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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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時間のズレ

ハルさん視点です。

 圭君と神様と一緒に紅葉を見ていたら、


「ハルちゃーん! 久しぶりー。会いたかったよぉぉーー!」


と、声が聞こえました。

 この声は神ちゃんですね!

 声の聞こえた方を向こうとしたら、上空から勢いよくやって来た神ちゃんのタックルで、私は乗っていた枝から落ちていました。

 もちろん神ちゃんが地面に当たる前に止めてくれているので、落ちたと言っても怪我などはありません。


「わぁー、本当にハルちゃんだー」

「か、神ちゃん? お、落ち着いて下さい。お久しぶりですね。お変わりないようで安心しました」


 神ちゃんは私に抱きついた状態で、私との再会を喜んでくれています。

 とてもありがたいのですが、これでは身動きがとれません。


「ほーんと、いつもこっちに来てくれないから私から来ちゃった」

「抜けてきて大丈夫なんですか?」

「大丈夫、ちゃんと代理お願いしてきたから。さぁハルちゃん! お話しましょう」

「はい」


 やっと離してくれた神ちゃんは、創造の力を使ってテーブルとイスを用意してくれました。

 私は持ってきたフルーツジュースを2人分、コップに準備します。

 これで素敵な景色を見ながらお話ができますね。


 急に神ちゃんがこっちに来たので、向こうは大丈夫なのかと少し心配もしましたが、ちゃんと代理の方がいらっしゃるようで安心しました。

 でも代理をお願いできたって事は、今日神ちゃんはここに来る予定だったんですよね。

 流石に当日に代理は頼めませんからね。


「今日は元々来る予定だったんですね」

「そうだよ。爺が、今日はハルちゃんを誘って紅葉狩りって自慢してきたからね。それにしても本当に久しぶりだねー。何年ぶり位だろう?」

「うーんと、前にお会いしたのはあっちででしたよね? ざっと10年ぶり位でしょうか?」


 神ちゃんと最後に会ったのは、確かあの会議の時でした。

 あれが10年位前だったので、神ちゃんと会うのは本当に久しぶりです。


「うぇー、ハルちゃんからしたらもうそんなに経ってるんだねー。私は最近あっちには行ってないから体感が全然違うね。私からすると1年ぶり位なんだけどなー。てか、それでも十分に久しぶりだからねっ!」

「そうですね」


 あっちとこっちだと時間の流れも違いますし、私と神ちゃんの体感が違うのは当然の事です。

 もう慣れた事ですが、お互いに感じている時間にズレがあるというのは微妙な気分になりますね。


「それに、ハルちゃん全然あっちから帰って来ない時もあったでしょ?」

「あぁ、少し前まであっちは騒々しかったので、なかなかこっちにも帰って来られなくて……それで少し時間が経ちすぎましたね」

「あー、知ってる知ってる。爺もハルちゃんがなかなか来ないーって喚いてたよ」

「その関係で時間のズレは生じましたが、これからはそこまでズレる事もなくなると思いますし、もう10年も会わないなんて事はなくなると思いますよ」

「そっか、それなら安心。いつもありがとうね、ハルちゃん」


 お互いに時間のズレはあるものの、神ちゃんは私と会えたことを本当に喜んでくれました。

 神ちゃんは普段、観光地の方に居ますし、私が会いに行っても神ちゃんに会うことはできません。

 こういう代理の方をお願いして来てくれるか、私も神ちゃんもあっちにいる時位しか落ち着いて会えませんし、今日久しぶりに会えたのは本当に嬉しいです!

 神ちゃんを誘ってくれた神様に感謝ですね。


「それにしても、今日は驚いたなー。まさかハルちゃんが人の子と一緒にいるなんて……あっ、私もしかして邪魔しちゃった?」

「いえ? そんな事はないですよ」


 御神木の枝の方を見上げると、圭君と神様はなにかお話し中のようです。

 神ちゃんもそうですが、普通神様達は人前に姿を現しません。

 なのに、神ちゃんも土地神様も平気で来てますし、土地神様とはあんなに仲良くお話してますし、圭君って本当に凄いですよね。

 それこそ、私なんかと一緒にいて下さってますからね……


「あの、神ちゃんはどう思いますか?」

「ん? 何が?」

「その……私と圭君が一緒にいるのを……」

「んー? ハルちゃんが楽しそうだなーって思うよ」

「そうなんです。確かにとても楽しいのですが、もうそろそろ圭君は大学へ通うことになるんですよ。そうなればこれまで通りにお邪魔するのも迷惑になってしまうので……」

「なんで? 時間変えればいいんじゃない」

「それはそうなんですが……圭君はそれでもいいと言ってくれるでしょうか?」

「言うんじゃない?」


 私はそこそこ真剣に悩んでいるのですが、神ちゃんには軽く返されてしまいました。


「でも元々、私が圭君家にお邪魔しているのは大学受験の為の勉強を教える為であって、大学に受かった時点で私は必要ないのではないかと……」

「そんなに勉強教えてたの?」

「いえ、ほぼ教えれていませんでしたね。圭君は教えなくても、ちゃんと知識もありましたし……」


 むしろ私がお菓子作りを教えてもらって、しかもお昼ご飯も御馳走になってただけですね。


「人の子の方から来てほしいって言ってくれてたんでしょ? だったらハルちゃんの事もう必要ないとか絶対言わないよ。そういう事を言う子なの?」

「いえ、圭君は言わないと思います」


 今までだって、特に勉強も教えれてなかった私がお邪魔しても、"今日も来てくれありがとうございます"って言ってくれてた圭君ですからね。


「だったら今後の会う時間変えるだけでいいんじゃない?」

「で、でも……お邪魔する時間を変えてしまうと、今までの流れを壊してしまうのでお互いに時間がズレてしまうと思いますし……」

「なんで? それなら今度はそっちの時間に合わせていけばいいだけじゃん」

「そ、そうなんですが……」

「だいたいハルちゃんと人の子の時間のズレなんて、ちょっとした時間変更ってだけでしょ? 私とハルちゃんみたいな10年と1年みたいなとんでもない差でもないじゃない! 私とのその差を気にしないで普通に接してくれてるハルちゃんが、何をそんなに気にしてるの?」

「それは……確かにそうですね……」


 言われてみれば、確かにそうです。

 私は何をそんなに気にしているんでしょうか?

 時間が多少変わるからって、圭君がもう来ないで欲しいなんて言う訳ないのに……


「じゃあほら、悩んでないで聞いておいでよ。そしたらすぐに解決するよ。送ってあげるから」

「はい。では行ってきます」


 神ちゃんは私の体を浮かせて、圭君と神様のいる枝まで送ってくれました。

 神ちゃんにも背中を押してもらいましたし、圭君と今後の事をちゃんと話そうと思います。


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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