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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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考える時間

善勝さん視点です。

 兄ちゃんの服に仕掛けた盗聴器から聞いていると、ハルという女が現れた。

 状況は全く分からんが、このハルがいつも通報してくる女だって事は間違いない。


「そんなことよりも圭君、手を出して下さい」

「はい? えっと、こうですか?」


 おいおい、今は俺達警察の話をしてたってぇのに、"そんなこと"とは言ってくれるじゃねぇか。


「やっぱり怪我をしてますね」

「こんなのただのかすり傷ですよ」


 ん? 兄ちゃん怪我をしてたのか?

 さっきは気づかなかったが、それは悪い事をしたな……

 まぁ縛られた状態であれだけ動いたら、かすり傷位できるわな。

 俺の配慮不足だ。


「他に痛いところとかはありませんか?」

「はい、大丈夫です」

「良かったです。では」

「えっ、ハルさん……これ……」


 ん? 何だ? 何をしている?

 音を聞いているだけだと、ハルが何をしたのかは分からない。

 だが兄ちゃんの驚きようから察するに、何かとんでもない事でもしたか?


「治癒の力、覚えたんです。もう誰にも迷惑かけたくなかったので……なのに、こうして圭君に迷惑かけて……」


 治癒の力……?

 待て、待て待て、ちょっと一旦待ってくれ。

 もう分かった。

 俺がハルに会おう。

 それが早いな……


「僕、ハルさんに迷惑なんてかけられてないですよ?」

「いえ、あの石黒という方はずっと私を追っていたようでした。私が迂闊に圭君を巻き込んでしまったから、圭君はあんな目にあったんですよ。私のせいです……」

「全然、ハルさんのせいなんかじゃないです!」


 何かどっちが悪いみたいな話をしているみたいだし、今のうちに行くか。


「おい、俺はちょっと出てくる。後の事は任せたぞ」

「はい!」


 とりあえず部下に現場を任せ、兄ちゃんの家に向かう。

 向かう間も、勿論盗聴器から2人の様子を聞いている。


「そういえばキツネのハルさん、動きも華麗で強いんですね」


 キツネのハルさん……

 おいおい兄ちゃん、それは日本語がおかしいぞ。

 正しくは、ハルさんのキツネだろうに……


「え、あぁ……そうですね。キツネは動きやすいですし、尻尾も使えますからね」


 動きやすい?

 尻尾が使える?


「凄くかっこよかったです。助けていただき、本当にありがとうございました」

「いえ……」


 まるでハル本人に助けてもらったような言い方……

 正直理解は出来ねぇが、ここまでこの2人の会話がおかしいと、もう認めるしかねぇな。

 ハルという女はおそらく、普通の人間ではないんだろう。


 確か石黒が言ってたな。

 石黒の部下が猫を怪我させて、その猫を兄ちゃんが拾ったって……

 あと小鳥を招き入れていたとも言っていた……

 キツネのハルさんが存在するのなら、猫のハルさんや、小鳥のハルさんも存在するんだろう。


「あ、あの! ハルさん……」


 急に兄ちゃんがハルを呼んだ。

 俺にも少しは考える時間をくれよ……


「僕は、ハルさんの事が好きです! これからは僕の恋人として、お付き合いしていただけませんか?」


 って……このタイミングで!?

 そっちはそういう雰囲気かもしれんが、こっちはまだ冷静にもなれてねぇんだよ。

 俺ももう若くねぇんだから、少しは労ってくれても……


 何か盗聴してるのが申し訳なく思えてきたな……

 いや、そもそも俺が盗聴してる事は問題なんだが……


「……圭、君…………」


 ハル……なかなか返事をしないな……

 この2人の関係はよく分かんねぇが、毎日小鳥として会いに来ていた位の仲なんだったら、返事はすぐ出来るだろうに……


「あの、ハルさん……?」


 兄ちゃんも心配しているみたいだ。

 気にはなるが、これはこの2人の、2人だけの大切な時間だ。

 本人達が気づいていないとはいえ、俺が聞いていていいものじゃない。


 今から兄ちゃんの家にいけば、ハルに会うことは出来るだろう。

 ハルがいなかったとしたら、兄ちゃんの家で動物を探せばいいみたいだからな。

 これ以上聞くのはやめておこうかと思い、盗聴器を耳から外そうとしていると、


「……ごめんなさい、圭君。今から圭君の中にある、私に関する記憶は全部、消しますね……」

「えっ?」


というハルの声と、少し驚いたような兄ちゃんの声が聞こえた。


 今、兄ちゃんの記憶を消すって言ったよな?

 兄ちゃんが物凄い勇気を出して言ったであろう告白に、返事をすることもなく……


「本当にごめんなさい、最初からこうしていればよかったんですよね。なのに圭君の優しさに甘えて、こんなに迷惑かけて……」

「僕はそんな事が聞きたくて言ったんじゃありません! それに、記憶消すってどう言うことですか!?」


 記憶を消す事が出来るというのは、兄ちゃんも知らなかったんだろう。

 凄い動揺しているみたいで、あの物静かな兄ちゃんからは想像も出来ないような大声をあげている。


 それにしてもハル、厄介な女だな……

 とりあえず会えばなんとかなるかと思ったが、記憶を消せるなんて論外だ。

 下手に会って俺の記憶まで消されるなんて事になったら、結局今までと一緒だ。

 もしかしたら今までも本当は会っていたのに、記憶を消されていた可能性だってある。


 そういえば、昔……鳥に助けられた事があったな……

 あんな偶然があるのかと驚いていたが、もしかしたらあれはハルだったのかも知れねぇな……


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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