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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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外伝 ミオ視点 27

ミオ視点です。

「今回の大会、凄かったな」

「まさかハル様があんなにもお強い方だったとは」

「戦神様も長年試合を申し込んでは断られていたらしいし、高位の方々にとってはハル様がお強いのは当たり前だったみたいだな」

「それにあの戦いの事も……」

「あぁ、そうだな。それも公表していなかったってのが余計に凄いよな。ご自身が悪く言われている事くらい知っておられただろうに」

「気にされないのだろうな。ずっと弱いと揶揄されていたのも本当に気にしておられなかったようだし、懐の深い方だ」


『情報共有』


 うん、予定通り。

 どのミオからの連絡も、全て予定通りだ。

 あちらさんもハル姉さんの悪評が流せなくなって、さぞ困っている事だろう。

 いや、困っているというよりは狼狽えていると言った方が正しいか。

 いい加減に仕事をしていると思っていた小娘が、実際には殊勝な選良であった事を知ったんだから。


「ミオ、進捗はどうですか?」

「問題ありませんよ。先日のハル姉さんの活躍のお陰で、想定よりも早く終わりそうですし」

「それは良かったです」


 一応報告にとハル姉さんに会いに女神様の領域にきてみたけど、ハル姉さんは変わらず書類仕事をしているだけだった。

 ただ、ここに来るまでの道中でハル姉さんの事を悪く言う人が1人もいなかったという変化はあった。

 もちろん大っぴらに言う人は以前もいなかったけど、心の内では皆散々言っていた。

 私に聞かれていると分かっていて心で思える程に馬鹿にしていたというのに、ここまで簡単に手のひら返しをするなんて……

 こんな奴等を、ハル姉さんはよく仲間だなんて思えるものだ。


「ふふふっ」

「随分と楽しそうですね?」

「え、そう見えてしまいますか?」

「浮かれるのはいいですけど、浮かれ過ぎないようにして下さいね?」

「もちろんです! でも、もう少しで圭君に会えると思うと……ふふっ」

「そういうものですか?」

「私も圭君に会うまでは知りませんでしたが、そういうものみたいですね」


 ハル姉さんは今回の問題の解決が近づいた事に浮かれている。

 恋人からの贈り物だという綺麗な青色のストールに大切そうに触れ、微笑んでいる。

 私達は体感温度の調整が出来るから、今のハル姉さんが温かい事に喜んでいる訳じゃないというのも分かる。

 分かるけど、いまいち理解は出来ないな。


「ミオも、もう少し彼に優しくしてあげて下さいね」

「……」

「ミオ? もしかして私は今、余計な事を言いました?」

「いえ。別にアイツの事を言われても、普段通り特に何とも思いませんが、何でしょうね? ハル姉さんから見て、私ってアイツに優しくないですか?」

「うーん? 優しくないというか、会ってあげるべきだと思います。避けていますよね?」

「避けている訳では……」

「避けていますよね?」

「……はい」


 アイツの話を振られる事自体は少なくない。

 それでも誰もが私に恋愛感情がない事を知っているし、私自身もいつも適当に流している。

 それなのに今上手く流せなかったのは、多分この間あの男にあんな事を言われたからだ。

 そして変な反応をしてしまった事を誤魔化す為に興味のない質問したというのに、ハル姉さんに本質を見抜かれた事を言われてしまって……


 私はアイツを避けているんだ。

 避けようと思って避けている訳ではないから、避ける為に何かをしているという事はないけど、会わないに越したことはないと思っている。

 それは私に恋愛感情がないからこそ、アイツへの接し方が分からないからだ。


「当たり前ですけど、嫌いじゃないんですよね?」

「……」

「会ってあげて下さい」

「会ったところで、私はアイツが会いたいミオではありませんから」

「それでも、彼は会いたいはずです」

「ミオの見目を求めているのなら、何も私である必要はありません。現に私以外のミオは、結構アイツに会っていますよ」

「見目だけの問題じゃありませんよ。あなたは他のミオとは違って、明確な感情があるんですから」

「他のミオにも感情はありますよ。私程には豊かじゃないだけです」

「そんなに会いたくないのですか?」

「……そうじゃないです」


 会いたくないかと聞かれれば、それは違うと思う。

 別に会いたくない訳でもないし、会いたい訳でもない。

 会ったら接し方に悩むだけだ。


「私が言い過ぎましたね、ごめんなさい。でもミオは頑張り過ぎですから、どうしても心配になるんですよ」

「……人の心配より、自分の心配をして下さい。まだまだ恋人と再会するには、やらないといけない事が多いんですからね!」

「分かっていますよ。今後の為にも薙刀を新調しておかないといけませんし」


 話を逸らしてくれたのは、ハル姉さんの優しさだな。

 それならその話に乗らせてもらおう。


「新調されるのなら、私が作りましょうか?」

「ミオの作る武器は強すぎるのでいけません」

「そうは言っても、毎回復元の力を使いながら戦っていてはもちませんよ?」

「自分の実力を見誤りたくないんです。その為にも、薙刀は脆い方がいいんですよ」

「……ストイックですね」


 何ともハル姉さんらしいな。

 自分の力の強さをもう少し自覚して欲しいとは思っていたけど、ハル姉さんはそれを敢えて自覚しないようにしているんだ。

 その強さに自身が溺れてしまわないように。


 こういう自身を叱咤する力があるからこそ、大切な家族に自分が忘れられようと、大切な恋人と長期で会えなくなろうと、闇堕ちする事がないんだろうな。

 無理矢理に闇を植え付けられたりしない限りは……

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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