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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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聞けない事

圭君視点です。

 最近のハルさんは何かに悩んでるみたいだ。

 前も僕に何か言おうとしてやめてたし、バイト先の話をしたときも何かを気にしてたみたいだった……

 でも本人が何でもないって言ってるのに、無理に聞いて気まずくなるのはやっぱり嫌なので、僕も深くは追求しない。


「昨日、お供えしてくれていましたね。ありがとうございます」


 今日は来て早々、ハルさんはそう言って笑ってくれた。

 やっぱり少し悩んでいる感はあるけど、そんなに深刻に悩んでいるわけでも無さそうで、安心した。


 そういえば、昨日お供えに行った時のキツネ……

 ずっと気になってたけど、もしかして?


「あの、ハルさん。昨日のお供えに行った時に、キツネを見たんですが……」

「ん? あぁ、それ私です」


 僕が昨日のキツネの事を言いかけると、さらっとハルさんはそう言った。


「やっぱりハルさんだったんですね」

「気付いてたんですか?」

「なんとなく目の雰囲気が似てると思いましたし、僕が触っても逃げなかったので、もしかしたらハルさんかなって思ってました。それに……」


 それに、結構長い間撫でさせてくれた……っていうのは言わないでおこう。


「それに?」

「あぁ、いえ……その、動物姿のハルさんも見つけれるんだなって嬉しく思いました。僕結構出掛けてる時とかに、あの鳥はハルさんかな? とか考えてるんですけど、確認の仕様がないですからね」


 最近は猫ハルさんも見なくなったし、鳥ハルさんは家に来てすぐに人に戻るから、そんなにしっかり見たことはない。

 飛んでる鳥をハルさんっぽいと思った事もないし、やっぱり動物になっているハルさんを見つけるのは無理だと思ってた。

 だから今回のキツネハルさんに気付けたのは、すごく嬉しかった。


「そ、そんな事、考えてたんですか……」


 ハルさんは少し照れた感じに僕から目を逸らした。

 何気に僕がいつも"あれはハルさんかな"とか考えながら歩いてるって言っちゃったけど、そんなのハルさんからしたら迷惑だよな……

 どう説明すればいいのか悩んでいたら、


「でも私だったから大丈夫でしたけど、あんまり野性動物とか触ったらダメですよ。もしかしたら圭君が怪我をするかもしれませんし、気をつけて下さいね」


と、普通に心配してくれた。

 迷惑がられて嫌われたとかではなさそうだ。


「はい、ありがとうございます」


 そういえば最初にハルさんを拾った時も店長に怒られたな……

 特に後先考えずに拾ったり触ったりしてたけど、もうちょっと警戒心を持って行動した方がいいかもしれない。

 僕は地元でも山とかよく散歩してたし、野性動物になれてるけど、こういう都会の動物は人になれてないだろうし、これからは触るのも気を付けよう。


 僕がこっちに来てから触った動物は、怪我をしていた黒猫と昨日のキツネだけ。

 どっちもハルさんだった。

 僕がハルさんに会いやすいのか、以外と誰でもハルさんに会ってるのか……

 もしハルさんが動物になってる時、色んな人と接するのが多いのだとしたら……

 ハルさんは、誰にでも簡単に頭を撫でさせるのかな?


「あの、ハルさん?」

「はい?」

「ハルさんも動物の時とか、人に近づきすぎないで下さいね。何かあって怪我をするかもしれないですし……」


 今の僕はこう言うしかない。

 本当はハルさんを他の人が撫でるのが嫌なんだけど……


「もちろんです。基本的に人には近づかずにいますから、大丈夫ですよ」


 ハルさんは、当たり前の事だという感じで笑って言ってくれたけど、それって、昨日のは僕だから近づいてくれたって思っていいのかな……

 でもそんな変なことは聞けない……


「あっ! そういえば圭君、紅葉狩りに行きませんか? 来週辺りに」

「紅葉ですか?」


 聞くか聞かないか悩んでいたら、ハルさんは思い出したように紅葉狩りに誘ってくれた。


「土地神様が今年はとても綺麗だから、圭君にも見に来てほしいって言ってましたよ。勉強の息抜きも兼ねていかがですか?」

「そんな、僕まで誘っていただけるとは……ありがとうございます。是非行きたいです」


 土地神様とか、そういう凄い方から来てほしいって言ってもらえるのは本当に嬉しい。

 ハルさんも土地神様も僕の事を信用してくれてる。

 だからハルさんが僕に近づいてくれて、頭を撫でさせてくれたのも多分、信用してくれてるからってだけで、特に特別な気持ちとかはないんだろうな……

 僕は"大切な()()"な訳だし……

 でもハルさんの方から誘ってもらったのは初めてだったので、それも嬉しかった。


 それから1週間くらい経ち、約束していた紅葉狩りへ行く日の前日になった。


「じゃあ、明日はまた神社の手前のところで……」


 ハルさんに明日の紅葉狩りの集合場所を、いつもの所でって言おうとしたら、


「あ、いえ……すみません圭君。明日はいつもの待ち合わせのところではなく、御神木の方に直接来てもらってもいいですか?」


と、何故か現地集合を提案された。


「えっと……でも……僕が1人で行って、入れるんですか?」


 御神木の方へ直接来てと言われても、御神木の所って結界があって普通の人は入れないんじゃなかったか?

 前に1人で帰った事はあるけど、あのときは道を教えてもらって、真っ直ぐに歩いただけだし、振り返って見たら僕の通った道はなくなっていた。

 そんな所に僕1人で辿り着けるかと不安に思っていると、


「ちょっと失礼しますね」


ハルさんはそう言って、僕の頭の上に少しだけ手をかざした。


「はい、大丈夫です。これで明日は御神木の所にある結界は通れます。明日だけですけどね」


 特に何かされた感じとかはなかったけど、僕も御神木の結界を通れるようにしてもらえたらしい。


「えっと……ありがとうございます。普通に行くだけで通れるんですか?」

「神社の手前の所から、順番に"光る葉"を探して追っていって下さいね。最初は少し舗装されてない道を通ると思いますが、それで御神木の所には辿り着けると思います」


 光る葉を追うのか……

 分かりやすいし、それなら辿り着けそうだ。

 そういう、普通なら出来ないような体験をさせてもらえるのはありがたいけど、なんでハルさんは一緒に行けないんだろう?


「あの、ハルさんは一緒に行けないんですか?」

「えーっと……なんといいますか、一緒行くのが難しそうなので……すみません……」


 とても申し訳無さそうに謝られてしまった。

 言いにくい事なんだろうし、無理に聞くのはやめておこう。

 ハルさんが一緒に紅葉狩りできなくなった訳じゃないし……

 僕はハルさんを困らせたいんじゃないんだから。


 それにしても、最近本当に聞けないことが多い。

 どこまで僕が聞いていいのか分からないから聞けないっていうのもあるけど、単純に無理に聞いて嫌われるのが怖いから聞けないだけだ……

 それに、まだ言えてないこともある。

 僕にはそういう思った事を聞く勇気がないな……


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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