兄妹
ハルさん視点です。
圭君にフィナンシェの作り方を教えてもらって、完成しました!
焼きたてと時間がたったのとで食感が違うとか、ビックリですね。
「フィナンシェも奥が深いんですね」
「そうですね。フィナンシェに限らず、料理って全部奥深いものですよ」
「そうですね。色々試せて楽しいですね!」
「はい」
それにしても、圭君って料理に万能過ぎますよね。
1人暮らしで、勉強と料理くらいしかやることがなかったと前におっしゃってましたが、お菓子は別に作らなくてもよかったはずですよね?
なんでこんなに詳しいんでしょうか?
「圭君はどうしてそんなにお菓子に詳しいんですか?」
「あぁ僕、妹がいるんですけど、妹の将来の夢が洋菓子屋さんになる事でして……昔からよく一緒にお菓子とか作ったり、調べたりしたんですよ」
「なるほど~、圭君は妹さんがいるんですね」
なんというか、圭君の面倒見の良さに納得がいきました。
きっと妹さんにとっても、優しい素敵なお兄さんなんでしょうね。
微笑ましいですね。
優しいお兄さん、ですか……
「ハルさんは、兄弟とかいるんですか?」
「えっ……あ、いえ、私には家族とかはいませんので……」
「え? あの……」
「あ、気にしないで下さいね」
変な話をして空気を悪くしてしまいましたね……
私なんかの事より、圭君の家族の話とかをもっと聞きましょう!
そうしたら、まだ知らなかった圭君の事もたくさん知れますからね!
「えっと、圭君の妹さんは、お名前何て言うんですか?」
「え? あ、珠鈴ですよ」
「珠鈴ちゃんですか? 可愛いお名前ですね」
「ありがとうございます」
「圭君は妹さんと仲が良いんですね」
「両親が忙しくて、子供の頃から妹の世話を任されてましたからね」
「そうなんですね。でも仲が良かったなら、圭君が1人暮らしするってなった時、妹さん反対したんじゃないですか?」
「そうでもなかったですよ? 僕が今度から遠くの学校行って、1人暮らしすることにしたからって言ったら、頑張ってねって言ってくれたぐらいですよ」
それは意外ですね。
もっと、行かないでーってなったのかと思ってました。
そういえば圭君は何故地元を離れて、こんなに都心の危ない町で1人暮らしをしているんでしょうか?
こっちの高校に入るために田舎から出てきたとのことでしたが、圭君には何かやりたい夢とかがあった訳ではないはずですよね?
「圭君はなんでこっちで1人暮らし始めようと思ったんですか?」
「えっ? えーっと……」
「あ! ごめんなさい……答えにくい事を聞いてしまいました? その、無理に答えなくても良いですからね」
気がついたら、圭君を質問攻めにしてしまってましたね。
自分は何も話してないのに、圭君の家族のことばかり聞くなんて、とんだ失礼をしてしまいました。
「あ、いえ……別に答えにくい訳では……えっと、僕はずっと両親というか、瑞樹家に甘えて生きてきたので、こういう誰も僕を知らない場所でちゃんと自立したいと思って……」
「圭君はしっかりしてますね」
すごいですね。
まだ若いのに、ちゃんと自立したいなんて。
「いえ、結局しっかりしてなかったから、こっちに来ても友人できなかったし、受験も落ちたし……」
あれあれ? これは久しぶりに見るネガティブ圭君ですね。
なんか少し懐かしいです。
「友人ならできたじゃないですか!」
「え?」
「私が圭君の友人ではダメですか?」
「いえ、そんな……とんでもないです。ありがとうございます」
「それに受験はきっと次、受かりますよ。大丈夫です!」
「はい。ありがとうございます」
良かったです。
前ほどのネガティブ圭君ではありませんでした。
「友人、ですよね……」
ん? 今、圭君が何か呟いた気がしたのですが、よく聞こえませんでした。
「どうしました?」
「あ、いえ……何でもないですよ」
なんでしょうか?
どことなく圭君が元気無いように見えますが……
「あぁ、そういえばハルさん。今度のこの日、僕バイトの昼勤を頼まれてまして、いつもの時間には家にいないです」
「そうなんですか?」
えっと……なんか急に話が変わりましたね。
まぁでもあまり詮索して圭君の気を悪くしたくないですし、丁度良かったです。
「でも昼勤は2時間だけで、終わったら一度帰ってきてからまた夜勤に行く予定ですので……」
「そういうことでしたら、私は夕方くらいに来ますね。大丈夫ですか?」
「はい、もちろんです。ありがとうございます」
昼勤ですか……
圭君も色々と大変ですね。
「あ、大分長居してしまいましたね。そろそろお暇します」
「今日もありがとうございました。また明日」
「はい、圭君もバイト頑張って下さいね」
今日は圭君の家族の話とか聞けて、圭君の事をよく知れて嬉しかったです。
また、圭君のご迷惑にならない範囲で教えてほしいですね。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




