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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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外伝 ミオ視点 9

ミオ視点です。

 ハル姉さんが瑞樹圭に記憶を返し、晴れて恋人同士となった。

 その事を祝いつつ、瑞樹圭を見極める為に"心を読む力"も使っていたけど、私がハル姉さんの疑問に回答している間、瑞樹圭は私を冷静に分析していた。

 記憶を見た時に、物事の受け入れが早いのだという事は分かっていたけど、こうも早く私に対する疑問を持つとは……

 これは変に質問される前に、ハル姉さんには報告に行ってもらった方が良さそうだな。


「っと、それよりハル姉さん。報告、行かないとですよ」

「あぁ……」

「面倒で嫌な事は、早く終わらせた方がいいです。送るんで、早急に行って来て下さい。私は圭さんに自己紹介をしていますから」

「はい、じゃあお願いします。圭君、少し出掛けてきますね」

「えっと、はい。お気をつけて」


 ゲートを生み出して、ハル姉さんには向こうへと行ってもらう。

 何の疑いもなく通ってくれたし、彼氏と女を2人だけにして離れるという事を全く気にしていなかった。

 私に恋愛感情が存在しないから安心しているという様子でもなかったし、単に気にしていないだけなんんだろう。

 それだけ今の現状に浮かれていると……まぁいいか。


 分身体の私がハル姉さんの帰りの時間を調整してくれるだろうし、私は瑞樹圭を見極める事に集中しよう。


「それでは、改めて。はじめまして瑞樹圭さん。私はミオと言います」

「あ、は、はじめまし……て?」

「ふふっ、本当は微妙にはじめましてじゃないんですよ。分かりますか?」


 私に"はじめまして"という言葉を発する事に戸惑いがあるみたいだ。

 夢の記憶なんて然程残ってはいないだろうけど、思い出せるか?


「あのっ! もしかして、夢で応援してくれた人ですか?」

「はい。大正解です!」


 声や髪色で思い出したか。

 確かに私の青髪は特徴的ではあるけど。


「その節はありがとうございました。ミオさんのアドバイスのお陰で、僕はハルさんと共にいられるんですね」

「いえいえ、頑張ったのは圭さんですよ。あんなアドバイスだけで私達の力を打ち破ったんですからね。本当に凄い事です」


 これは私の本心だ。

 ただ、だからといって瑞樹圭を認めた訳じゃない。

 もちろん私達のような存在に恋人が出来る度に私が見極めている訳ではないけど、相手はあのハル姉さんなんだ。

 闇堕ちに繋がる可能性の芽は、早々に摘んでおかないといけない。


「ふふっ、まぁ普通はそんな事、出来ませんけどね」

「そうなんですか?」

「そんなアドバイス1つで簡単に破られる力、意味ないじゃないですか。だから本当なら破れなかったんですよ」

「それなら何で破れたんですか?」

「それはもちろん、圭さんのハル姉さんへの愛! じゃないですか!」

「そ、そうですか……」

「いえ、冗談です」

「あ、冗談ですか……」

「んー、まぁ圭さんの絶対に思い出すっていう意思の強さも、それなりには影響を与えたとは思いますよ。でもやっぱり、そういう事だけで破れるほど、私達の"力"というものは弱くありません」


 ハル姉さんへの愛を言及しても、冗談だと落胆させても、全然表情が変わらない。

 内心もほとんど動揺はしていないみたいだし、ずっと私の考察をしている。

 これは……そこそこに面白い人だ。


「あの、結局のところ、どうして僕は記憶消去の力を打ち破れたんですか?」

「それは、ハル姉さんの使った力が弱かったからですね」

「え?」


 お、これには動揺するんだな。

 ハル姉さん自身に弱い力を使った自覚がない事を知っているからこそ、ハル姉さんの心配をしているみたいだ。


「力が弱かったというのは、ハルさんが気づいていないうちに、ハルさんの力が弱くなっているとか、そういう危ない感じの事ですか?」

「圭さんは心配性ですね。大丈夫ですよ、別にハル姉さんの力の衰えとかではないですから。それに弱かったと言っても、普通に破られるような力ではありませんでした。ハル姉さん本人も気がついてないくらいの、本当に小さな綻びですからね」

「小さな綻び?」

「ガラスにとても小さいひびが入っているようなものです。光に照らしてやっと気づくような、そんな感じです」

「なるほど……」


 ハル姉さんに危険がないのだと分かって、胸を撫で下ろしている。

 さっきまであんなに無表情だったのに、ハル姉さん絡みの事となればここまで分かりやすくなるもんなんだな。


「力の衰えとかではないのなら、どうしてそんな小さなひびが入ってしまったんですか? それも、ハルさん本人が気づいていないだなんて……」

「まぁおそらくは、無意識下で力を制御してしまったんでしょうね。やっぱり圭さんに忘れられたくなくて」

「えっ……」

「つまりですね、圭さんが私達の力を破る事が出来たのは、圭さんのハル姉さんへの愛というよりも、ハル姉さんの圭さんへの愛って事になりますねー! ふふふっ、愛されてますね!」

「えっと、その……ありがとうございます」


 今度は表情はあまり変わっていないけど、内心で恥ずかしがっている。

 しかもハル姉さんが自分の記憶を消した際のハル姉さんの心境を考えて、心を痛めたかと思えば少し喜んで、更には私に対する疑問を抱き……忙しい人だな。


 物事の理解力が高く、処理速度が早いというのはよく分かった。

 こういう人材は協力者になってもらって、データ処理にあたってもらいたい。

 ハル姉さんの彼氏なんだし、ハル姉さんの補佐とかをやってくれるといいんだけど……いや、それは流石にハル姉さんか許さないか。

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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