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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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気遣い過ぎ

ハルさん視点です。

 圭君は今ご家族の皆様への手紙を書いています。

 その間私はキッチンをお借りして、今日もフィナンシェ作りです。

 もう私1人でもちゃんと作れるようになりました。

 今日は抹茶を混ぜてみようと思います。


 それにしても、届く野菜が多すぎるのに、どうして断らないのかと不思議に思ってましたが、圭君がご家族に何の連絡もしてなかったとは……

 こんな、優しさの塊みたいな圭君が、お礼も何もずっと言っていなかったなんて……

 もっと早くに気がつくべきでした。


 きっと圭君は今まで、自分の事で精一杯だったんですよね。

 受験に落ちた事とか、やりたいことも見つかってないのに大学に行こうとしてた事とか、色々悩んでましたし……

 ご家族の皆様も心配していたでしょうし、優しい圭君だからこそ、心配かけたくないからと余計に連絡をしなくなったのかもしれませんしね。


 でもそういうことから、すれ違いというのは起きてしまいます。

 お互いを大切に思い合っているのにすれ違うなんて、辛いですよね。

 残念な事にこの世の中、そういう行き違いばかり起こってしまいますが……

 だからやっぱり、自分の思いをちゃんと言葉にして伝えるっていうのは大切なんですよね。


 そうこう考えながら作ってたら、フィナンシェ生地も完成しました。

 あとは焼くだけですね。

 考えながらでもフィナンシェが作れるなんて、私も本当に上達したもんですよ。


 圭君の様子を見ると、さっきまで書いていたようですが、今は手が止まってます。

 書き終わったんでしょうか?


「書けました?」

「はい、一応……」


 手紙はちゃんと書けたみたいですね。

 少し照れた感じで笑っていて、圭君も嬉しそうですね。

 きっと素敵な手紙が書けたんですね。


「あとでバイトへ行きがてら、出してきますね」

「はい、是非そうしてくださいね!」


 これで圭君とご家族の皆様との間にあった小さな溝は、なくなりましたよね。

 よかったです。


 家族というのは特別ですからね。

 離れていても繋がってるっていうのが家族です。

 繋がりがあると分かっているだけでも支えになる、そういうものですよね。

 まぁ、自分でその繋がりを消した私が言うのもおかしな話ですが……

 いえ、私だからこそですかね?


「ハルさん?」

「えっ!?」

「どうしました? 大丈夫ですか?」

「大丈夫ですよ。すみません、ちょっと考え事してて」

「考え事ですか?」


 少し考え事をしていたら、圭君に不思議な顔をされてしまいました。

 私そんな変な顔してましたかね?


 あ、そういえば勢いそのままで私の便箋を渡してしまいましたが、良かったんでしょうか?

 桜の柄だったので、あまり今の時期に使う柄ではなかったかも知れないですね。

 そもそも今時の子達って、あまり便箋とか使わないですよね。

 携帯でメールとかでしょうか?


 考えてみれば、圭君って携帯もってますよね?

 それなら手紙を書かなくも、メールが使えるのではないですか?

 メールの方がすぐ届きますし、手紙より都合がいいですよね?

 もしかして私、凄く余計なことをしてしまったのでは……


「ごめんなさい、圭君。手紙書かせておいて申し訳ないですけど、メールとかの方が良かったんじゃないですか?」

「あぁ、その事考えてたんですか? 僕は携帯持ってますけど、うちの家族は持ってないんですよ。だから家に連絡したい時は固定電話になっちゃうんですよ」

「そうなんですか。じゃあ、手紙で丁度良かったですか?」

「はい、ありがとうございます」


 それで、忙しい時に電話したら邪魔になるって言ってたんですね。

 私が余計なことをしてしまった訳ではなさそうで、良かったです。


 それに、メールの方が早く届くという利点はありますが、やっぱり思いを伝えるなら手紙の方がいいですよね。

 メールでは伝えることができない、書いた人らしさを添える事ができますからね。

 筆跡とかから、心を込めて書いてくれたんだって事が伝わります。

 そういう意味では、圭君のご家族が携帯を持ってなくて良かったですね。


チーン


「あっ、焼き上がりましたね」


 抹茶のフィナンシェ完成しました。

 この間は紅茶のフィナンシェや、チョコレートのフィナンシェとかも作りましたね。


「圭君。はい、どうぞ」

「あ、ありがとうございます」

「どうですか?」

「美味しいですよ。今日は抹茶なんですね」


 出来上がってすぐのを圭君に食べてもらうのは、もう恒例行事みたいになりましたね。

 今日も喜んでもらえて良かったです。

 では、今日もこれを持って帰りましょう。


「あっ、ハルさん」

「はい?」

「抹茶のお菓子は透明の袋には入れない方がいいですよ」

「そうなんですか?」


 私がいつものように袋に詰めようとしたら、圭君に止められました。


「抹茶の緑色の成分は光で変色しやすいので、光を通さない袋に入れた方がいいです。少し光に当たってしまうだけで、きれいな緑色がくすんでしまうので」

「そうなんですね。それは初耳でした」

「こっちの袋なら光を通さないと思うので、使って下さい」

「ありがとうございます」


 皆に渡すときにフィナンシェが変色してたら嫌ですよね。

 そこまで気にしてくれるとは、本当に圭君は気遣いのプロですね。

 まぁでも気遣い過ぎた結果、ご家族に連絡ができなかったようですが……


「じゃあそろそろ夕食にしましょうか。さっき作っておいたのを温め直すだけですから、少し待ってて下さいね」

「はい、ありがとうございます」


 今日も圭君の作ってくれた美味しいご飯、楽しみです。


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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