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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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外伝 ミオ視点 13

ミオ視点です。

 私達の協力者となった瑞樹圭に、闇堕ちについてを説明する。

 とはいえ、これは本来なら必要のない事だ。

 協力者になったからといって、この平和な世界にいる瑞樹圭に闇が危害を加える事はないし、ハル姉さんも瑞樹圭を向こうへと連れて行くつもりはないだろうから。


 でも、現状のハル姉さんに闇の種が埋め込まれてしまっている以上、瑞樹圭には闇堕ちを知っておいてもらった方がいい。

 最悪の可能性として、ハル姉さんが闇堕ちしてしまった場合、瑞樹圭には一番に逃げてもらう必要がある。

 動揺されて逃げ遅れるとか、パニックになられて場を乱されても困るし。


 それにこれまでの事例のように、闇堕ちした対象を救う事が出来るのなら、瑞樹圭は重要なキーカードにもなるからな。

 瑞樹圭を私達の事情に巻き込みたくないと思っているハル姉さんには悪いけど、闇堕ちについてを説明しないという選択は私にはないんだ。


「そもそも、どうなったらなる病気なんですか?」

「マイナスの感情を、自分で抑えきれなくなった時ですね。今回で言えば、大好きな圭さんに忘れられたショックで、自分の感情が押さえられなくなって、ハル姉さんが闇堕ちをしていた可能性がありました」


 まぁ正直私は、その可能性はほぼないと思っていたけど。

 リリーに言われてから考えた可能性だし、そのリリーでさえも闇堕ちするのはすぐじゃないと言っていた。

 家族達から自分の記憶を消しても、それで皆が幸せに暮らせるのならいいと考えられるハル姉さんなら、忘れられたショックでの闇堕ちなんて、そうそうするもんじゃない。


 でも今は、この理由が一番瑞樹圭に説明しやすいからな。

 適度にからかえるし、諸々都合がいい。


「だからハルさんから僕の存在を消して、僕に忘れられたというショックをなくそうとしていた、という事ですか?」

「そうです。それと、さっきの圭さんを試していたという話ですが、あれはもし圭さんがハル姉さんに対して、少しでも拒絶反応があった場合、ハル姉さんは圭さんに拒絶されたショックで、闇堕ちしていたかもしれませんよね? そういう事です」


『僕が後々に、ハルさんの仕事では人を殺す事もあるんだと聞いて、ハルさんを拒絶するかもしれないということを、ミオさんは懸念していたんだ。そのためにわざわざ"人殺し"なんていう嫌な言い方をして、僕の心にハルさんへ対する拒絶反応がどれだけあるかを、確認してくれていたという事か』


「その通りです。ご理解いただけたようですね。では、少し今さら感がありますが、圭さんの質問にお答えしましょうか。私が圭さんを応援した理由は……」

「ハルさんの闇堕ちを防ぎたかったから、ですね?」

「大正解! はなまるをあげましょう!」

「ありがとうございます」


『何故かはなまるをもらった。僕がさっき先生みたいって思ったからだろうか?』


「そうですよー。ふふっ」


 これで闇堕ちの話も出来たし、ハル姉さんに悲しい思いをさせないようにという忠告も出来たはずだ。

 冷静さを欠いているという事もなさそうだし、とりあえずは解決か?


「本当にミオさんは楽しそうですね」

「そうですか?」

「いつもそんな感じ何ですか? それとも、初対面の僕のために無理をしてくれてますか?」

「無理なんてしてませんよ。私はいつもこんな感じです」

「それなら良かったです」


『ミオさんが無理をしている訳ではないということも、もちろん良かったと思うけど、何よりこういう明るく楽しい人がハルさんの周りにいてくれる事を良かったと思う。ハルさん達の仕事はとても大変な事だし、色んな悩みも多いはずだ。辛い思いをしていないかが心配だったけど、大丈夫そうだ』


「辛いかと言われれば、それはもちろん辛い時もありますよ。楽しい時もあれば悲しい時もあります。仕事が上手くいくこともあれば、失敗することもあります。褒められることもありますし、もちろん怒られたりもしますね」

「僕等の日常と、そんなに違いはないんですね」

「そうですね。世界の浄化や管理、壮大な事を色々とやってはいますが、結局は他の世界とさして変わらない場所ですよ。上司、先輩、同僚、友達……色んな人達で協力し、支えあっているだけです。どこの世界でも似たようなものですね」


 瑞樹圭が私の心配をしだしたから、珍しくハル姉さん以外の存在に少しは興味を持ったのかと思ったけど、そうでもなかったな。

 結局はハル姉さんの心配に繋がる事柄なんだ。

 私みたいな()()()()()()がハル姉さんの近くにいる事を喜んでいただけなんだから。


「私、変わってますか?」

「あくまでも、僕からみたらですよ」


『つかみどころのない人というのは、こういう人の事をいうんだろうか?』


「私ほど単純明快な存在はいませんよ。私は、基本的に闇堕ちの事しか考えていません。それが私の仕事ですからね。圭さんとハル姉さんがお似合いだとか、圭さんが信用できるかどうかとかはニの次、三の次くらいにも考えていません」


『信用出来るかを考えていない? それはつまり……僕はまだ、ハルさんと共にいることを一旦認めてもらえただけで、ミオさんは僕を信用している訳ではないという事なんだから、僕の行動によってはハルさんと引き離される可能性が……』


「あはははっ! ここまで面白い人は久しぶりに見ましたね。今の私の言葉を、そういう風に捉えますか。流石はハル姉さんの彼氏さんですね!」


 今のは本当に脅すつもりはなかった。

 恋愛事情も信用問題もどうでもいいと思う程に、闇堕ちは重要なのだと分からせたかったんだけど、今のでまだハル姉さんと引き離される心配をするだなんて……本当に面白い。

 どこまでもハル姉さんの事ばかりなんだ。

 私には理解できないその思考は、アイツと似ていると思う。


「今の僕の思考、そんなに面白かったですか?」

「えぇ。認めてもらえたと浮かれるだけではないようで、なかなか興味深いです。"圭さん"ですね。覚えておきます」

「これだけ名前を呼んで下さっていたのに、覚えてくれてはいなかったんですね」

「まぁ言い訳になりますが、私は沢山の人と関わる事が多いので、人の名前をいちいち覚えないようにしてるんですよ。名前を呼ばないといけないような状況だったら、その人の心を読んだり記憶を覗き見たりして、その場凌ぎで呼べますからね。ちゃんと覚えるのは、本当に覚えようと思った人だけにしています」


『それなら、僕の名前はちゃんと覚えようと思ってくれたのか? まだ信用はしてもらえていないけど、名前は覚えてもらえたみたいだし、ハルさんと共にいていいと認めてはもらえたんだ。それは本当に嬉しい事だと思う』


「まぁ確かに信用云々はしていませんが、期待はしています。それと、私は本当に、圭さんがハル姉さんを思い出してくれて良かったなーって、思ってますからね。これからも頑張って下さいね」

「はい!」


 意図せずとはいえ脅してしまったからな。

 警戒はして欲しいけど、恐がって欲しい訳じゃない。

 今の発言で私がハル姉さんと瑞樹圭の現状を良いと思っている事は分かってくれたみたいだし、私からの期待も前向きに考えれているみたいだ。

 この様子なら特に問題はないだろうな。

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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