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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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1匹の勝利

圭君視点です。

 僕を縛っているロープはすごく固く結ばれていて、身動きがとれない。

 それに隣で捕まってる刑事さんも一緒に逃げないといけない。

 仮に2人分のロープが取れたとしても、僕はそんなに早くは走れないし、この刑事さんだって怪我をしているんだから、動くのも辛いだろう。

 何より、ずっと石黒さんと石黒さんの部下の人がこっちを見ているので、逃げれそうにもない。


「逃げれない事、ご理解いただけました? 貴方は逃げられませんし、呼ぼうが呼ぶまいがあの女は来るしかないんですから。もう時間の無駄ですよね? あの女を呼んで下さい」


 また最初に戻った。

 僕にハルさんは呼べないって、何度言えば分かってもらえるのか……

 まぁ、もし呼ぶ方法があったとしても、絶対呼ばないけど。


「だいたいよぉ、石黒。あの姉ちゃんが来たら殺すんだろ? そうしたらもう、お前が警察じゃねぇ事を知っちまった俺達も殺られる事は間違いねぇ。なら呼ばねぇ方が長く生きれるってもんだろ? 呼ぶわけねぇよ」


 僕が沈黙していると、石黒さんに向かって隣の刑事さんが、少し笑いながらそう言った。


「私はあの女さえ居なくなればいいので、この件が解決すれば警察にいる必要性はなくなります。ですから瑞樹さんも熊さんも無事にお返しする予定だったんですがね」

「お、優しいじゃねぇか。俺を助けてくれんのかい?」

「ええ、もちろんですよ。熊さんにはお世話になりましたからね。ですから、熊さんも協力して下さいよ。あの女が来るように……」


 冗談半分のように笑いながら喋っていた刑事さんは、急に雰囲気が変わって、


「悪いがそいつはできねぇな。前も言ったが俺達の仕事はあの姉ちゃんを捕まえることじゃねぇ、保護する事だ。人々の安全を守るのが俺達警察だろ。こんな危ない場所に保護対象を呼ぶ警察がどこにいるってんだ?」


と、諭すような、それでも静かに怒っているような、そんな重い声で石黒さんに言った。

 でも石黒さんは全く気にする様子もなく、


「ま、そう言うと思ってました。なので瑞樹さん、こういうのはどうでしょう?」


と、そう言いながら拳銃を刑事さんに向けた。


「貴方があの女を呼ばないなら、この熊さんが死ぬことになります。もう待つのも飽きたものですからね」

「なっ!? そ、そんなの……」

「まぁ、兄ちゃん。気にすんな。俺は兄ちゃんが本当に連絡できないって分かってからな。ここで死んだとしても兄ちゃんを恨んだりしねぇよ。ただなー、娘の花嫁姿が見たかったなー」

「それは残念でしたね」

「全くだな」

「石黒さんっ! やめて下さいっ!」

「ではどうします? 連絡しますか? 無関係な熊さんを見殺しにしますか?」


 刑事さんに拳銃を向けて今にも撃ちそうな石黒さんと、また冗談半分のように笑いながら石黒さんと会話をする刑事さん。

 僕がどうしたらいいのか、訳が分からなくなっていた時、


「うわっ!」

「うわぁぁぁー!」


という悲鳴が外から聞こえた。


「おい、なんだ?」

「なんか変なのが入ってきて……」

「き、キツネです! 急にキツネが入ってきて暴れてます!」

「キツネ? なるほどな! すぐに殺せ。そのキツネに何かついてればそこから調べられる」

「分かりました!」


 急に外の方が騒がしくなったと思ったら、どうもキツネが入ってきたらしい……

 もしかして、そのキツネってハルさん……?

 入って来ちゃって、大丈夫なのか?


「まさか動物だけ送り込んで来るとは思いませんでしたが、これではっきりしましたね。あの女は近くで見聞きしているのでしょう。とりあえずキツネを殺してから話し合うとしましょうか」


ドンッ バンッ ドドンッ


 銃声が沢山聞こえる……

 石黒さんの部下が何人いるのかなんて分からないけど、全員が拳銃を持っていたりしたら……


「やめてくださいっ! キツネが死んじゃうじゃないですか!」

「貴方を助ける為に動物を差し向けたんですね。もう貴方とあの女の繋がりは明白です。どうですか? あの女への連絡先さえ教えて下されば、あのキツネも殺しませんよ」

「僕は本当に知らないんです!」


ドンッ ドンドンッ


「そうですか。キツネは死んでもいいということですか」

「そうじゃないです!」


 鳴り止まない銃声……

 ハルさんと最初に出会った時、足に怪我をしていたのを思い出す……

 今の僕にはハルさんの無事を祈ることしかできない……


「うっ!」

「ぐぇっ!」


 短い悲鳴みたいなのが遠くで聞こえて、銃声が鳴り止んできた。

 向こうの様子が気になる……

 どうなってるんだろう……


「あっ、待てっ!」


 石黒さんの部下の人と一緒に、キツネが僕達の捕まっている倉庫に入ってきた。

 見たところ怪我はしていないみたいだ。


「す、すみません兄貴! そのキツネ、滅茶苦茶すばしっこくて……」

「ったく、そんぐらいさっさと殺せ」


 石黒さんはそう言って、入ってきたキツネに拳銃を向けて撃った。


ドンッ ドンッ


 キツネは走りながら飛んだりして、華麗に弾を避けながら僕達の方に近付いて来る。


「確かにすばしっこいな! よく教育されてるじゃないですか」


ドンッ ドンッ


 何発も撃っているけど、キツネには1発も当たっていない。

 石黒さんはだんだんと苛立ってきたようで、叫び出した。


「くそっ! おいっ! どうせどっかで聞いてるんだろ? 人質を殺されたくなかったら、このキツネを止めて、お前が直接出てこいっ!」


 キツネに向かって言う感じではなく、この倉庫に響き渡るように叫んでる。

 石黒さんは動物を利用している人がいると思っているからだろう。


「おいっ! もう人質、殺すぞっ!」


 石黒さんがそう言って、僕の方に拳銃を向けようとした時、キツネはジャンプをしながら石黒さんの背後に回り、くるっと体を捻りながら、後頭部に勢いよく尻尾を当てた。


ドガッ


「うっ」


  石黒さんに当たったキツネの尻尾から、少しバチバチと稲妻が走ったように見えてすぐ、石黒さんはそのまま倒れた。


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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