プロローグ
「残念ながら目を覚ますことはないでしょう」
医者はそう両親に告げた。
彼は堤剛という名前のどこにでもいる30代の会社員だった。会社に貢献し、実績を上げてきたが、一部の同僚に陥れられ、会社を辞めさせられた。
その時の心労がたたって入院。MRIなどの精密検査を行ったところ、心臓に異常が見つかった。幸い症状は初期段階だったので、失敗する可能性はほぼなかったが、彼は目を覚まさなかった・・・。
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ん・・・?ここはどこだ?
「お?目が覚めたかい?君面白いね。普通あの確率で死ぬとかありえないよ?」
いきなり目の前にいた人影に話しかけられた。
良く目を凝らしてみるとイケメンにも美女にも見える。まぁそこは置いておいて・・・
「ええと・・・あなたは・・・?それと自分死んだのですか?」
それに対して、
「僕はルシフェルという。一応神なんてものをやらせて貰っているよ。まぁ君なら分かると思うけども、この世界では中間管理職みたいなものだね。あと君が亡くなったのは事実で、今は魂の状態でここに存在している形だ」
そう説明した後に付け加えてきた。
「ちなみに僕は男だからね。そこのところよろしく」
どうやらこちらの考えていることが分かるらしい。
気を付けないと大変なことになりそうだ。
「そういうこと。ただ直接僕と会っている場合にしか、はっきりしたことは分からないから、安心してほしい。一応プライバシーは守らないとね。これでも神だし」
少し安心した。常に監視されたらたまったものではない。しかしなぜ私はここにいるのか・・・
それに対して答えがすぐに返ってきた。
「それなんだよ。本来は死ぬことはなかったんだけどね。君の魂が酷く傷ついていて、かなり弱ってしまっていたせいなんだよ」
ルシフェルの話はさらに続く。
「君の世界のなんたらファンタジーのガチャで、SSRを3枚抜きするぐらいの確率だよ?普通ありえないよね」
良く神様が課金ガチャなんぞのことを知っているのか・・・確かに疑問ではあるが・・・
「そもそも魂には予定と定員があってね・・・残念ながらまだ君をそこに送ることができないんだ」
「そこで君には異世界に行って、新しい人生を好きに歩んで欲しいと思う。どうだい?行ってみないかい?」
「ここで何もせず何十年も待つより楽しいと思わないかい?今ならスキルも付けちゃうよ!」
なぜかやたらと饒舌に、異世界に飛ばそうとしている・・・まぁ特に未練もないし、ゲームみたいで面白そうなので、行ってもいいかもしれないな。
ここで何もなく、何十年もいるよりはましか・・・
「さすがだね。じゃあスキルをそうだね・・・3つほど授けよう。どんなのもがいい?取り合えず1時間ほど君の思考を読まないであげるよ」
本当に読まれないか心配だが、1時間の間に考える。3つか・・・何がいいかな・・・ざっと考えてみよう。