表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
桜色のネコ  作者: 猫人鳥


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

333/334

外伝 ミオ視点 26

ミオ視点です。

 Aブロックは予定通りにハル姉さんが勝ち抜いた。

 そしてBブロックは戦神、Cブロックはアキ姉さん、Dブロックはアキ姉さんの旦那さんという、全て私の予想通りの方が勝ち抜いていった。

 ここからはトーナメントで、ハル姉さん対戦神の対決、アキ姉さん対アキ姉さんの旦那さんという夫婦対決が始まる。

 今はその試合が始まる前の休憩時間だ。


「もう俺の仕事は終わりか?」

「これだけ広めたし、十分でしょ」


 今の試合の合間で、観覧席の各所を回ってこの男に事実を広めさせた。

 あの時のこの男との戦いの際に、何故ハル姉さんが不参加だったのかという話を。


 私がこの男によって闇堕ちさせられていた時、この男はハル姉さんを襲っていた。

 ハル姉さんを再起不能レベルに傷付けるだけでなく、ハル姉さんに闇の種まで埋め込んで……


 だからハル姉さんは回復に時間がかかってしまい、あの戦いに参加出来なかったというのは事実ではあるけど、より正確に言うならば、ハル姉さんに参加されては私達が不利になる可能性があったから、私がハル姉さんを時限の挾間に閉じ込めていたというのが正しい。

 狙われていたのが私とハル姉さんだったからこそ、同時に私達が存在している訳にはいかなかったんだ。

 それが今になって不参加だったと馬鹿にされるだなんて。


 でもあの時の選択を間違えたとは思っていない。

 寧ろハル姉さんを閉じ込めておいて本当に良かったとさえ思っている。

 あの時はハル姉さんに闇の種が埋め込まれている事にまでは気付いていなかったし、あそこで閉じ込めていなかった場合、この男の望むままに種が発芽していた事は間違いなかったんだから。

 この男はそれを狙っていたんだろうけど。


「……何?」

「別に何も言ってないだろー?」

「じゃあこっちを見ないで」

「つれない事を言うなよー。折角の楽しいデートだったんだからさ♪」

「……」


 いつもなら勝手に言ってろと流すところなんだけど、何故か流せなかった。

 流したくなかったというか、意趣返しがしたくなったというか……


「私とのデートなんて見せられて、あの方も相当悲しんでおられるだろうね。最愛の相手が他の女とデートしてるんだから」

「……ガキが」

「自分からデートだって言い出したんでしょ?」

「恋愛感情も分からねぇ癖して、生意気言ってんじゃねぇぞ」

「それなら教えてくれる? 全ての世界を滅ぼしてでも再会したかった、恋人への気持ちって奴をね」

「……」


 散々私達を苦しめたこの男が、表面上だけとはいえニヤニヤと私達を誂ってくる事に腹が立っていたんだと思う。

 だから傷口を抉ってやった。

 これでこの男が激怒しようとも、私の敵じゃないし。

 ちょっとは反省して大人しくなればいいと思ったけど、


「あいつはそんな事を悲しんだりはしねぇだろうさ。もうその何倍も、悲しませちまったからな……」


と、思っていた以上に大人しくなった。


「だったら、これ以上悲しませないような努力をしたらどうなの?」

「今更だろ」

「何事においても、今更なんて事はないと思うけど?」

「そんだけ世界中の闇を浴びといて、まだそんな綺麗事をぬかせるたぁ流石だな」

「私はそういう存在だから」


 私はもう、以前の闇堕ちさせられた私とは違う。

 どれだけ闇を浴びようとも、決して闇堕ちする事はないし、干渉される事もない。

 いつでもへらへらと笑って人を誂い、時には綺麗事を並べた助言をする。

 闇堕ちした本体とは違う、この男に近い存在なんだ。


「お前のその覚悟は立派なものだが、お前の恋人は本当にそれでいいのか?」

「は?」

「予言してやるよ。お前の恋人は、間違いなく第2の俺になるってな」


 私には恋愛感情がない。

 だからこの男が何でそんな予言をしてくるのかなんて理解出来ない。

 でも、これだけは断言できる。


「アイツは貴方とは違う。だから貴方のその予言は、100%当たる事はないよ」

「ふっ、だといいな」


 どれだけ確率を計算したって、絶対に100%なんて事はあり得ない。

 それでもこれは、100%なんだ。


「お、ハルと戦神の試合が始まるな」

「もう帰るよ。これ以上は貴方を隠せなくなるからね」

「試合は見ないのか?」

「見ないでも分かる。戦神の勝ちで終わり」

「ハルは結構奮闘すると思うが?」

「奮闘したって同じだよ。あのハル姉さんじゃ、戦神には勝てないから」

「何%だ?」

「戦神が勝つ確率が、93.492%」

「その後は?」

「アキ姉さんの夫婦対決は、アキ姉さんが勝つ確率が99.999%、その後のアキ姉さんと戦神の対決も、アキ姉さんが勝つ確率が99.999%、その先のアキ姉さんとリリーの対決は、リリーが勝つ確率が87.995%」

「そうかい。アキには100%って言ってやらないんだな」

「……うるさい」


 後で聞いた今回の大会の試合結果は、全て私の予想通りだった。

 まぁアキ姉さんの強さは今回の参加者の中では軍を抜いていたし、この程度の予想は誰でも出来ただろうけど。


 それだけ誰もがアキ姉さんが勝つと分かっている試合ですら99.999%なのに対して、あの男の予言を100%だと否定している自分の矛盾……

 私はそれを深く考える事はしない。

 だってそれが、私という存在だから。

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ