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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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外伝 ミオ視点 5

ミオ視点です。

 リリーの話も考慮して、ハル姉さんが闇堕ちする確率は82.196%まで上昇させた。

 ただ、だからといってすぐという訳じゃない。

 あくまでもハル姉さんが一般人との関係を絶ってしまってからの問題だ、と思っていたんだけど……


「ご連絡ありがとうございます」


 ハル姉さんの世界の土地神様に渡した結晶に連絡があったので、仕事を早々に終わらせて来たけれど、案の定だ。

 ハル姉さんは一般人から記憶を消してしまったらしい……


「すまんのぉ、何も出来なんだ……」

「土地神様が責任を感じる必要はありませんよ。こうなる事は予測済みだったんですから」


 ハル姉さんは今、土地神様の社で寝ている。

 記憶消去等で力の使い過ぎて、気絶しているんだろう。

 そんなハル姉さんに寄り添う男性が1人いて、自分の上着をハル姉さんにかけてくれているみたいだ。


「あの人は?」

「見覚えのない人の子じゃな。じゃが、ハルちゃんを抱えてあの社に来てから、ずっとああしてハルちゃんについてくれておる」

「ハル姉さんが誰かを頼ったとは考え難いですが……ちょっと話してきます」


 土地神様の社へと瞬間移動して、


「こんばんは、素敵なオジサマ」


と、声をかけると、物凄く怖い顔で睨まれた。

 急に現れた私に驚くとかならまだ分かるけど、まさか無言で睨まれるとは思っていなかった。


「あんたは、神様って奴か?」

「いえ、神様ではありません。人でもありませんが」


 ハル姉さんがここの土地神様と知り合いだとでも話したんだろうか?

 私の登場に動揺する事もなしに、こんな質問をしてくるだなんて……というか、これは睨んでいるんじゃなくて、この人の素の顔みたいだな。

 一応心は読んでおく。


「状況を正しく把握したいので、あなたの記憶を見せて欲しいのですが?」

「……俺の記憶を消したり、捏造したりしねぇんなら、好きにしてくれ」

「ご協力に感謝します」


 記憶を見せてもらった結果として分かったのは、やっぱりハル姉さんは相変わらずだという事だけだった。

 この男性に自分の移動を頼んだのも、この人を信用して頼ったのではなく、この人を見極める為みたいだし。

 もしこの人が、ハル姉さんを拘束して実験動物にでもするような人だったらどうするんだ……


 まぁそれならそれで、起きてからこの人の記憶も消すってだけなんだろうな。

 結局は信じて頼るという事をしていないし、自分が傷付く事への躊躇いもない。

 私のように死んでも問題ない存在ではないのに。


「状況は把握しました。熊さんはもう帰っていいですよ。娘さんも心配している頃でしょうし」

「……俺はこいつに借りがあるんだ。よく分からねぇ存在に、こいつを託して去る訳にはいかねぇな」


 ずっとこの人の心も読んでいたけど、本当にただハル姉さんの心配をしているたけだった。

 ハル姉さんに助けてもらった恩に報いたいという気持ちもあるみたいだけど、それよりも単純に娘のように思っている感じがする。

 瑞樹圭という一般人との関係も、応援しているみたいで……何にしろ、今は邪魔だな。


「急に現れた私が信用出来ないというのは分かりますが、私は今こうして熊さんの自主性を重んじてあげているんですよ? これ以上ここにいても熊さんに出来る事なんて何も無いんですし、とっとと帰って下さい」

「ったく、変な奴には変な知り合いが出来るもんだな」

「それ、私と知り合いになってしまった熊さんも、変な奴って事になりますよ?」

「そうだな。お前がこれからも俺と知り合いでいてくれるってんなら、ここは引いてやるよ」

「物分りのいい子ですね」


 私が記憶に介入出来る事は分かったはずだ。

 その上で私に記憶を消されておらず、自主的に帰るようにと言われている。

 その意味が分からない訳ではないみたいで良かった。


「お前はハルの為に動くのか?」

「いいえ。ハル姉さんの為にも、瑞樹圭という者の為にも動きません。世界の為に動きます。ですから、熊さんの望む未来にならなかったとしても、恨まないで下さいね?」

「……ふっ、まあいいさ。俺は見守らせてもらうぞ」

「どうぞご自由に。ただ私の事は……」

「誰にも言わなきゃいいんだろ? ハルにも」

「いぐざくとりー!」

「変な奴。無理すんなよ」

「はーい! あ、上着も持って帰って下さーい」

「へいへい」


 ハル姉さんにかけていた上着を回収して、熊さんは社から出ていった。

 察しのいい人だったし、ハル姉さんが記憶を消してしまった瑞樹圭はまだ分からないけど、熊さんは協力者にしてもいいと思う。


「よかったのか? あの人の子の記憶を消さんで」

「彼の記憶を見させてもらいましたが、特に問題はないかと。それに、今後の為にもこの世界に協力者はいた方がいいですからね」

「それは、ハルちゃんが闇堕ちするという事か?」

「可能性がある以上、警戒はするべきです」

「……そうじゃな」


 熊さんがいなくなった事で、土地神様も社へと来てくれた。

 私の淡々とした態度に少し悲しそうな顔はしているけど、ハル姉さんが闇堕ちした場合の想定はしてくれているみたいだ。


「では、私は瑞樹圭なる者の事を調べてきますので、ハル姉さんをお願いします」

「うむ。儂もあの人の子と同じ、見守る事しか出来ん。そしてミオちゃん、君がこの問題に介入出来ない立場である事も分かっておる。それでも、ハルちゃんの笑顔に繋がる未来となる事を願っておるよ」

「私もです」


 本当はハル姉さんの記憶を確認させてもらいたいんだけど、そんな事をすれば流石にハル姉さんに気付かれる。

 そうなれば、()()()()()()の為に何故私が動いたのかという話になり、ハル姉さんに闇の種の話もしないといけなくなってしまう。


 "たかが恋愛事"、か……

 リリーから恋心の複雑さを教えてもらおうと、これから瑞樹圭の記憶を確認しようと、私が恋愛感情を理解する事はない。

 そんな私がこの問題に対応していていいんだろうか?

 本当にハル姉さんの笑顔に繋がる結果を導き出せるのか?


 恋愛感情を持っている本体だったら、どうしていたんだろうな……

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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