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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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盗聴の末

善勝さん視点です。

 兄ちゃんの勇気の大告白は、ハルの記憶を消すという、これまた訳のわからん力のせいで大失敗に終わっちまった。

 いや、俺が勝手に大失敗だって決めるのは良くねぇか。


「私達は基本的に人と関わってはいけないんですよ。だから、もし見られたりした場合は、その人から自分に関する記憶を消して立ち去るんです」


 聞いてるだけでも、兄ちゃんは大分荒れているみたいだ。

 それに対してハルは落ち着いているようで、学校の先生みたいに喋っている。

 人と関わっちゃいけねぇって、お前も人だろうに……


「……だったら、何で今まで僕から記憶を消さなかったんですか?」


 少し落ち着いた様子の兄ちゃんが、かなり苦しそうな声で質問した。

 確かにそうだ。

 兄ちゃんはずっと、ハルが特別な存在であることを知っていたのに、記憶を消されていない。

 その事実が、兄ちゃんの告白への返事になってると思うんだが……


「私が圭君の優しさに甘えていたからです。圭君が誰かに私の事を言いふらしたりしない人だと分かってましたから……記憶を消すのは力の消費量も大きいので、今無理に消す必要はないと……」

「なら、今回も消す必要はありませんね。僕はこれからもハルさんの事を誰かに言ったりはしませんから」


 誰にも言わなければ、知られても記憶を消す必要はないのか。

 力の消費量も大きいねぇ……

 つまり、ハルさえ説得出来れば、俺達警察とだって協力関係にはなれるはずだ。


「いえ、それがやっぱり間違いだったんですよ。だからこうやって圭君を巻き込んで、迷惑をかけてしまったんですから」

「だから、全然迷惑なんてかけられてないんです! むしろ記憶を消される方が迷惑なんですよ! 僕はハルさんの事が好きです! その、好きな人の記憶を消されるなんて、迷惑以外のなんでもないじゃないですか!」


 また兄ちゃんが荒れてきたな……

 まぁ無理もないか。

 ここは俺も早く兄ちゃんの家に行って、2人でハルを無理矢理にでも納得させるしかないな。


「大丈夫ですよ、記憶を消したら私の事なんてちゃんと忘れて、今度はもっと、素敵な方を好きになりますよ。だから、大丈夫です」

「何が大丈夫なんですか!? そんなの、全然大丈夫じゃない!」

「大丈夫ですよ、ちゃんと素敵な方を好きになって、結ばれて、幸せな生活が待ってますからね」

「ちゃんと僕の話を聞いて下さい!」


 やべぇな、ハル……

 この女、欠片も人の話を聞く気がねぇじゃねぇか。

 こんな奴を説得するのは無理そうだぞ……


「ちゃんと聞いてますよ……そもそも圭君がそんな感情をもってしまったのも全部、私が悪いんですから。綺麗に消して、私の事なんて忘れてもらわないと」

「そんな感情? ハルさんにとって、僕からの好意は迷惑なんですか?」

「…………」


 なんか、喧嘩になってきたな……

 このまま兄ちゃんがハルを説得出来れば話は早いんだが……


「僕、まだハルさんからさっきの返事をもらってないんですけど」

「……記憶、消しますね……」

「ハルさん!」


 ハルの奴、もう強引にでも兄ちゃんの記憶を消そうとしてやがる……

 ここからどれだけスピードを出しても、兄ちゃんの家まで10分はかかる。

 それまで兄ちゃんが持ちこたえてくれねぇと……


「……あまり、時間もないことですし、そろそろ消しますね」

「もう、ハルさんがとんでもなく頑固なんだって事はよく分かりました。なら僕は記憶を消されても、思い出してみせます! ハルさんの事を!」

「え?」


 は? 何言ってんだあの兄ちゃんは……

 記憶消されるの、受け入れてんじゃねぇか!

 あと9分待ってくれって!


「ちゃんと思い出しますから!」


 そういう問題じゃねぇ!

 もしそれでハルがいなくなったら、俺はハルに会う手段がなくなるんだよ!


「そんな事……できるわけないじゃないですか! 私達の力はただの人が対抗できるような力ではありませんよ」

「いえ、できます! だからハルさん、僕から記憶を消しても会いに来て下さい。来てくれたらもう一度、ちゃんと言い直すので、だからその時は返事を聞かせて下さい」


 凄い自信だな……

 俺にはハルの力ってのがどんなに凄いものなのかは分からない。

 だがこの兄ちゃんなら、確実にハルの事を思い出せると思えてくる程だ……


「……一度だけ……では、一度だけ会いに来ます。それを本当のお別れにしましょう」

「お別れにはさせませんよ」


 向こうで何が起こってるのかは分からない。

 だがおそらく、兄ちゃんの記憶が消されているんだろう。

 くそっ、間に合わねぇ……

 あと5分……5分早ければ間に合ってたのに……


「……さようなら、圭君」

「必ず、思い出します……か……ら…………」


 盗聴器からは、


バタッ


という、人が倒れる音が聞こえてから、


「うっ……うぁ……あぁぁ……あ、あぁぁぁあああぁっ!」


と、とても悲痛な女の泣き声が聞こえてきた……


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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