恥ずかしさ
圭君視点です。
「はい、ハル姉! 誕生日プレゼント!」
「ありがとうございます! これは……可愛いですね!」
「ハル姉がペンギンが好きって聞いたからね! これをお兄ちゃんだと思って、毎日抱き締めて寝るといいよ!」
「そ、それは……」
「珠鈴?」
「はーい、ごめんなさーい! ハル姉はまだお兄ちゃんを抱き締めて寝たりとかしてないもんねー」
「珠鈴!」
「わー」
遙花へのプレゼント渡しが始まって、珠鈴が一番に大きなペンギンのクッションをプレゼントしていた。
珠鈴にからかわれたせいで照れている遙花も可愛い。
僕も恥ずかしかったので、母さんに怒られている珠鈴を助ける気はないけど。
「遙花ちゃん、私達からはこれよ」
「お前は育てるのも好きなのだろう? 自分で育てた野菜というのは、また格別なものだ」
「ありがとうございます! お祖父様! お祖母様!」
じいちゃんとばあちゃんは、野菜の種とプランターをプレゼントしていた。
それも結構大きめのプランターだ。
今はじいちゃんの秘書の人が持ってくれているけど、どうやって持って帰ってもらうつもりなんだろう?
やっぱ人を使って家に届けさせるつもりなのか……?
「送り先は、天沢家にするか? それとも圭が一人暮らしをしている方の家か?」
「えっ、えっと……」
「圭と2人で育てた方が楽しいでしょうし、圭の家の方がいいんじゃない?」
「そ、そうですね、お願いします……」
遙花、また照れてるな。
まぁ僕も照れてるんだけど。
でもこれは遙花がこれからも僕の家に来てくれるという事だから、じいちゃんとばあちゃんに感謝だ。
「遙花ちゃん、珠鈴がごめんなさいね?」
「いえ、大丈夫ですよ」
「俺達からはこれだ。圭と一緒に使ってくれ」
「わぁ! お菓子作りに使う道具ですね! ありがとうございます!」
父さんと母さんはマドレーヌ型やシフォンケーキ型、タルトストーンとかのちょっと専門的な道具をくれた。
そういえば前にないから代用してるって話をしたな……覚えていてくれたんだ。
「俺からはこれをやるよ」
「あ、ありがとうございます。これは……?」
「十手」
「何故?」
「防犯用だ。とりあえずそれを持っとけば、変な奴は近寄って来ないだろ」
「私が変な奴として捕まりません?」
「捕まった時は俺が釈放してやるよ」
「……」
「なんだ、どうした?」
「……いえ、とりあえずありがとうございます」
「おう」
熊谷さんは何故か武器をプレゼントしていたけど、確かにあれを持っていれば安全だろう。
遙花は元々強いとはいえ、その強さに頼ってほしくはないし。
「もー、お父さんはセンスがないから。はい、遙花ちゃん! 私からはコレ!」
「コスメセット?」
「遙花ちゃんの美貌なら必要ないかもだけど、メイクも結構楽しいもんだよ?」
「恵美は絵を描くのが好きだからな。余計にそう思うんだろ」
「それもあるかもー」
「ありがとうございます! でもちょっとよく分からないので、今度使い方を教えて下さいね?」
「わー、ありがとう!」
「え? お礼を言うのは私の方ですよ?」
「遙花。恵美は今、遙花の顔で遊ぶ大義名分を得たんだ」
「ちょっと涼真ー? でもまぁ、その通りかもね!」
恵美さんは相変わらずの明るさだな。
遙花の新たな一面が見られるという事でもあるから、僕も楽しみだ。
「僕からはポーチだよ。遙花は鞄は使わないって言ってたけど、ミオさんも言ってた通り、携帯は持ち歩いた方がいいよ。僕からの連絡はもちろんだし、お義父さんやお義母さん、涼兄からの連絡も来るんだから」
「そうですね。今後はこのポーチで持ち歩かせていただきますね!」
プレゼントを渡し終えてからは、また皆と楽しく話しあって、遂に食事の時間になった。
「サラダにお花が? えっ、このお花食べられるんですか!」
「このスープ、キャベツの甘みを凄く感じます! ん? 濃縮技術……ですか? えっと、凄いですね!」
「このお肉も柔らかくて、ベリーのソースと合いますね! 初めて食べる味で、ビックリです!」
今日の為にとじいちゃんが用意してくれたフルコースを、遙花はずっと楽しそうに食べている。
食事前にたくさん遙花と話した事が功を奏したのか、食事中はじいちゃんもこっちに来なかったし、僕は遙花と落ち着いて食事をする事が出来た。
本当に最高の時間だ。
「これから来るケーキは、僕のアイデアも少し入れてもらったんだよ」
「楽しみです! あ、来ました!」
運ばれて来たケーキは、淡いピンク色のクリームが使われた、桜の飾りがついたケーキだ。
桜の飾りは、菓子職人の方がメレンゲで作ってくれたもので、僕が想像していたよりも凄く可愛らしい。
流石はプロの職人さん達だ。
「え、え……こんなに可愛いの、食べるのが勿体ないですよ」
「遙花の為に作ってもらったんだし、食べてもらわないと……はい、どうぞ?」
「……じ、自分で食べれますよっ!」
「えー、食べさせてあげたかったんだけど?」
「恥ずかしいので……」
「皆運ばれてきたケーキに夢中で、全然こっちを見てないから」
「……た、確かに?」
「だからほら、ね?」
「……」
僕が自分のケーキをフォークで少し切って遙花の口の前に差し出すと、遙花は顔を真っ赤にしながら食べてくれた。
食べさせ合いをしているカップルが、何故そんな事をしているのかが分かった気がする。
こんなに可愛いんだから、ずっとやってたくなっちゃうな……
「圭、どうぞ?」
「……僕は食べさせてあげたいのであって、食べさせてもらいたい訳じゃ……」
「ど、う、ぞ!」
「いただきます……」
やり返されてしまったとはいえ、これもこれで遙花が可愛い。
自分からやり返しておいて、恥ずかしさで俯いてしまっているところとか、本当に可愛いと思う。
そして、今のが皆に見られていたという事には、気付いていない振りをしておく。
僕も相応に恥ずかしいから。
でも僕は、今この程度の事を恥ずかしがっている場合じゃない。
僕はこれから、もっと大切な事を遙花に言わないといけないんだから!
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




