目指す。
もちろんオークは回収済みである。
無事に山小屋に着き、リシアと共に中に入る。
「シオン・・・今日は疲れたわ。もう寝ましょう」
そう言って布団に入るように催促してきた。シオンも疲れていた為、地竜に食料を食べさせ、地竜と山小屋に自動バリアを展開した後、布団に入る。
リシアが布団に入ると抱き着いて来た。今日の戦闘で、シオンが手の届かない所に行ってしまうのではないかと言う不安からだろう。
すんすんと泣きながらシオンに抱き着いていたが、頭を撫で続けてあげると、次第に安心したように眠りだした。
今日の戦闘を糧に、リシアを泣かせないように、もう少し戦略を練ろうと思うシオンであった。




