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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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返事

圭君視点です。

「おはようございます。昨日はすみませんでした」

「おはようございます、ハルさん。いえ、昨日は案内して頂きありがとうございました」


 昨日は土地神様の所に案内をしてもらって、そのまま別れたから少し心配していたけど、いつも通りハルさんは来てくれた。

 急の仕事はちゃんと片付いたんだろうか?


「えっと……その、ハルさんの仕事の方は大丈夫だったんですか?」


 僕が聞いていい事なのか分からないけど……


「はい、全然大丈夫ですよ。急で本当にすみませんでした」

「いえいえ、ハルさんが大丈夫なら良かったです」


 ハルさんは普通に笑ってる。

 怪我とかも特にしていないようだし、痛いのに無理してる感じもない。

 土地神様も言っていたけど、特に危ない仕事でもなかったみたいで良かった。


「今日は何を作りますか?」

「フィナンシェを作ってもいいですか? 抹茶のフィナンシェ、友人達にも大好評でした。圭君が袋にまで気を配ってくれたおかげですね」

「それは良かったです」

「あ、でも卵黄余っちゃうので、何か卵黄も消費できて、フィナンシェと一緒に作れるものはありますか?」


 ハルさん、まだ卵黄が余る事気にしてたんだ。


「ハルさん、前にも言いましたけど、卵黄が余っても僕は全然困りませんよ。卵黄って、本当に使い道が多いんですよ。お菓子では卵黄が余ったからって足してしまうと、全然別のものになってしまいますけど、普通の料理なら大体なんにでも合いますからね」

「えっと……でも……」

「卵黄ソースとかにして使えば、僕の夜ご飯も少しお洒落になりますから。濃厚なプリンとか作ったのは、単に僕が作りたかっただけですよ」


 まぁ、確かにプリンとか作ったのは卵黄が残ってたからだけど、別に卵黄の使い道を悩んで、困りながら作った訳じゃない。

 ただハルさんに食べてほしくて作っただけだ。


「でも私が残していく材料の使い道を、毎回頑張って考えてもらうのも申し訳ないです」

「そんな、使い道を頑張って考える必要はないくらい、卵黄は色んな料理につかえます。料理の最後に乗せるだけとかにも使いますし、少し濃厚さを足したいときなら何にでも合いますよ」


 卵黄だけを使う料理なんてたくさんあるし、本当に全く困ってないって、今度こそちゃんと伝わってるかな?

 前に僕が色々作れた方がいいって言ったのは、単にハルさんの作れる料理を増やしたかっただけなんだけどな……


「仮に卵白の方が余ったとしても、卵白は冷凍保存できますから」

「卵黄は冷凍保存できないんですか?」

「そうですね。でも一応は砂糖を混ぜておけば冷凍も出来ますよ」

「砂糖ですか?」

「使う時に少し計算しないといけませんけど、砂糖を混ぜれば卵黄も冷凍保存できます。だから本当に余るとか気にしないで、ハルさんの作りたいものを作りたい時に作って下さいね」

「ありがとうございます」


 ちゃんと説明したし、これで少しは気兼ねなく好きな物を作ってくれるといいけどな……


 ハルさんはフィナンシェを作って、フィナンシェ時の恒例みたいに僕に出来立てを食べさせてくれた後、帰っていった。

 僕も勉強の続きをしてから夕食。

 ハルさんの使わなかった卵黄を使って、カルボナーラを作る。


 ハルさんは料理をしないどころか料理の種類も知らないから、何に何を使うか分からないかも知れないけど、残って困る食材なんてよっぽどない。

 せめて夕食も一緒に食べていってくれたら、本当に僕が悩まずに残った食材を使ってるって分かってもらえるのに……

 ハルさんにも仕事があるから仕方ないけど……


 夕食後も少し勉強をしてからバイトへ行く。

 ハルさんも今頃仕事をしているんだろう……

 神様から教えてもらった事を考えると、昨日のお昼のは危ない事でも何ともないんだろうけど、こういう夜にしてるのは町のパトロールとかだ。

 最初にハルさんと会った時みたいに、怪我とかしてない事を祈る。


 そういえばハルさん、抹茶のフィナンシェが友人から大好評って言ってたな。

 でも、昨日会った時にその話をしなかったって事は、それを友人に渡したのは昨日ってことになる。

 だとすると、ハルさんは昨日友人と会った?

 やっぱり同じ仕事をしてる友人がいるのか?


 ハルさんの友人に会ってみたいとか言ったら、会わせてくれるかな?

 いや、それは絶対にハルさんを困らせるだけだし、やめておこう。

 ハルさんはいつも僕の事を気遣ってくれるから、友人に会いたいとかそういう我儘も聞いてくれそうだけど、僕はハルさんの事が知りたいだけで、ハルさんに迷惑をかけたい訳じゃないんだから。


 ハルさんは僕に気を遣いすぎって言ってくれたけど、ハルさんの方が変に気を遣いすぎてると思う。

 卵黄の件もそうだけど、本当に気にしなくていいのに。

 もっと、何の気兼ねなしに頼ってくれるようになればいいのに……

 そうなるためには、僕が頑張らないと……


 バイト中はいつもと変わらず、お客さんもあまり来ないので考え事に集中できる。

 最近はバイト中、ずっとハルさんの事ばっかり考えてる……

 考えても解決しない事ばかりだけど……


 バイトも終わって帰宅。

 一応毎日ポストは確認しているけど、基本的には何も来ない。

 でも、今日は1通の手紙が入っていた。

 実家からだ。

 僕が送った手紙の返事をくれたみたいだ。

 部屋に戻ってから読んでみた。


圭、手紙ありがとう。

私達も圭の邪魔にならないようにと、電話はしない方がいいと思ったから、手紙嬉しかったよ。


もともと器用な子だったから、1人暮らしの事はそこまで心配していなかったけど、バイトは少し心配してたのよ。

あんたは昔からあまり人付き合いが上手な方ではないし、深夜のバイトだなんていうから、とても心配したわ。


でも、手紙を読んで安心した。

いい人達と出会えたみたいでよかったわね。

それでもちゃんと気をつけてね。

そっちはやっぱりまだ治安も良くないみたいだし、何か困ったことがあったら、いつでも連絡してきてくれていいんだからね。


帰ってきた時にはそっちでの話をいっぱい聞かせてね。

あと、作れる料理が増えたんなら、作ってもらおうかしらね。

楽しみにしてるわよ。

それから珠鈴が、作れるお菓子が増えたから、お兄ちゃんが帰ってきたら披露するって。

時間があるようなら、それを楽しみに帰ってきなさいね。


体調に気を付けて、無理のない範囲で頑張りなさい。

応援してるからね。


 手紙にはそう書かれていた。

 なんだろう……なんとも言えない変な感覚……

 自分の中で色んな感情が混ざり合ってて、上手く言葉に出来ない感じだった……


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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