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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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外伝 ミオ視点 25

ミオ視点です。

バーンッ! ババーンッ!


 盛大な花火が開催を報せる事で始まった武力大会。

 今回は約1000人の挑戦者が集まった。

 これは過去にもない最大人数だ。


 250人程度で、4ブロックに分けられている。

 カナの采配で、ハル姉さんが参加されるAブロックにはハル姉さんが全力を出さずとも勝てる相手しかいない。

 とはいえハル姉さんには到底勝てないと思われている相手ばかりが参加しているから、この采配を贔屓だとは誰も思わないだろう。


 だから、


「は? なんだアレ……」

「あれが本当にハル様か?」

「あの身のこなし、何でハル様にあんな動きが出来るんだ?」

「まさか、ハル様の姿を模した別人……いや、そんな不正をカナ様が認められる訳はないよな」


と、今会場で戦われているハル姉さんを疑問に思う声が、彼方此方から聞こえている。


「今のって、重力操作だよね?」

「あぁ、それにあれは空中移動も使っているように見える」

「名縛りも使っているんじゃないか? ほら見ろ、まずはハル様を狙いに行こうって言ってたあいつ等が、全然違うところで戦ってやがる」

「ハル様って名縛りも使えたの!?」

「知らないよ! でもあれはそうだとしか思えないでしょ?」

「あの脆そうな薙刀が全く壊れないのも、強化や復元を使っているからなんだろうし……」


 ハル姉さんの得意武器は薙刀だ。

 そして現状のハル姉さんは、動体視力や瞬発力といった肉体的な強さと、触覚や判断力といった感覚的な強さの高い存在に化けられている。

 見目が普段通りだからと油断していれば、あの何の変哲もない凡庸な薙刀の餌食となる事は間違いない。


 ハル姉さんは元より、暇だ暇だと仰られながら仕事の合間に色んな力を習得されていたし、普段動物の姿で過ごす事が多いから、急な動きの変化にも慣れておられる。

 その為自身や薙刀の重力を操作して相手に重い一撃を加えたり、空中を舞うように飛んで移動したりという動きが容易に出来てしまう。

 この世界のバランス維持に力を注いでしまっている以上、大技を多用する事は出来ないけど、少し練習すれば使用できるような力を複数同時に扱う事にとても長けておられるんだから。


 加えて言えば、ハル姉さんは名を()()()()()()()()名残りで、名縛りの力を使う事が出来る。

 大切にされていたと過去形となってしまうのは申し訳ないけど、今のハル姉さんには"ハル"という名しか存在していないんだから仕方ない。

 でも元々は、"天沢遙花"という真名があった。

 名が短く覚えやすい場合、名縛りの力を使える者に操られてしまう可能性があるので、本来なら真名が分かりにくくなるような名で活動する。

 だけど、この名を大切にされていたハル姉さんは活動名を"ハル"にされたんだ。

 だから名縛りに対抗する為に、自身も名縛りの力を覚えられた。


 強者ほど名縛りなんて効かなくなるものだとはいえ、今回のAブロック参加者の大半にはこの力がかなり有効だ。

 もちろんこれは、参加者1人1人の顔と名前をしっかりと覚えておられるハル姉さんだからこそ、ここまで効いているんだけど。


「おいおいっ! このままだと本当にハル様がAブロックの勝者になっちまうんじゃないか?」

「嘘でしょ? あんなにお強いんだったら、どうして今まで……」

「あの噂は何だったんだ? あの戦いに参加しないどころか、姿を見せもしなかったっていう……」


 そろそろこの辺りで出番だろう。

 私が首を軽く振って、"行け"という合図を送ると、ニヤっと笑って、ダルそうな足取りで混乱する観客達に近づいていった。


「その噂は本当だよー、ハルちゃんはあの戦いに参加していないんだ♪」

「え? って、おっ、お前はっ!?」

「何で参加しなかったんだと思うー? それはー、俺がハルちゃんをボコボコにしたからだよ♪」

「は? え……はぁ?」


 急なあの男の登場に観客達は狼狽えている。

 狼狽え過ぎて、話を聞いていないんじゃないかと心配になるくらいだ。

 それにしてもあの笑顔、ムカつくな……


「参加したくても出来なかったんだよ。回復の力も追いつかない程に傷だらけで、息をしてるのもやっとなくらいだったんだからねー」

「な、何で……」

「何でってそりゃあさ、ハルちゃんはあんなに強いじゃん? しかも何にでも化けられる。闇堕ちでもしてくれれば最高だと思ったんだよねー」

「ち、違うっ! 何でお前がここにいる!?」

「どうやってここに!?」

「ハルちゃんを応援したくてね♪」

「何を言って……」

「すぐに報せないと!」


 あの男にはもう力が残されていない事は周知の事実だ。

 それでも全盛期で言えばミオの本体と互角とも言える強さを持っていたんだ。

 ましてや、こんなところには絶対にいるはずのない存在。

 騒ぎになるのは当然だ。


「皆さーん! 大丈夫ですよー! この男は私が見張っていますから!」

「ミオ様!」

「ちょっと諸事情でこの男をこの会場に連れて来ていますが、私がいるので問題ありません。ですがこの事は姉さん達には内密にお願いしますね」

「ミオ様がいて下さるのなら安心だ」

「それでミオ様は今回の大会に参加されていないのですね」

「そんな感じです」


 私が口外出来ない仕事をしているのなんていつもの事だし、誰も何故この男を会場に連れて来ているのかは触れて来ない。

 そして私はこの男が来ている事を姉さん達に内密にするようにと言っているから、誰も口外する事はないだろう。

 まぁ少しでも口外しようとすれば、すぐに話せなくなるような制裁が施される処置はしているんだけど。


 ただ、私が内密にとお願いしたのはあくまでもこの男の存在についてだけだ。

 この男が今話した事実については何も言っていない。

 噂が大好きな彼等の事だ。

 きっと盛大に話を広げてくれるだろうな。

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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