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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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経緯

圭君視点です。

 ハルさんの連絡先を教えるように言ってくる石黒さん。

 僕は連絡先なんて知らないし、仮に知っていたとしても教える気なんてない。

 ここが何処だかも、今が何時なのかも全く分からないけど、時間さえ経てば必ず警察が助けに来てくれる筈だ。

 なんとかそれまで時間を稼げるといいんだけど……


「そもそも、石黒さんが何で僕とその女性が仲間だと思ったのかの方が僕には謎です。あの時話した通りですよ。あの日初めて会った知らない女の人に携帯を貸しただけです。その人の素性とか、僕は何も知りません」

「それでしたら、私が今まで調べてきた全てをお話しましょうか?」

「調べてきた全て?」


 石黒さんは近くにあった椅子に座ると、僕の方をじっと見つめながら話してきた。


「瑞樹さん、貴方を疑い始めたのはあの女が貴方の家を訪れた日ですよ。それまでは本当にただ、たまたま携帯を貸しただけの少年だと思ってましたよ」


 ハルさんがお礼のクッキーを渡しに来てくれた日の事だろう。

 あの日、動揺のあまりハルさんを抱きしめちゃったんだよな……

 でもそれは石黒さん達には見えていなかったはずだし、僕が怪しまれる要素はないはずだ。


「その通りですよ。僕は本当に、たまたま携帯を貸しただけです」

「あの日、貴方の家に猫がいませんでした」

「え、猫?」


 それはいなくて当然だろう。

 その猫がハルさんなんだから。

 でも石黒さんはハルさんが猫だなんて知らないはず……

 猫がいなかったからって、なんだっていうんだ?


「貴方、猫を拾ったんですよね? 怪我をした猫を拾ったって、コンビニで店長と話していたじゃないですか」

「はい、それはそうですね。猫を拾いましたよ」

「私の部下の1人が、あの通報があった日に猫を撃っているんですよ。ですが逃げられましてね、探していたんです。おそらく貴方が拾った猫です」


 猫を撃っている……

 ハルさんのあの怪我……


「それで瑞樹さん。その猫はどうしました?」

「それは前も言ったと思いますけど、あの女性がお礼に来る3日ほど前に出ていったんです」

「どこから?」

「多分、ベランダからです。鍵が空いていたので……」

「それですよ。私の部下はずっと貴方の家を見張っていました。その間に貴方の家のベランダが開いた事はありません。まぁ、ほんの少しとかなら見落としたかもしれませんが、猫が通れる程に大きな隙間が開いていたなら、流石に見えるはずです。それも開いていたというのであれば、ずっと開きっぱなしのはずです。猫が自分でベランダの戸を閉めていくわけないんですから」


 そういう事か……それは確かにそうだ。

 ベランダの戸が開きっぱなしになっていないのを知っていた石黒さんにとっては、猫がベランダから出ていったという僕の証言は嘘になるんだ。

 だから僕は疑われたのか……

 でも僕が言ってるのも事実なんだけどな。


「つまりベランダから猫なんて出ていっていないんですよ。貴方は嘘をついた事になります。とはいえ、それだけで決めることはできませんでしたがね」

「僕は嘘なんて言っていません。帰ってきたらあの猫がいなくなってたんです。それに確かにベランダの戸は閉まってましたけど、鍵が開いてたんです。他に隙間とかありませんし、ベランダ以外考えられなかったからそう言っただけで、猫が本当はどうやって出ていったのかなんて知りません」


 多分、小鳥か何かに化けて、嘴でベランダの戸に隙間を作って出て、その戸を閉めて飛んでいったとかだろう。

 大体の予想は出来るけど、どう出ていったのかは本当に知らない。


「なるほど、まぁいいでしょう。では次は貴方の疑わしい行動の話をしましょうか」

「疑わしい行動?」

「警察が貴方の家の張り込みを止めてからも、私の部下はずっと貴方の家を見張っていたんですよ。そして貴方はあの日から、起きたらベランダの戸を開け、網戸にするという日課が増えましたね」

「そうですか?」


 確かにあの日から、ハルさんはベランダから来るようになったからな。

 もう今となっては、起きたら戸を開けるのが当たり前の習慣みたいになってるから、忘れてたけど。


「最初は、猫を逃がさないために最近やっていなかった、元々の日課なのかとも思いましたよ。ですが、貴方にはベランダをすぐに閉める日と、なかなか閉めない日がありました」


 それはハルさんが来る時間がバラバラだからだ。

 大体同じくらいの時間には来てくれるけど、日によっては1時間程度の誤差はあった。

 通報したり、迷子の相手をしたりしていた日は来るのも遅くて当然だ。

 僕からしたら誤差の範囲だけど、ずっと見張っていたという石黒さんの部下にとってはおかしかったんだろう。


「そしてこれには何の法則性もありません。雨だから早く閉める訳でもないし、風が強くてもずっと開きっぱなしの日も、天気がいいのにすぐに閉める日もありました。そしてどの日も戸を閉めた後には必ずカーテンをする。つまり部屋に日光を入れたい訳でもない」


 ハルさんが来てくれた後は、もう開けておく必要がない。

 それに外から見えるかもしれないのを懸念して、カーテンも閉めていた。

 確かに昼からカーテンをずっとしているのは、少し怪しかったかもしれない。


「そして夕方近くになるとカーテンを開け、ベランダの戸を開けて、すぐに閉めるそうですね」


 それはハルさんが帰るからだ。


「その理解できない行動を見張り続けてさせていたら、部下がある事に気付いたんですよ。貴方の部屋から小鳥が飛んでいくという事に」


 すごいな、部下の人。

 そんなにずっと僕の部屋を見張っていたんだな。

 流石にちょっと気持ち悪い……


「それに気がついてからは簡単でした。起きたときの行動は、小鳥を招き入れる為の行動で、夕方のはその小鳥を飛び立たせていたのでしょう。つまりその小鳥であの女に連絡していたという事ですね」

「…………」

「おや、黙秘ですか。ですがそれでは肯定と同じですよ」


 そんな事を言われても……

 石黒さんのこの推理は間違ってるのに、状況的に否定も出来ない。

 どうしたらいいんだろう……?


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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