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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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外伝 ミオ視点 1

ミオ視点です。

「あ、ミオ様! いいところに」


 仕事に一段落つけて報告へと来ると、見覚えのない人に声をかけられた。


『情報共有』


 ……該当なし


 私の記憶に存在していないだけの知り合いかと思ったけど、そうでもないみたい。

 どのミオも知らないんだから。


「私に何かご用ですか?」

「実はここ最近、ハル様と連絡がとれないのです」

「ハル姉さんが?」

「はい、もう3ヶ月以上になりますね。あ、ハル様の世界時間だと1週間くらいですが……」

「確かに連絡がない期間にしては、少し長すぎですね」

「なので心配で……」


 ハル姉さんの心配か。


『記憶閲覧』『検索』


 ……ハル姉さんと一緒にいるところを何度か目撃してる。

 98.765%でハル姉さんの部下だ。


「それは心配ですね。すぐに確認に行くと言いたいのですが、私もこの報告が終わったら急ぎで次の世界に向かわないといけなくて……」

「そう、ですよね……お忙しいところで申し訳ありません」

「でもやっぱり、ハル姉さんに何かあったとかなら早く助けに行った方がいいですし、ちょっと行ってきます」

「いいんですかっ!?」

「いや、あんまり良くはないですね……」


 一応ハル姉さんの世界の確認をしたミオからの連絡で、特に世界に問題が起きていないのは分かってる。

 となればおそらく、力の使い過ぎ等でこちらに来られなくなっているんだろう。

 ハル姉さんは元々連絡端末も持ち歩かないし……


 とはいえあのハル姉さんだからな……

 "闇の種"はまだ芽さえ出ていない状態ではあるけど、力を使い過ぎて弱っているところなんて、恰好の栄養源になってしまう。


 ハル姉さんの確認に向かうべきなんだろうけど、こっちのを後回しにすると後々面倒な事になる。

 どうしたものか……

 いや、この考えてる時間が無駄だ。

 まずはハル姉さんの様子だけ把握して……


「ミーオー!」

「リリー! 最高!」

「なになに? どした?」

「私行くとこあるから、この報告もお願いする」

「お、いきなりだね。りょーかーい。行ってらっしゃい」


 タイミングよくリリーが来てくれた。

 リリーにならこの報告も任せられる。


「ミオ様、よろしくお願いします」


 ハル姉さんの部下が深々と頭を下げているのを視界の端に入れながら、ハル姉さんの世界へと移動してきた。


「ミオ、久しぶりです」


 移動してすぐに聞こえたハル姉さんの声。

 力の安定を確認、身体も問題なし。

 視覚情報では無事みたいだ。


「ハル姉さん、心配しましたよ。ずっとなんの連絡も無いとの事だったので、何かあったのかと思って来ちゃいました」

「ごめんなさい。ちょっと怪我をしてしまいまして、なかなか帰って来られなかったので、連絡もできなかったんですよ」

「も~、だから前から連絡手段を持ち歩くように言ってるじゃないですか。呼んでもらえばすぐ治しに行ったのに……」

「ありがとうございます」


 治癒の力をハル姉さんの全身にかけた。

 足に立っていると痛いくらいの怪我がある……現状でこの度合いなら、1週間前は相当な深手だ。

 傷の形からして、猫状態の時に銃で撃たれたのか?

 でもあの身のこなしのハル姉さんが撃たれるなんて……


 余程狭く、逃げ場のないような所で撃たれたのか?

 それとも闇の種の影響で、身体に異常が起きているのか……?


 ハル姉さんはただでさえ誰かに頼るという事をしないんだから、もう少し注視していた方がいいな。


「この怪我……随分と深手だったみたいですね?」

「そんな事はないですよ?」

「歩くのに支障がある怪我は重傷と言うんですよ。帰って来られなかった間、ずっとどこに居たんですか? 動けなくてその辺で倒れてた、とかじゃないですよね?」

「心配かけて、本当にごめんなさい。でも心優しい人に助けてもらって、少しの間住まわせてもらっていたので」

「え、一般人に助けられたんですか? 諸々、大丈夫ですか?」

「大丈夫ですよ。そこまでミオに迷惑はかけられませんから。自分で蒔いた種ですし、自分で解決します」


 助けてくれた人がいたのか……良かった。

 ただ、その一般人との関わりは消さないといけない。

 闇の種の事もあるし、ハル姉さんにはあまり力を消費して欲しくないんだけど、本人がこう言ってるのに私が出しゃばるというのもおかしな話だから……ん? ハル姉さんが胸を押さえながら神妙な顔をしている?


「ハル姉さん? どうされました? 大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫です……ただ、最近ちょっと胸の辺りに違和感を感じる時があって……でも別に病気とかでは無いので、というか病気ならさっきのミオの治癒で治っているはずですからね」


 胸に違和感だなんて……

 私の治癒で治らない事で、胸に違和感といった症状の出るものは、"恋"しかないんだけど。


「ん~と、ハル姉さん。ちなみになんですが、その助けてくれた一般人は、素敵な男性でした?」

「はい? そうですね、とても親切な青年でしたよ? それがどうかしましたか?」

「いえ、少し気になって……」


 親切な青年ね……

 そんな嬉しそうに語っちゃってまぁ……


 ハル姉さんはその一般人を好きになりかけているんだ。

 それなのに記憶を消すつもりだなんて、勿体ない。

 とはいえ、下手に親密になってから消すよりはずっといい。

 精神への影響も少ないから。


 でもなぁ、折角ハル姉さんに芽生えた恋心なのに……


「ミオ。心配してもらえるのはありがたいのですが、本当に大丈夫です。あの青年は敵ではありませんよ」

「それは……まぁ、ハル姉さんがそう仰られるのでしたら、気にしないでおきます。ただ、もしその違和感が今以上に大きくなるようでしたら、いつでもご相談下さいね?」

「ありがとうございます」


 敵じゃないって、そんな心配はしてないんだけど。

 本当に鈍感なんだから、困ったもんだ。


「とにかくハル姉さんが無事でよかったです。でももう無理をしないように!」

「はい。あ、それとミオ。今度でいいので、私に治癒の力の使い方を教えてくれませんか?」

「それは構いませんが……ハル姉さん、前に私が薦めた時、自然治癒があるからいいって言ってませんでした? 今後またそんな大怪我をする予定がおありで?」

「大怪我をする予定は無いのですが、出来る限り迷惑はかけたくないですからね」


 自分を守る為にも治癒の力は覚えてほしかったから、丁度いいと言えばいいんだけど……

 これまで以上に無理をしそうでもあるからな。

 教えるついでに、気付かれない程度にハル姉さんの結界を強固にしておこう。


「分かりました、ではまた声をおかけしますね。とりあえずは一緒に報告に行きましょう! 私も色々と放置してきちゃってるので、そろそろ戻らないと……」

「それはそれは、すぐに行きます!」

「では繋げますね」


 ハル姉さんと一緒に戻ってきてすぐに、


「ハル様〜! 心配しましたよ〜!」


と、ハル姉さんの部下が、涙ながらに駆け寄ってきた。


「ごめんなさい。女神様のご様子は?」

「説教1週間は覚悟した方がいいです」

「ですよね……」

「あっ! ミオ様! リリーさんから伝言で、ミオ様の次のお仕事に先に向かっているとの事です」

「分かりました。では、失礼しますね」


 報告も終えてくれた上に、次の仕事にも協力してくれるだなんて、リリーには本当に感謝だ。


「あ、ミオー!」

「リリー、ごめんね?」

「いいって」

「ありがと、今度埋め合わせするから」

「楽しみにしておく」


 ハル姉さんの件もこれで一旦は解決したし、目先の仕事を片付けるとしよう。

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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