外伝 ミオ視点 43
ミオ視点です。
予定外に夜ご飯までいただく事になってしまった。
一応は遠慮をして食べていたけど、心を読む必要もないほどに遠慮をしない方が喜ばれると分かったので、かなり多めに食べさせてもらった。
分身体がまともな食事をするのなんて、本当に久しぶりだ。
しかも、なんやかんやで珠鈴さんに懐かれてしまった。
懐かれて困るという訳では無いけど、基本的に皆の妹属性的な立ち位置の私には、姉のような振る舞いは難しい。
まぁだからこそ、同属性として珠鈴さんも接し易かったんだろうけど。
「私は全能ですからね~。するかしないかは別として、出来ない事なんてありませんよ」
「えっ、凄い! 魔法とかも使えるって事ですよね?」
「魔法ですか? 例えば、どういったものが?」
「やっぱり、炎と水と雷ですかね!」
「あぁ、こういう感じですか?」
ブォォオオ!
チャプンッ!
「そんないきなり出来るんですか!」
「こんな事も出来ますよ~」
「わぁお~! 綺麗!」
私が火球と水球を生み出して、適当にジャグリングをして見せると、珠鈴さんは飛び跳ねて喜んでくれた。
こんな程度の力を見せただけで、ここまで喜んでくれるとは……
対して圭さんは、驚きもせずに、
『このままミオさんと遊ぶ時間がもっと続いて、ハルさんが出掛けるのが遅くなればいいのにな』
なんて事を考えている。
「珠鈴さんは変わってますねー。私一応全能なんですけど……そんな普通の力を見たいと言われたのは初めてです」
「えっ、ごめんなさい。失礼でした? 私、全能とか言われてもよく分からなくて……」
「失礼とかではないんですが、全能だと言うとなかなか突拍子もないことをしろとよく言われるので」
『もしかして、今ミオさんは珠鈴の事を試していたんだろうか? こういう特別な力を利用したりしないかを……』
全くもってそんなつもりはない。
圭さんは本当に疑り深くて困るな。
「ねぇ、ハル姉も何か魔法が使えたりするの?」
「え……」
「いや珠鈴、動物に変身出来てる時点で魔法だろ」
「あ、そっか。何か私のなかでは、炎とか水とかを使えるのが魔法ってイメージになっちゃってた。あはっ」
「ゲームのやりすぎだ」
「はーい」
「あの、雷だけでしたら、私も使えますよ?」
バチッ! ビリビリッ!
「まぁ、ミオに教えてもらったものなんですけどね」
「ハル姉さんは攻撃系の力を何も持ってませんでしたからね。雷くらいは護身用に持っていて欲しかったんですよ」
「はい、ありがとうございます。結構助かってますよ。少し雷を纏った状態で人に触れれば気絶させられますからね」
「あぁ、スタンガン的な?」
「そうですね」
珠鈴さんは、私の火球や水球にはかなり喜んでいたけど、ハル姉さんの生み出した雷には反応が薄い。
それに聞いた事のない"スタンガン"なるもので納得している。
「あの、スタンガンとは?」
「この世界に存在する、電気を発生させられる道具ですね。防犯用として存在していますが、たまに悪用されます」
「あらら~、ですがこの魔法の存在しない世界で、そのようなものがあるとは驚きですね」
「この世界は文明の発達が凄いですからね。科学の力でわりと何でも作ってしまうんですよ。炎も雷も、どこでも簡単に起こす事が出来る道具もあります」
炎も雷も、どこでも生み出せる。
しかも誰もが簡単に。
魔法の存在しない世界だからこそ、魔法に頼らないで如何に進化するかを体現してきたんだろう。
でも、そもそもからして、どうして魔法を知っているんだろう?
さっきの圭さんと珠鈴さんの会話からして、珠鈴さんに魔法のイメージを植え付けたのは"ゲーム"なるものみたいだけど、ゲームといったらトランプだろうに?
「それにしても、本当に凄いですよね~。ですが私が何よりも驚いたのは、魔法が存在しない世界なのに、珠鈴さんが魔法というものを知っていた事でした。さっき圭さんが仰られたゲームとは何ですか?」
「ゲームはえっと、玩具の1つですね。どう説明すればいいのか……珠鈴が好んでるRPGとかは、架空の世界の中で色んな魔法を使っていくものなんですが……」
「お兄ちゃん! そんな説明よりやってもらった方が早いよ! ミオさん、こっちに来てー」
あーるぴーじー?
急に知らない単語が増えたと思っていると、珠鈴さんに手を引かれた。
そして隣の部屋で、珠鈴さんは妙な機械を持ってきた。
しかも、テレビと呼ばれる映像を投影する箱を付けている。
「これがゲームですよ。これで主人公が動きます。こっちでジャンプ、こっちで攻撃」
「なるほど?」
珠鈴さんに教えてもらった通りに機械を動かしていく。
敵が現れたら攻撃、攻撃されたかわす、次にどんな攻撃が来るのかを予測して動く……別に何ら難しい事はない。
「嘘っ! 私もまだそこクリアしてなかったのにーっ!」
「ミオは何でも上手いですからね」
「上手すぎだよ~」
「えっと、何か申し訳ないですね……あ、でもとても楽しかったです」
「それなら良かったです!」
テレビに投影される主人公が、ボタン1つで簡単に炎や氷を出していた。
雷魔法なんて広範囲の敵を簡単に倒せる爽快感もあって面白かった。
これは確かに魔法に憧れるのも分かる。
ただ、私はいつまでもここで遊んでいる訳にはいかない。
こういう平和な魔法の行使とは、違う世界に生きているんだから。
「では、圭さんに恨まれそうではありますが、そろそろハル姉さんをもらいますね!」
「はは……」
「圭君、ちょっと寂しいですけど、出来る限り早く終わらせますので」
「はい、待ってますね」
「ハル姉、私も待ってるよ!」
「ハルちゃん、私達もよ!」
「はい、ありがとうございます! 行ってきます」
「「「行ってらっしゃい」」」
私が空間を歪めて世界を繋げると、挨拶をしてからハル姉さんは通って行った。
私はもう消えるだけなので、この空間を通る必要はない。
だから私もちゃんと挨拶をしよう。
「とても楽しい時間を、ありがとうございました」
本当に、楽しかった。
こういう記憶を本体に送ってあげるのも、悪くはないな。
そう思わせてくれた、圭さん、珠鈴さん、純連さんに、深い感謝を。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




