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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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出来立ての味

圭君視点です。

 ハルさんはとても楽しそうにフィナンシェを作っている。


「砂糖が混ざったら、さっきふるった粉を入れて下さい」

「これは混ぜすぎない方がいいんですよね?」

「そうですね。完全に混ざりきってなくても大丈夫ですよ」

「混ぜすぎると、グルテンができちゃいます?」

「そうですね」


 料理をしたことがなくても、料理に利用されている化学反応とか、成分とか、そういう知識はあるみたいだ。

 だからクッキー作った時も、初めてだったのに理解が早かったんだろうな。


「粉っぽさがなくなったら、さっきの焦がしバターを入れて混ぜます。バターの温度は熱すぎるのはよくないんですが、冷ましすぎも固まってしまうので、50℃くらいを目安にしてもらえれば大丈夫ですよ」

「なかなか難しいですね……」


 元々知識があるのか、クッキーを作った時の応用からなのか、器用にこなしていくハルさん。

 これなら、次からはハルさん1人でも作れそうだ。


「混ざったらすぐに型に流していきます」

「クッキーの時みたいに、生地を休ませたりしないんですか?」

「フィナンシェの場合は、生地を休ませてしまうと乳化が壊れて分離してしまうので、休ませませんよ」

「同じ焼菓子でも色んな違いがあるんですね」


 時折質問してきてくれるので、お菓子を作ってる時間は普段の勉強を教えてもらっている時とは逆で、僕がハルさんの先生をしている感じだ。

 これはこれで、なんか新鮮。


「あとは焼き上がるのを待つだけですね」

「じゃあ私は片付けをしておくので、圭君は勉強頑張って下さいね」

「はい、ありがとうございます。お願いします」


 ハルさんはいつも通り、浄化の力でキッチンを片付けている。

 前にそんなに力は使わないって言っていたけど、毎日使っていて大丈夫なんだろうか?

 そういう事を僕が聞いてもいいのかな……?


 というか、そもそもなんでハルさんは浄化の力なんて使えるんだろう?

 それを言い出したら、なんで猫とか鳥になれるのかって事も考えないと……


 こういう事を考えてしまうと、さっきまでは一緒にお菓子を作ったりして、距離も近くに感じていたのに、ハルさんが凄く離れたところにいる人のような気がして、なんか……


「圭君、できましたよ!」

「えっ……」


 考え事したらフィナンシェが完成していた。

 全然勉強が進んでいない……


 フィナンシェ型がなくて、一口大の焼き菓子用の型で作ったので、一口で食べれるくらいの大きさで、形としては金塊感は無い。

 でも焼き上がったフィナンシェは、全部綺麗に焼けていて美味しそうだ。


「あ、折角なんで出来立てのフィナンシェ、食べてみて下さい」

「え? 出来立てですか?」

「はい、是非すぐに」

「じゃあ、いただきます」


 出来立てとの差を比べてほしかったので、ハルさんに勧めてみたら、ハルさんはフィナンシェを1つ手に取り、一口で食べた。

 一口大で食べやすい感じだし、これはこれで良かったのかもしれない。


「お~! これはこの間のとは全然違いますね! 外はカリッとしているのに、中はふわっとしてるんですね!」

「そうなんですよ。焼き菓子の中でもフィナンシェは、特に出来立てと、出来てから時間がたったのとの差が大きいんですよ」

「時間がたつとこの間みたいに、外はサクッと中はしっとりって感じになるんですか?」

「そうですね、どっちが好きですか?」

「ん~、どっちも好きです!」


 ハルさんは凄く美味しそうに食べている。

 こういう作ってみないと分からない違いとかも、料理の楽しさだと思うし、味の違いとかにもっと興味をもってもらいたい。

 ハルさんももっと自分から、食べることに積極的になってくれるといいんだけど……


「圭君はどっちが好きなんですか?」

「僕は時間がたって、しっとりとした方が好きですかね。でも出来立ては作った時しか食べられないので、今しか食べれないという限定感があって、食べたくなりますよね」

「はい、どうぞ」

「えっ?」


 ハルさんはもう1つフィナンシェを手に取ると、急にそれを僕の口元に持ってきた。


「ほらほら、口開けて下さい。限定感がなくなっちゃいますよ」

「えっと……自分で食べれますよ?」

「いえいえ、もう口開けるだけですよ」

「じゃ、じゃあ……いただきます」


 なんか急に食べされられてしまった。


「どうですか?」

「美味しいです。ありがとうございます」


 ハルさんは楽しそうに笑ってるけど、僕はなんか凄く恥ずかしい。

 でも急に何でだろう?

 あ、僕が食べたくなるっていったからか……


「じゃあ、明日はフィナンシェを色々とアレンジしてみますね!」

「そうですね。紅茶とかも合いますよ」

「紅茶! いいですね。紅茶好きな友人にあげたいです」

「合いそうな物、色々用意しておきますね」

「ありがとうございます」


 クッキーやフィナンシェみたいな焼き菓子は、もう自分でアレンジ出来るだろう。

 フィナンシェのアレンジ系を一通り作ったら、次は何を作ってもらおうか?

 色んなものに興味をもってもらいたいし、次は冷やして作る系のお菓子とか、作ってもらうといいかもしれない。

 ムースとかが丁度いいかな。


 なんか、こうやって一緒にお菓子作ったり、次に作るの考えたりとか、懐かしいな。

 珠鈴(すず)も元気にしてるかな……


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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