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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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大切な人

圭君視点です。

 僕は今、泣いているハルさんを抱き締めている。

 ハルさん……動物になることが出来るという変わった力を持っている、僕の大切な人……

 感情が顔に出やすくて、キャベツが大好きで、とても優しい人だ。

 あと、結構な頑固者かな?

 思い出せた……僕はちゃんと、ハルさんを思い出すことが出来たんだ……


「ごっ……ごめっん……なさいっ……なんか、全然……止まらなくて……」

「いえ、大丈夫ですよ。ゆっくり落ち着きましょうか」


 涙が止まらないと、ハルさんはかなり動揺しているみたいなので、頭を撫でて落ち着くように促してみる。

 ハルさんの気持ちも聞けた今、あの時のハルさんがどれだけ心を痛めながら僕の記憶を消したのかも分かる。

 中々感情の整理が出来ないんだろう。


「す、すみません……もう大丈夫ですから……」

「少しは落ち着きましたか?」

「はい、ありがとうございます……」


 出来ればずっとこのまま抱き締めていたいという思いもあるけど、そういう訳にもいかないので、抱き締めていた腕を緩めた。

 僕とハルさんとの間に少し距離ができる。

 ハルさんは、泣きすぎたせいか目が少し赤くはなっているけど、大分落ち着いたみたいだ。


「私、圭君より歳上なのに……情けないですね……」

「そういえば、ハルさんっておいくつなんですか?」

「えっ……う~んと……私、今何歳でしたっけ?」

「え、ハルさん、自分の歳を覚えてないんですか?」

「そ、そうですね……忘れてしまいました……あっ! でも、圭君よりは歳上なのは間違いないです」


 別に、ハルさんが何歳だろうと歳の差なんて気にしないけど、まさか自分の年齢を覚えていないとは……

 もしかして、誕生日とかを祝う習慣がないんだろうか?


「ちなみにハルさん? 誕生日は?」

「あ、それなら3月27日です」

「よかったです。そっちは忘れてなかったんですね」

「圭君の誕生日はいつですか?」

「2月10日です。覚えて下さるんですか?」

「当たり前じゃないですか」

「ありがとうございます」


 ハルさんの誕生日を教えてもらったし、僕の誕生日も覚えてもらえる……

 些細な事だけど、凄く嬉しい。

 こうやって僕が今まで知らなかったハルさんの事を、これからは沢山知っていきたいな。


「あの、ハルさん。僕はハルさんの支えになりたいんです。だから僕に話せる範囲で構わないので、ハルさんの事を教えてもらえませんか?」

「そ、そうですね……元々圭君の受験が落ち着いたら、お話するつもりでしたし……」

「そうだったんですか?」

「勝手に決めてて申し訳ないです……」

「そんなの、謝る事じゃないですよ」


 前にハルさんの事を聞いた時、落ち着いたら話すと言ってくれたのはやっぱり僕の受験の事だったのか。

 僕の勉強の邪魔になると思って、配慮してくれていたんだな。

 話してくれる気だったのに、石黒さん達の事に僕が関わってしまったから、ハルさんは責任を感じて、こんな記憶を消すという発想になってしまったんだ。

 それも僕を変な事に捲き込みたくないっていう理由だったし、ハルさんは本当にどこまでも僕の事を考えてくれているんだ……


「ハルさんの事を教えてもらえるのは、僕も嬉しいですから。僕もハルさんに聞きたい事が沢山ありましたし」

「聞きたいこと?」

「一番聞きたかったのは僕の事をどう思っているかなので……それはもう、さっき聞かせてもらえましたし……」

「あ、その……そうですね……」


 ハルさんは顔を真っ赤にして、俯いてしまった。

 その仕草も可愛いくて……

 ダメだな、僕……さっきから大分浮かれ過ぎている……

 もっと気を引き締めないといけないな。


「あの……他に私に聞きたかった事は何ですか?」

「えっと、ハルさんって不思議な力が使えますよね? あの力はいつから使えるようになったんですか? 僕の怪我を治して下さった時、治癒の力は新しく覚えたって言ってましたよね?」

「うーん、いつからかと言われると少し難しいのですが、"浄化の力"と"自分以外の存在に化ける力"は、私が生まれた時から持っていた力です。それ以外の、"治癒の力"や"重力を操る力"は、後から覚えた力ですよ」


 あの動物になれたりする力、生まれた時から使えたのか……

 でもそれだと周りの人は使えない力を使えるって事で、混乱したりとかはしなかったんだろうか?

 それとも、そういう力を使える人達ばかりが暮らす所でもあるのか?

 それはそれで幼い頃なんてきっと、力も上手く扱えないだろうし、苦労したんじゃないのかな?


「生まれた時からって事は、幼い頃とかに無意識で力を使ってしまう事はなかったんですか?」

「それは私にこういう力がある事や、力の使い方を教えて下さった、ユズリハ様という方がいらっしゃいまして……その方が私が3歳になって物事を自分で理解できるようになるまで、力を押さえて下さっていたので大丈夫です」

「ユズリハ様? その方に僕がお会いすることはできますか?」

「いいえ……もう、亡くなられていますから」


 ハルさんはとても辛く、悲しそうな顔でそう言った……


「えっ、そうなんですね……」

「ユズリハ様は私達に沢山の事を教えて下さいました。力の使い方だけでなく、これからの生き方や考え方。強くて、優しくて、本当に素敵な方でした」


 ハルさんが生まれた時からハルさんの力を制御していて、力の使い方とかを教えた偉大な人。

 ユズリハ様を語るハルさんの雰囲気から、その人がハルさんにとってどれだけ大切な人だったのかが分かる……

 僕もお会いしてみたかったな……


「今の仕事も私達は皆、ユズリハ様の意志を受け継いで頑張っているんですよ」

「その、ハルさんの仕事について教えてもらう事はできますか?」

「そうですね……私の仕事の話をする前に、ちょっと長い話を聞いてもらえますか?」

「はい、もちろんです」


 土地神様へのお供えの場所を教えてもらった日、ハルさんは急に仕事になった。

 あの時は土地神様も、危なくない事だから安心していいとは仰っていたけど、ハルさん仕事っていうのがずっと気になっていた。

 ずっと知りたかったハルさんの事情を教えてもらえる事に、僕が浮かれていると、ハルさんは一度深呼吸をしてから話始めてくれた。


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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