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桜色のネコ  作者: 猫人鳥
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野菜カレー

圭君視点です。

 正午、いつものアラーム音で目が覚める。

 寝た時間も普段とそんなに変わらない時間だったので、体も特になんともなく、いつも通りだ。

 ベットから降りて床を見ると、ブランケットにくるまれてすやすやと眠る可愛い黒猫。

 この様子だけだと、この猫が人になったなんていうのも、夢だったような気がしてくる。


 一応、携帯の確認。

 僕にはかける必要のない警察への通話履歴。

 やっぱり夢ではないようだ。

 もう一度寝ている黒猫(ハルさん)を確認。

 特に寝苦しそうということもないし、大丈夫だろう。


 ただ気になったのは、足の怪我がなくなっていた事だ。

 さっきは僕が寝てからハルさんが猫になったので、ハルさんが猫になるところは見ていない。

 ハルさんの事で気になる事は沢山あるけど、どこまで聞いていいのかも分からない。


 とりあえず、ハルさんが起きた時の為にご飯を作っておこう。

 さっきはハルさんの好きな物を聞かなかったので、何が好きなのかも分からないな。

 でもあの野菜スープは美味しいと言ってくれたし、野菜は嫌いじゃないだろう。


 今ある材料で作れるもの……カレーでいいか。

 あ、でも猫ってカレーを食べても大丈夫なんだろうか?

 ハルさんは人だけど、猫でもあるんだし……

 そもそもハルさんは、"猫になれる人"なのか、"人になれる猫"なのか、どっちなんだろうか?


「にゃあ~?」


 ん? 部屋の方から鳴き声?

 ハルさんが起きたみたいだ。

 怪我がなくなっていたとはいえ、歩くのはまだ危ないだろうからな。

 様子を見に部屋に戻ろう。


「おはようございます、ハルさん」

「にゃ」

「ハルさんって、カレーは食べられますか?」

「にゃにゃあ~」


 ……何が言いたいのか分からない。

 猫の時は人の言葉は話せないんだろうか?


 僕が首を傾げていると、ハルさんは前足()をバタバタと動かしながら、自分の目の辺りを何回も擦っていた。

 何かを伝えたいんだろうけど、全然分からない……


 目の辺りに何かがあるのかと思い、ハルさんの頭を撫でてみたけど、


「にゃ~」


と、可愛く首を振られた。

 その後、片足(片手)を僕の方に出してから、また目の辺りを擦っていて……僕の目を塞げって言いたいのかな?

 僕が自分の目を手で覆うと、一瞬光った感じがしてハルさんは人に戻っていた。


「ごめんなさい! "言葉を話せる猫"に化けておけば良かったんですが、"普通の猫"に化けちゃったので、言葉が話せなくって」


 よく分からないけれど言葉を話せる猫にもなれるみたいだ。

 という事は、ハルさんは"猫になれる人"なんだろう。


「人に変わる時は、僕は見ていない方がいいんですか?」

「一瞬とはいえ、結構眩しくなってしまいますからね。圭君の目にあまり良くないかと思いまして」

「僕を気遣って下さったんですね。ありがとうございます」


 頑張って目を擦っていたのは、僕の目を考えての事だったみたいだ。

 何にも分からない人だけど、優しいのはよく分かった。


「あぁそういえば、ハルさんの好きな食べ物は何ですか?」

「え、好きな食べ物ですか? ん~野菜は好きですよ、キャベツとか」

「今からお昼ご飯にカレーを作ろうと思ったんですが、食べられますか?」

「カレーは好きですが……」


 カレーは食べられるみたいで良かった。

 好きな食べ物を聞いておいてなんだけど、今はそんなに食材があるわけでもないので、あまり凝った物は作れないから。


「キャベツが好きなら、サラダも用意しますね」

「そんなっ、いいですよ! カレーも無くて大丈夫です。本当に圭君のお世話になりすぎていて申し訳ないですし、むしろ私に何か手伝える事ありますか?」


 人に戻ったハルさんの足は僕が手当てをしたままで、包帯に少し血が滲んでいる。

 猫の時に怪我が消えていたのは、さっきの話から考えて、"怪我をしていない猫"になっていたからなんだろう。

 いきなり知らない家で、ご飯をもらうだけなのは居心地が悪いんだとは思うけど、動くのは良くないし……


「ハルさんは怪我を治すことを優先してくれたらいいですよ。それに僕、実家が農家なんです」

「農家さん、ですか?」

「はい。それでよく野菜を送ってくれるんですが、一人では食べきれなくて……だから一緒に食べて頂けるのは、僕にとってもありがたい事なんです」


 それを理由に気にしなくていいというのは無理があるだろうけど、野菜が有り余っているのは事実だ。

 これで少しでもハルさんの気が楽になるといいけど。


「圭君は本当に優しいですね、ありがとうございます」

「じゃあ僕はカレーを作ってくるので、ゆっくりしていて下さいね。テレビとかも好きに見ていてもらって大丈夫ですので」


 何も出来ないのは暇だろうし、いくら僕がいいと言っていようと、人の家のテレビは勝手に点け辛いかと思って、僕はテレビを点けてからキッチンに向かった。

 テレビは丁度、お昼ニュースをやっているところだ。


 ハルさんは野菜が好きらしいし、野菜多めでカレーを作ろう。

 あと、サラダも適当に。

 いつも母さん達が沢山野菜を送ってくれていて良かったな。


 少しハルさんの様子を確認すると、僕が点けていったテレビを見ているのが見えた。

 カレーを作っている間もずっとお昼のニュースの音が聞こえていたし、ハルさんはニュースに興味があるんだろうな。

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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