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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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思い違い

圭君視点です。

「うっ……」


 なんだろう……

 頭がくらくらするし、体も痛い……


「おや、お目覚めですか?」


 ぼやけていた視界がだんだんとはっきりしてきて、声のした方を見ると石黒さんがいた。

 動こうとしたけど動けない……

 僕の体はロープで縛られていて、パイプのようなものに繋がれている。

 手にもロープが縛ってあって、動かせない。


 横にはもう1人、僕と同じように縛られている人がいた。

 着ているスーツは汚れてしまっていて、顔や手を怪我している……

 まだ気絶してるみたいだけど、この人は確か、前に石黒さんと一緒に家に来た、年上の刑事さんだ。

 何でこの人も捕まってるんだろう?

 刑事さん同士、仲間なんじゃないのか?


 とりあえず、辺りを見渡してみる。

 何か広い倉庫のような場所だけど、薄暗くてよく分からない。

 そもそも、何で僕はこんなところに連れてこられたんだ?


「あの、ここはどこですか? 僕は今、どういう状況なんでしょうか?」

「私に捕まっている状況ですよ」


 石黒さんはいつもと変わらない様子で、普通に話してくる。

 明らかに普通じゃない状況で、普通に喋ってるので少し怖い。


「あの、何で僕は捕まってるんですか? それにこの人、石黒さんと一緒にいた刑事さんですよね?」

「私が警察として貴方を捕まえたのなら、手にはロープではなく手錠で、場所も警察署だとは思いませんか?」

「それは思いますけど……状況が全くもって理解できないので、説明してもらえませんか?」


 警察として捕まえた訳じゃないというのなら、何として僕を捕まえたんだろう?

 これじゃまるで誘拐だし、僕にはそんな事をされる理由は思い当たらない。

 僕が説明を要求すると、石黒さんは僕達の方に近づいてきて、話し始めた。


「私達はずっとあの女を探していたんですよ」

「あの女?」

「警察に匿名で情報の連絡をしてくる女ですよ。あの女によって潰された取引がどれだけあると思いますか?」


 おそらくハルさんの事だろう。

 僕がハルさんが警察に通報をしていたのを見たのは、初めて会った時の1回だけだ。

 でも今までも沢山通報をしているはず。


 そのハルさんを探していた、というのは分かるけど、潰された取引があるっていう事は、石黒さんは取引をしてる側の人って事か?

 でも石黒さんは警察のはず……


「石黒さんは刑事さんではないんですね」

「いえ、刑事ですよ。本業で何をしていようと、刑事であることにはかわりないですから」


 僕をバカにしたような感じで、笑いながら石黒さんは喋ってくる。

 プライベートにまでグイグイくるから苦手だったけど、僕の事を心配してくれてるいい人だと思っていたのに……


「何でですか? 皆を守る為に警察になったんじゃないんですか?」

「えぇ、違いますよ。私達が取引をしようとする度に、警察に邪魔されていたものでね。最初の頃は部下の中にでも、警察が紛れ込んでいるのかと思い、調べたりもしたんですよ。でもそれよりは自分が警察になった方が早いと思いましてね。ですから私が警察になったのは、警察がどうやって我々の取引の邪魔をしているのかを知る為です」


 石黒さんはハルさんを捕まえるために警察になった人で、元々から犯罪組織の一員だったという事か……


「警察になってから分かったのは、匿名で電話をしてくる謎の女の存在でした。そして部下達から得た情報は、取引の計画をしている時に、時々猫などの小動物を見かけるとの事でした。それが分かったのは私が警察になってから数年経ってからでしたけどね」

「その匿名で電話をしてくる女と、時々見かける小動物には何か関係があるんですか?」

「おやおや、知らないふりですか? まぁいいでしょう。小動物を見かけた時は、必ず警察に取引が邪魔されるんですよ。つまりその小動物にカメラか盗聴器のような物がつけられており、その女はそれを利用して警察に情報を流しているという事ですよ」


 石黒さんのいう女がハルさんだとすると、その目撃されている小動物もハルさんだろう。

 ただ人が動物になれるなんて夢物語、誰も想像しない。

 だから、小動物にカメラとかがつけられてるっていう発想になるのも分かる。

 でも、僕との繋がりはないはずだ。


「それで、何で僕が捕まってるんですか? 今の話と何か関係ありますか?」

「貴方があの女の仲間だからですよ」

「僕は何も知りませんよ」

「本当に隠すのがお上手ですね」

「隠すも何も、本当に知りませんから」


 ハルさんが何か大変そうな仕事をしている事は知っていたけど、全然詳しく教えてもらってない。

 落ち着いたら話すって言ってくれてたし、もう少し後だったら何か知っていたかもしれないけど、今は本当に何も知らない。

 まぁ、知ってても話さないけど。


「折角携帯も調べたんですがね、まさか入ってる連絡先が実家とコンビニ店長だけとは……あの女への連絡先はいれてないんですね。というか瑞樹さん、友人とかいないんですね」


 僕の携帯を勝手に見ながら石黒さんは言う。


「動画が添付された連絡があったので確認しましたが、ただの花火大会のようですし……連絡や履歴はこまめに消す派なんですね」

「そんな事はないです。そもそも石黒さんのいう連絡なんて物が存在してないだけです」

「あの女への電話番号、教えてもらいましょうか」

「僕はそんなの知らないですよ」


 こっちが教えて欲しいくらいだ。

 今ハルさんと連絡をとる方法なんて、口約束しかない。

 だから、来てくれるか不安になったりしてるんだから。


「では、電話ではない方法で連絡をとっていたんですね。まぁ、大方の予想はついていますが、その方法を教えては下さいませんか?」

「僕には連絡なんて出来ません。僕はそんな動物を使って情報を得ている女性なんて知りませんから」


 動物に()()()情報を得ている女性なら知ってるけど。


「知らないと言っていれば、解放してもらえるとでも思ってるんですか?」

「本当に知りませんので、他に言いようがありません」


 今が何時なのかは時計がなくて分からないけど、多分夜中だ。

 この時間ならハルさんは町の見回りとかしてくれているだろうし、もしかしたらこの状況に気がついて、警察に連絡してくれるかもしれない。

 仮に気がつかなくても、明日の昼には僕の家に来てくれるんだから、そこで僕が居なかったら探してくれるだろう。

 だから絶対に助けは来る。


 問題はそれまで話を繋げられるかだな……


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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