応援
圭君視点です。
今日は目覚ましをセットしていた、6時に起きることができた。
結構早く寝てしまったから、もっと早くに目が覚めるかと思っていたけど、丁度いい時間だった。
でも、寝起きがよくない感じだ。
頭がぼーっとして、まだちゃんとは起きれてないような、そんな感覚。
なんか、変な夢を見た気がする……
あんまり覚えていないけど、何かがキラキラしていて、青い夢? だった……
思い出そうとしてもなかなか出てこない。
でも、凄く耳に残ってる言葉がある……
"感じた違和感を気のせいで片付けないで"って言われた……
でも誰に? 思い出せないけど、応援してもらったような感じがした。
感じた違和感か……
そういえばここ最近、色んな事に違和感を感じてはいたけど、特に気にしないで流してたな。
とりあえず布団から出て、ベランダの戸を半分くらい開け、網戸をした。
と、本当にもう習慣になっちゃってるんだな。
開けるのやめよう思ってるのに、何で開けてしまうんだろう。
まぁ、でも今日は寝起きがスッキリしなかったし、少し開けておいて外の空気を入れておこうかな。
♪♪♪♪♪
珍しく、僕の携帯がなった。
それもこんな朝の時間に。
実家からだった。
「母さん? どうしたの?」
「あ、圭? よかった」
「ん? 何かあった?」
「いいえ、こっちは大丈夫よ。それよりあんたこそ、何かあったんじゃないの?」
「え? なんで?」
僕はまだ寝起きだけど、母さん達は多分早朝から畑仕事をしていただろうから、やっと一息ついたくらいの時間かな?
そんな大事な休憩時間に電話してくるなんて、何かあったのかと思ったけど、何故か僕の方を心配してかけてくれたみたいだ。
「手紙、いつもと違ったから……何かあったのかと心配したのよ」
手紙? 多分この間の手紙の事だろう。
普通にいつも通り書いたけどな?
「手紙が何かいつもと違った?」
「んー? そうね……どこが違ったのかとかは言いにくいんだけど……まぁ、いいわ。あんたに何もないなら。多分私の気のせいね」
気のせい……で片付けちゃダメだ!
「まって、母さん!」
「えっ? 急にどうしたの?」
「多分それ、気のせいじゃないから……」
「は? やっぱり何かあったの?」
「いや、それが分からないから……」
「圭? 大丈夫?」
「あ、うん。ごめん……大丈夫なんだけど……」
「そう?」
母さんを変に心配させてしまった……
でも僕はちゃんと、この違和感の正体を知らなければいけない。
そんな気がする。
「母さん。今僕は、凄く大切なことを忘れてしまってるみたいなんだ……」
「おかしな事を言うのね? 大切なことなのに忘れていて、でも忘れたという事は覚えてるの?」
「いや、覚えていないんだよ……」
本当は大切な事を忘れているのかもよく分からない……
でも、それを覚えてないことがおかしいって思うから。
「圭……」
「あ、別に大丈夫だよ。おかしくなったとかじゃなくて……」
「ふふっ、分かってるわよ。それくらい、電話でもわかるわ。私はあんたの母親なんだから」
「あ、ありがとう」
自分でも言ってることが無茶苦茶だって分かってるから、僕がおかしくなったと思われても仕方ないと思ったけど、母さんは変な心配もしないで、ちゃんと話を聞いてくれてる。
なんだろう……
何か、ちょっと恥ずかしいな……
「それで? どう悩んでるの? いえ、悩んでいないから悩みたいのね?」
「うん。だから母さんが感じた違和感を、ちゃんと教えてほしい」
夢の人にも言われたんだ。
感じた違和感はちゃんと考えないといけない。
「そう言われてもね……何か元気が無いと言うか……」
「僕、いつもはそんなに元気な手紙送ってた?」
「いえ、文面はいつも通りなんだけど……手紙の雰囲気? とでも言うのかしら? 何か楽しそうじゃないのよ」
「いつもは楽しそうな手紙だったの?」
「そうね……」
楽しそう、か……
つまり僕は、その楽しい何かを忘れてるって事なのか?
「ねぇ、圭」
「何?」
「そもそも、なんで急に私達に手紙書いてくれたの?」
「えっ、それは……電話だと母さん達忙しくて、邪魔になると思ったし……」
「そうじゃなくて……それは最初にくれた手紙に書いてあったわ。言えてなかった日頃のお礼を言いたかったのよね?」
「うん」
「そうじゃなくて、なんで急に言おうと思ったのかって事よ」
「思ってるだけじゃ伝わらないって……ちゃんと言葉にしないとダメだって……言葉の力は偉大だから……?」
そう思ったんだよな……?
でもなんで急にそんなこと思ったんだ?
「圭、それは誰かに言われたの?」
「えっと……分からない……」
「それ、なんじゃない? 圭が悩まないといけない事」
「そうかもしれない……いや、多分そうだ……」
そうだ、誰かに言われたんだ。
僕がずっと母さん達に甘えて、なんの連絡もしないでいたのをダメだって、誰かが言ってくれたんだ。
「それに圭からの手紙、最初だけ便箋が違ったわ。桜の柄の可愛い便箋だった。圭が選んだの?」
「桜の柄の便箋……?」
僕には選んだ覚えがない。
でも桜の柄と言われただけで、どんな便箋だったかすぐに思い出せた。
選んで買ってきた覚えはないけど、使った覚えはある。
桜……桜か……たしか桜みたいな……みたいな何だ?
「圭?」
「あ、ごめん……なんか今思い出せそうだったんだけど……」
「そう。それなら、ちゃんと悩んで、ちゃんと答えを見つけなさいね。私も父さんも珠鈴も、皆応援してるから。頑張って!」
「うん。ありがとう母さん」
母さんとの電話をきって、少し考える。
僕に、思ってるだけじゃ伝わらない、ちゃんと言葉にしないとダメだって事を教えてくれた人がいる。
僕が忘れてしまっている大切な事は"人"なのかな?
でも普通、人を忘れるかな?
それも、そんな大切な事を言ってくれた恩人を忘れるなんて……
もともとの知り合いとかなら忘れないはずだし……
名前も知らない人だから忘れた?
たまたま聞いてただけで、僕が言われた訳じゃないとか?
それこそテレビとかで言ってたのを聞いていただけかもしれないな……
何かそんな気がしてきてしまった。
いや、そうやって自分に都合よく、悩まなくて済むように解決させるのはよくない。
それに、それじゃあ桜の便箋の方は謎のままだ。
最初だけ違ったって事はきっと、最初のは書くように言ってくれた人がくれた便箋だったんだ。
テレビに感化されて書いたとかなら、自分で買ってきた便箋を使うはずだ。
でもそうなると結局最初の疑問に戻ってしまう……
僕が忘れているのは人かもしれない、でも恩人を忘れる事なんてあるのか……
最初だけ違う便箋……こんだけ考えて分からないって事は、もらったとかじゃなくて、たまたまあっただけとか?
なんかの雑誌の付録とかのをとってあっただけとか……
それならテレビの意見に感化されて、手紙を書こうと思った時に、たまたまあった便箋を使ったって事で説明がつく……
あ、また都合よく、悩まなくてすむように考えていた。
考えすぎて気が付くと、無理やりこじつけて解決させようとしてる自分がいる。
でもそんなのはダメだ。
母さん達にも応援してもらったし、顔も思い出せない夢の人も応援してくれてる。
ちゃんと悩んで、ちゃんと答えを見つけよう。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




