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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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外伝 ミオ視点 18

ミオ視点です。

 ハル姉さんを違反として訴えた相手とどう戦うかを話し合おうと思っていたのに、ハル姉さんは戦いたくないという考えみたいだ。

 ハル姉さんの問題なんだし、ハル姉さんの希望を出来る限りは優先したいとは思っているけど、流石にな……


「話し合いで解決するなんていう、甘い考えですか?」

「甘いのは分かっていますが、それが1番ですからね」

「86.527%不可能です」

「おぉ! ミオの計算で13.473%も解決する可能性があるのですね」

「揚げ足を取らないで下さい」


 私が計算で導きだしている確率は、現状では判断しきれない不確定要素によって変動しているだけだ。

 不確定要素がなくなる事はあり得ないから100%というものが現れる事はないとはいえ、この確率が大きく外れる事がないからこそ、私を含む誰もが信じている。

 ハル姉さんだって信じてくれているだろうけど、それでも僅かな可能性を信じたいだなんて……


「互いに違う考えを持っているのですから、すれ違いが起こるのは仕方のない事です。私のやり方が気に入らないというのも分かりますし、ここは穏便に……」

「穏便になんていくわけないじゃないですか」

「可能性がほぼない事は分かってます。でも、彼等もこれまで共に女神様を支えてきた仲間でもあるんです」

「仲間、ですか? 敵でなく?」

「大切な仲間です!」


 そもそも話し合いで解決出来るような相手なら、とっくの昔に解決していたはずだ。

 未だ解決していない以上、どう考えても面倒な相手である事は調べるまでもなく分かるのに、ハル姉さんにとっては大切な仲間だと……

 再起不能にする事を望まないとは思っていたけど、戦いもしないとはな……


「……分かりました。ですが、当然覚悟は出来ているんですよね?」

「はい」

「圭さんが泣いちゃいますよ?」

「……そうならない事を願っています」

「ハル姉さんご自身も、相当に苦しむと思いますが?」

「……私は大丈夫です」

「あまり大丈夫そうには見えませんけどね?」

「大丈夫です、本当に」


 流石はハル姉さん、なかなかの覚悟だ。

 とはいえ正直これはかなり困る。

 ハル姉さんは今闇の種が埋め込まれている状態なんだから、出来る限りは悲しい思いをしてほしくないのに……

 でもそれは言えないから……


「あ、あの? 度々ごめんなさい! 結局どうする事になったんですか?」

「簡単に言えば、今回訴えてきた相手を責めないという事になりました」

「え? 責めずに勝てるんですか?」

「勝てます。時間はかかりますので、ハル姉さんが恋人と会えなくて悲しむ事になりますが」

「そんな事って……」


 サクにも分かったようで、ハル姉さんの心境を察して俯いている。

 本当に、やっと恋人になったというのにな……

 敵を倒して幸せになるよりも、敵をも助ける為に自分が犠牲になろうとしている。

 あまりいいとは言えないけど、私にはハル姉さんを否定する事は出来ないから。


「時間って、どれくらいかかるんですか?」

「相手が話し合いで折れてくれれば3日で済みます。ですがまぁほぼ間違いなく折れないでしょうし、1年はかかりますね。これから色々と資料を揃えて、出来る限りは短く済むようにはしますが」

「お手数おかけします」

「それは構わん」

「いや確かに構いませんけど、死神様が返事をしないで下さいよ。やるのは私ですよ?」

「秘書ちゃんを貸してやる」

「いやいや、秘書ちゃんの行動の決定権は私にあるんですから、勝手に貸さないで下さい」

「煩い奴だ」

「秘書ちゃん回収しますよ?」

「……」


 死神様の秘書をしているミオは、死神様のお気に入りでもある。

 仕事は出来るし、死神様にも従順だから。

 とはいえメインの私には逆らえないから、私と死神様で意見が割れれば、私の味方になるけど。


「とりあえずミオを向こうに送って、相手方と話し合っておきます。状況はまた後日お知らせしますので、ハル姉さんはもう帰って頂いて構いませんよ。分かっておられるとは思いますが、女神様の領域に戻られるのでしたら発言には気を付けて下さいね?」

「はい。ではサク、行きましょうか」

「あ、はい!」

「ミオ、死神様、本当に申し訳ないです。ご助力に感謝します」

「気にするな」

「ではまた〜」


 ハル姉さんがゲートを開いてサクと共に帰るのを死神様と一緒に見送った。

 女神様の領域には既にミオを向かわせてあるし、ハル姉さんがこれ以上不利になる事はないはずだ。


「で、どうするつもりだ?」

「どうするも何も、ハル姉さんの意向に沿うだけだよ」

「ハルの闇堕ちの確率は?」

「本人があれだけ大丈夫って言ってるんだから大丈夫でしょ?」

「我は確率を聞いている」

「不確定要素が多過ぎるんだよ。リリーから恋愛感情を教えてもらってるからか、余計に計算出来ない。ただ、今回のを退ければもう邪魔されないという利点があるからね。本当に大丈夫だとは思う」

「いざという時はその彼氏とやらを連れて来るつもりか」

「まぁね」


 今回の1番早い解決法は武力行使だった。

 私達が神に匹敵する尊い存在である以上、権力を用いて再起不能にする事は可能だから。

 特に今回みたいな明らかにハル姉さんに有利な状況なんだったら、最初からなかった事にする事も出来る。

 でもハル姉さんは、そういう方法を望まない。

 そしてハル姉さんが望まない事は誰でも簡単に予想出来てしまう。


 となれば相手の訴え自体を否定し、こちらからも相手を訴え返すという戦い方になる。

 相手方も私達がそうすると思っていただろうから、そうなればハル姉さんが不利になるような風評をするつもりだったはずだ。

 でもハル姉さんは、その戦いすらも避けたいと……


 つまり今回は、ハル姉さんが訴えを受け入れた上で、ハル姉さんの行動の正当性を1つづつ釈明しなければならなくなった。

 これは実状ハル姉さんの拘束とも言える方法だ。

 圭さんとの時間を削ってでも戦わないというのは……正直以外だった。

 リリーから恋愛感情の強さを聞いていたからこそ、ハル姉さんは自分の風評を気にせず早々な解決を求めるだろうと思っていたのに、まさか迷惑な同僚までを大切な仲間だと言うとはな。


「現状で既に私の予想外の出来事が起こってる。だからもう、確率はあまり当てにはならないよ」

「確率が当てにならんのではないだろう? 単にお前がハルの気持ちを理解出来ないだけだ」

「ははっ、そーかもねー」

「お前はもう少し、仲間に頼るという事をしてはどうだ?」

「してるでしょ?」

「そうだな。今のは我が間違った」

「は?」

「お前はもう少し、仲間を増やすという事をしてはどうだ?」

「……そうだね」


 死神様には見抜かれているんだ。

 私には仲間と呼べる存在が殆どいない事を。

 それは、自他共に最強だと認められた私には、対等な存在なんていないからだ。


 自分が死神様の領域で働いていようと、共に死神様を支える者達を仲間だと思った事はない。

 だから余計に、ハル姉さんが自分を悪く言う奴等までを大切に思う気持ちが分からない。

 単にハル姉さんが優しすぎのお人よしだと思うだけだ。


「まぁ、何とかなるよ」

「無理はするな」

「分かってるよ~」


 仲間だと思っている相手にも頼ろうとはしないハル姉さんと、誰にでも頼るけど、その相手を仲間だとは思っていない私。

 一体どちらがより問題なんだろうな……?

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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