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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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紅葉狩り

圭君視点です。

 土地神様に紅葉狩りに招待してもらったとのことで、ハルさんが一緒に行こうと誘ってくれた。

 今日がその約束の日だ。

 最近はずっと勉強に集中していたし、気分転換にもなって丁度いい。


 いつものお供えだと、直接土地神様に会うことは出来ないから、焼きトウモロコシしか渡せなかったけど、今日は会える。

 前々から、焼きトウモロコシ以外のものも渡したいと思っていたし、今日はコーンスープとトウモロコシのかき揚げも作った。

 焼きトウモロコシももちろん作ったし、今日はトウモロコシパーティーだな。

 丁度実家から野菜が届いたタイミングだったのもあって、思ってたより多く作ってしまった。


 今までハルさんと出かける時は神社の入り口のところで待ち合わせをしていたけど、今回は初めての現地集合だ。

 何で現地集合なのか、理由は一応聞いたけど濁されてしまったので聞けなかった。

 最近そういうことばかりだ。

 聞けてなかったり、僕自信が言いたい事を言えてなかったり……

 あんまりネガティブな事を考えていてもよくないし、折角の楽しい紅葉狩りなので、気持ちも切り換えて行こう。


「よぉ、お出かけかい? 兄ちゃん」


 家を出たところで声をかけられた。

 誰かと思ったら、石黒さんと一緒にいた刑事さんだった。


「えっと……こんにちは。僕に何かご用ですか?」

「あぁ、今日は石黒は出張に行ってるからな、聞くなら丁度いいと思ってな」

「何をですか?」

「アイツ、まだ兄ちゃんを気にしてるみたいだからな、何か迷惑でもかけてねぇかと思ってな」

「え?」


 確かに石黒さんにはよく会うけど……

 まだ僕を気にしてるって……もしかして、ハルさんの事を調べるために僕に会ってたのか?


「あの、それって僕が結構前に会った女性の事で調べられてるって事ですか?」

「いや、俺達警察はもう兄ちゃんがあの姉ちゃんと関係あるなんて思ってねぇんだがよ。石黒は個人的に兄ちゃんを調べてるみたいでな……それに最近の行動も少しおかしいもんだからよ、兄ちゃんに迷惑かけてんじゃねぇかと心配になったんだよ」


 僕、まだ疑われてたんだ……

 だから石黒さんもよく絡んでくるのか……


「石黒さんには時々プライベート的な質問をされるので、若干苦手ではありますが、迷惑って程でもないですよ。刑事さんは人を疑うのも仕事ですもんね。ご心配、ありがとうございます」

「そうか……なら、いいんだ。悪かったな、出掛けるところ邪魔しちまって」

「いえ、大丈夫です」


 刑事さんは帰っていった。

 まさかまだ疑われているとは思ってなかったな……

 ハルさんと出会ったあの時からはもう結構たってるし、石黒さんはよく会うけど、家がこの辺なだけだと思っていた。


 でも今のでハルさんの疑問の1つは解決した。

 今日一緒に行けないって言ってたのや、バイト先で石黒さんが来た話を気にしていたのは、石黒さんを警戒しての事だったんだろう。

 もしかしたらこれからも石黒さんに聞かれたりするかもしれないけど、ハルさんの事は話さない用に気を付けよう。


 そんなに事も考えながら神社の方に向かって行くと、いつものハルさんとの集合場所、神社の入り口の所に到着した。

 入り口の近くで葉っぱが1枚光って消えた。

 そしてその少し奥にあった葉も光ってから消えて、また光ってを繰り返して、点滅する葉っぱになった。

 外は明るいのに、この光は結構目立ってる。

 でも、入り口の所の道を通っていた人達は気にしてないみたいだし、この光る葉は僕にしか見えてないのかな?


 2つ目の点滅する葉の場所へ行くと光は消えて、また少し奥の葉が光って消えた。

 それをどんどん繰り返しながら山に入っていく。

 ハルさんの言っていた通り、舗装されてない道も通ったけど、そんなに危ない道でもなく登りやすかった。

 光る葉が登りやすい道を選んでくれてるみたいだ。


 山を登っている道中に見える紅葉や銀杏は、綺麗に色づいていた。

 下から見ててもこんなに綺麗なんだから、上から見たらもっと綺麗なんだろうなと、期待しながら登っていくと気がついたら御神木の場所に来ていた。


「おぉー人の子、来れたか」

「あ、土地神様。お久しぶりです。今日はご招待頂きありがとうございます」

「儂も来てくれて嬉しいよ」


 御神木の場所についてすぐ、土地神様が来てくれた。

 ハルさんはまだ来てないみたいだ。


「今日は焼きトウモロコシ以外も作ってきました」

「おおっ! このいい香りはそれか! ありがとうの、人の子。今日は儂も色々と用意したぞ」

「わぁ、こんなに沢山。全部この山のものですか?」

「そうじゃよ」


 土地神様は沢山のキノコや山菜、栗や柿とかを見せてくれた。

 今日のために用意してくれたのかな?

 招待してくれただけじゃなく、山の幸もこんなに用意してくれるとか、本当にありがたいな。


「お待たせしましたー」


 という声が聞こえて空を見上げると、僕達の頭上の少し上くらいを、1羽の鳥が飛んでいた。

 その鳥は少し光ってから人くらいの大きさになっていき、そのまま空で一回転する感じで、地面にフワッと着地した。

 ここに来るときはいつもこうやって来るのかな?


「ハルちゃん、いらっしゃい」

「神様ー、今日はフルーツジュース持ってきましたよ。みんなで飲みましょー」

「おお! ありがとうの」


 今日は僕と集合してないので、人に見られることがないからだろうけど、ハルさんの髪はいつものピンク色だった。


「ハルさん、おはようございます。美味しそうなジュースですね」

「おはようございます、圭君。友人の手作りなんですが、とっても美味しいですよ。あ、でもまず先に紅葉をみましょうか」

「ハルちゃん、今は何にも化けとらんじゃろう? 儂が送ってあげよう」

「ありがとうございます、神様」


 神様が手を、僕とハルさんの前でヒラヒラさせてるなーと思ってたら、気がついたら御神木の枝の上にいた。

 前に花火を見たのと同じ場所だ。


「おぉ~! 本当に絶景ですねー」

「そうじゃろう? 今年は例年より木々も元気じゃからな。ハルちゃんのお陰じゃな」

「そんなことないですよー」


 急に場所が変わったことに少し動揺していたら、隣でハルさんと土地神様はとても楽しそうに話していた。

 僕もハルさん達が見ている方を向くと、そこから見えたのは、紅葉や銀杏の木々でとても鮮やかに色づく、綺麗な山の景色だった。


「わぁ……」

「凄いですよね。しかも今年は木々が輝いて見えますね」


 綺麗な景色に言葉を失っていると、ハルさんが声をかけてくれた。


「さっき、ここへ来る途中の道でも綺麗だと思いましたけど、やっぱり上から見ると全然違いますね。沢山の木を一度に見れますし、1つ1つの木の色づき具合が違って、鮮やかですね」

「夏の花火の時みたいな、職人さんの生み出す美しさも勿論綺麗なのですが、こういう自然の美しさも最高ですよね」

「そうじゃろう、そうじゃろう。人の子にも喜んでもらえたようで、良かったよ」

「ありがとうございます」


 楽しそうに笑いかけてくれるハルさんと土地神様。

 こんなに素敵な景色を見させてもらえるとか……本当にハルさんと土地神様には感謝してもしきれないな。


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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