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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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言葉の力

ハルさん視点です。

 本日もお昼頃、圭君家にお邪魔しました。


「今日はクリームパスタにしました。どうぞ」

「ありがとうございます」


 いつものように私が来てすぐ、圭君はお昼ご飯をくれます。

 今日はクリームパスタだそうです。

 ホウレン草とベーコンが入っていて、相変わらず彩りも綺麗です。


「とっても美味しいです。本当にお店を出せると思いますよ」


と、圭君に声をかけたのですが、返事がありません。

 圭君は何か考え事でもしているようで、食べる手も止まっています。


「圭君?」

「えっ! あ、……何でした?」


 圭君の顔の前で手をヒラヒラさせたら、気がついてくれました。

 やっぱり何か悩みでもあるんでしょうか?


「どうかしました? 何か悩みごとですか?」

「えっと、その……すみません……実は親からこの間の手紙の返事が来まして」


 おぉ! お返事来ましたか。

 きっと読んですぐにお返事を書いてくれたんですね。

 優しいご家族です。


「それは良かったですね。でも、それでどうして悩んでいるんですか?」

「何か、上手く言えないんですけど、不思議な感覚なんですよ」

「不思議な感覚ですか?」

「会ってもないのに、感情が伝わってきたような気がして……母さん達が、今までどれだけ心配してくれてたのかとか……今、凄く安心してくれたんだとか……」


 なるほど……つまり、とても温かいお手紙だったんですね。


「それは、ご家族の皆さんの気持ちが、圭君に伝わったからこその感覚じゃないですか? きっとご家族の皆さんにも、圭君の気持ちは伝わっていますよ」

「僕の気持ちが伝わった?」

「はい。きっと手紙から圭君が元気にしてるのが分かって、嬉しかったんでしょうね。良かったですね」


 やっぱり手紙っていいですよね。

 会えなくても自分の思いを伝えれますからね。

 もちろん、会って直接伝えるのが1番なんですけどね。


「はは、本当に言葉の力って偉大ですね……」

「圭君?」

「いえ、その、僕は今まで無表情とか、感情が無いとか……そういう事を沢山言われて来ました。何考えているのか分からないとかは親にまで言われて、結構落ち込んだりもしたんですよ」

「ん? 何を考えているのか分からないなんて、あたり前じゃないですか。人はそれぞれ、違う存在なんですから」


 私がそう言うと、圭君は凄く驚いたような顔をしました。

 何故でしょうか?

 私からしたら、あたり前の事を言ったまでですが、そんな驚くような事を言いましたかね?


「相手が何を考えているのかが分かるなら、本当に言葉なんて必要ないものになってしまいますよ。分からないからこそ、伝えるものじゃないですか」

「そう、ですね……たしかに……僕は今まで、何を考えてるか分からないとか言われて、気にしたりもしていたんですが、分かってもらえるように話せばよかっただけだったんですね……そういう努力はしていませんでした……」


 高校生の時の話でしょうか?

 たしか前に、親しい友人ができなかったって言ってましたもんね……

 こんなに優しい圭君に、友人がいないというのはいささか謎だったのですが、そういうことですか。


 さっきの圭君の言葉から考えても、おそらく学生の時に無表情とか、感情が無いとか言われてしまったのと同時に、何を考えてるか分からないとかも言われてしまったということでしょうか。

 分からないと言われて、分かってもらえるよう話すことを諦めてしまっていたんですね。


「でも手紙を書くだけで、こんなに簡単に気持ちが伝えられるなんて……」

「いえ、気持ちは簡単には伝わらないものですよ」

「え?」

「たとえ手紙を書こうと、会って話そうと、簡単に気持ちは伝わりません。だからこそ、人は思いを文字や言葉にするんです。その手紙に、その言葉に、気持ちが込もっているからこそ相手に伝わる訳ですし、それを受けとる相手も自分の事を思ってくれているからこそ、分かってくれるんですよ」

「お互いが思い合っているから……ですか?」

「はい。だから気持ちが伝わった時は凄く嬉しいんですよ! 今の圭君の状態ですね!」


 ただ、文字を書けばいい、言葉にすればいいという訳じゃありません。

 やっぱり伝えるのに大切なのは、お互いを思いやる気持ちだと私は思います。

 そういう気持ちも込めた上で使えるのが、"言葉の力"ですからね!


「そう、なんですね……ハルさん、本当にありがとうございます」

「いえいえ、私は何もしてませんよ。心のこもった手紙を書いたのは圭君自身じゃないですか」

「ハルさんが書くように言ってくれたお陰です。それに、なんか前より家族との距離も、近くなった気がします」

「それは良かったです」


 お互いがお互いの事を考えたからこそ、思いが伝わって嬉しく思えるのだという事は、分かってもらえたと思います。

 だからきっと、これからご家族ともより良い関係を築いてくれると思います。

 私も少しはお役にたてたようで嬉しいです。


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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