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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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嘘偽りない真実

圭君視点です。

 石黒さんに今までの経緯を話された。

 確かにそう言われると、僕が動物を使って色んな情報を得ている女性と仲間だと思われても仕方ない。

 でも僕は本当に動物を使()()()情報を得ている女性なんて知らない。

 僕が知っているのは、動物に()()()情報を得ている人だ。

 屁理屈かも知れないけど、嘘は言ってない。

 ハルさんとも約束したし、こういう状況でも嘘をつきたくはない。


「貴方があの女の仲間だと分かって、貴方の行動を見ていたら、あの女の行動時間も分かってきたんですよ」

「え?」

「夜中や、明け方の取引は通報される事が多かった。ですが、日が出てきてからお昼頃まで……具体的にいうと、朝6時頃から11時頃までは取引しても通報されない。そしてこの時間は、貴方の睡眠時間でもありますよね?」


 僕の生活が知られ過ぎていて怖いな……

 というかそういう洞察力とか、もっと別の事に使えばいいのに……

 それこそ本当に警察になってたら、相当優秀な刑事さんになれてたんじゃないか?


「ですので、最近はその時間帯で取引をしていたんです。平和になってきたとか思ってたんじゃありませんか? 通報も少なかったですしね。 とはいえ、この時間帯は私達も動きづらいのですがね……」


 人も多いだろうし、目立つような昼に取引をしていたとは……

 大胆だな……

 そんな事を僕に話してくるって事は、やっぱり僕を家に帰らせてくれる気はないんだろう。


「貴方の部屋も調べさせていただきましたが、あの女の物と思われる物も特にありませんでしたし」

「当たり前じゃないですか。時間もたまたまその人と被ってただけですよ。それに僕、今日から生活時間を変える予定でしたし……」

「知ってますよ。バイトを辞めて、大学へ通うためですね。そうなればあの女も何か行動を変えるかもしれないと楽しみにしていたんですがね、それも無理になってしまいましたし……」

「無理になった? 何でですか?」


 そもそもこれだけ用意周到に調べていたのに、なんで急に僕を誘拐したりしたんだろう?

 僕は全く石黒さんの事を怪しんでいなかったんだから、無理に今日連れてくる必要なんてなかったはずだ。


「あぁ、そうですね。瑞樹さんはまだ知りませんよね」

「何をですか?」

「実は先程、私とこの部下が共にいるところを猫に見られてしまったんですよ。あの猫にはカメラか何かつけてあるんでしょう? だからその事実を貴方が知る前に、貴方を連れてきたんですよ。私達が不利になる前にね」

「ただの普通の猫だったんじゃないんですか?」

「明らかに私達を翻弄させる動きをして、逃げていきましたからね。よく教育されているのでしょうね」


 という事は、その猫はハルさんか……

 それなら、ハルさんは石黒さんが犯罪組織の人だと気づいてるはず。

 もう少し待てば必ず助けが来てくれるはずだ。


「小鳥で連絡をとっているのが仇となりましたね。だから貴方はすぐに私達が敵だと気付けなかった」

「僕は、そんなカメラがついている猫なんて知りませんし、小鳥で女性と連絡を取り合ったりもしていませんよ」

「では小鳥の事はどう説明してくれるんですか? 明らかに招き入れてましたよね?」

「確かに小鳥は部屋によく来てくれてましたよ。でもあの小鳥はそんな連絡をとる為に来てたとかじゃないですよ。ご飯を食べに来てくれてただけです」

「何ですかその言い訳は? そんな事を信じろと?」

「信じるもなにも、それが事実ですから。最初にご飯を作ってあげたら気に入ってくれたみたいで」


 小鳥というか、ハルさんがだけど。

 でも嘘は言ってない。


「最初は慣れてなかったからか、遠慮がちでなかなか食べてくれなかったんですけど……」

「そんな事は聞いてませんよ」


 石黒さんの少し大きな声に打ち切られた。

 折角小鳥の話に花を咲かそうと思ったのに……


「さぁ、もういいでしょう。これだけ既に知られていたら隠す必要もないですよね? そろそろあの女に連絡をしてもらいましょうか」

「ですから、何度も言ってますけど僕は連絡なんて出来ないんですよ」

「まさか本当に……」


 やっと分かってくれたのか? と思ったのに、


「本当に、小鳥以外に連絡手段がないんですか? 流石にそれはあり得ませんよね?」


と言われた……

 全然分かってもらえてなかった……


「確かに石黒さんの話を聞く限りだと、僕がその女性と仲間に思えるのも分かります。でも猫が出ていった方法は僕も知りませんし、小鳥もご飯を食べに来てくれていたんです。通報の時間だって、僕が夜勤バイトをしていたから被ってただけですよ」

「どこまでも言うつもりがないんですね。素晴らしい精神力ですよ。でもそもそも本当に無関係の人ならば、この状況でここまで冷静ではいられないのではありませんか?」

「僕、結構動揺してますよ?」


 全くの無関係じゃないから、そこまで動揺してないっていうのもあるんだろうけど、相変わらず感情っていうのは伝わりにくい。

 僕はただでさえそういうのが苦手だから、余計に冷静に見えるのかな……

 そういえば前にハルさんにも、"物事を受け入れるのが早すぎる"って言われたな……

 こういうところなんだろうな……


「はぁ、全く強情ですね。本当に私は後悔してますよ、あの祭りの日の事」

「祭り?」

「お忘れですか? 会いましたよね、貴方とあの女と」


 石黒さんはお祭りの時の話をしだした。

 確かにあの日、石黒さんと会った。

 あの時も僕達は見られてたんだな……

 だから余計に、石黒さんは僕の発言を信じてくれないんだろう。


「あの時はまだ貴方があの女の仲間だという確信もありませんでしたので、あれはただの友人なのだとスルーしてしまいましたが、あの時捕まえておけばよかった。あの時の女があの女でしょう?」

「あの人は友人ですよ。こっちに来てからやっとできた、初めての友人です」

「あくまでもあの女とは別人だと?」

「僕の友人は、そんな動物を使って情報を得たりしている人じゃありません」


 あの女と別人かと聞かれてしまうと、石黒さんの言うあの女とは同一人物なので、違うとは言えないけど、この言い方なら嘘にはならない。

 言葉に気をつけて話さないといけないな……


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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