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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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独占欲

圭君視点です。

 熊谷さんがハルさん家まで送って下さるそうで、車に乗らせてもらった。

 僕は後部座席、ハルさんは猫の姿のままで僕の膝の上に乗っている。


「善勝さんには、私が動物に化けれる存在だと知られてしまったんですよ。なので、今後は匿名の電話ではなく、善勝さんに直接電話をする事になりました」


 車が走り出してすぐに、ハルさんがそう説明してくれた。

 僕がハルさんと熊谷さんの関係を気にしていたから、気遣ってくれたんだろう。


「おう、そういう事だ。よろしくな兄ちゃん。いや、いつまでも兄ちゃんってぇのもな……圭でいいか?」

「はい、大丈夫です」


 熊谷さんも運転しながら声をかけてくれる。

 多分僕の記憶を消した後に知られてしまって、熊谷さんが協力してくれるって話になったんだろう。


 でもなんか複雑な気分だ。

 僕の記憶は巻き込んで迷惑をかけるからって消したのに、どうして熊谷さんは消さないんだって思ってしまう……

 もちろん熊谷さんと知り合いの方が、ハルさんの通報とかも楽になるって事は分かってはいるんだけど……


「圭君? どうしました?」

「え?」

「なんか気分がすぐれないように見えますが、大丈夫ですか? あっ、もしかして思い出した事による記憶の混乱が……」

「あ、いえ……大丈夫ですよ? ただ、熊谷さんの記憶は消さなかったんだという事に、少し驚いて……」


 ハルさんは僕の顔を覗き込んで心配してくれている。

 その仕草は本当に可愛いので、思わず頭を撫でてしまった。


「あ、あの……」

「あぁっ! すみません、つい……」

「いえ……」

「声を聞いてる限りだと若い恋人って感じなんだが、絵面がなぁ。ただの自分のペットを可愛がる兄ちゃんって感じだな」


 熊谷さんに、少し笑われながらそう言われた。

 確かにハルさんは今猫の姿なので、僕はペットを可愛がっているだけに見えるだろう。


「あの、善勝さんは無視して話を戻しますが、善勝さんの記憶はもちろん消すつもりでしたよ」

「全くだ。ハルはすぐに消そうとするから、本当に大変だったんだぜ」

「そうなんですか? それなら、どうしてハルさんは消さなかったんですか? 何てお願いしたんですか?」

「まぁそりゃあ気になるわな。圭は消されたんだから」

「その……すみません……」

「あっ! 全然ハルさんを責めている訳ではありませんから! ただちょっと気になっただけで……」


 ハルさんが少し俯いた。

 別にもう思い出せたんだから今更の事なんだけど、どうにも気になってしまう……


「消さなかった理由としては、善勝さんは刑事さんですから、今後匿名の電話をしなくてよくなるというのが一番ですね。私の通報がしやすくなりますから。それに、消そうと思えばいつでも消せますから、今すぐに消さなくても……」

「ハル、お前……まだ消そうとしてやがったのか! 俺を信用したんじゃねぇのかよ」

「今は一応信用しましたよ。でも人の会話を盗聴するような人は嫌いです」

「だから悪かったって!」


 なんかまた僕には分からない話を2人が始めてしまった。

 今日はハルさんと恋人になれたという喜びが大きいせいか、やけに独占欲が湧いてきてしまう……

 こんな事を悩んでいるようじゃダメだ。

 またハルさんに心配されてしまう。


「盗聴ってなんの話ですか?」


 悩むくらいなら聞いて解決した方がいい。

 僕はハルさんを支えていける存在になるんだから。


「あの、その……私が圭君の記憶を消したあの日……圭君の服には善勝さんが盗聴器を仕掛けていたんです。だからあの時の会話は善勝さんに全部聞かれています」

「悪かったな、圭」


 あの時の会話を盗聴……

 あの会話、聞かれてたのか……

 それはなんかちょっと……嫌だな。

 だからハルさんは熊谷さんに対して冷たいのかもしれないな。


「そうだったんですか……」

「盗聴していた事に関しては、本当に悪かったと思ってるさ。だが圭には少しは感謝してもらいたいもんだな」

「感謝ですか?」

「俺がハルの事に気付いた事で、ハルはもう匿名の電話をしなくてよくなっただろ? つまりもうハルは今後、誰かに携帯を借りる事もないわけだ。圭以外の奴に頼る事はなくなった」

「あぁ、なるほど……」


 確かにそれはかなりの利点だ。

 それに僕の携帯からでも、何も気にしないで通報が出来るんだから。

 もうハルさんが警察に追われる事もないし、僕とハルさんの時間が邪魔される可能性がかなり減ったことになる。

 熊谷さんがハルさんの事情を知っているというのは、僕にも結構都合がいいんだな。


「変なところで開き直らないで下さい」

「でも圭も喜んでるぞ。やっぱり俺の記憶は消さないほうがいいな」

「そうですね、()()

「まだ消そうってか……圭、これは圭のためにもなるんだ。俺の記憶を消さねぇよう、ハルにはよくよくいい聞かせといてくれよ」

「はい、分かりました」


 確かに盗聴されていた事は嫌だけど、それは多分僕がハルさんの事を話さないと思ったからだろう。

 刑事さんとして、ハルさんという通報してくる謎の女性を保護したかったんだ。


 熊谷さんは少しふざけているような時もあるけど、僕達の事を本当に考えてくれているいい人なんだと、改めて思った。


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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