知らない家
ハルさん視点です。
ん~? 何か暖かい……
目を覚ますと、見覚えのない天井。
肌触りのいいブランケットを枕にして、寝ていたようです。
薄手の布団がかけてありますし、体が暖かいです。
寝起きだからでしょうか?
何か頭がふらふらしますね。
辺りを見渡してみても、知らない部屋ですし……ここは何処でしょうか?
「あぁ、気がつきましたか? 気分はどうですか?」
……どちら様でしょうか?
初対面の好青年に話しかけられました。
「僕の名前は瑞樹圭です、あなたの名前は何ですか?」
「ハルです……」
思わず答えてしまいました……
「とりあえず食べやすい物の方がいいかと思って、野菜のスープを作りました。どうぞ」
「ありがとう、ございます? あっ、美味しいです!」
「お口に合ってよかったです。本当は魚とかも入れたかったんですけど、今はツナ缶すら無くて、申し訳ないです」
状況がよく分かりませんが温かいスープを貰いました。
人参や玉ねぎ等が細かく刻んであって、とても食べやすいスープです。
しかもかなり美味しいです!
知らない人から貰ったものを迂闊に食べるのは、良くないですよね……
美味しそうないい匂いだったのと、私が野菜好きというのが相まって、すぐに食べちゃいましたけど。
ん? というか今、よく分からない事を言われましたよね?
魚が無くて申し訳ない? 何故?
「僕、あまり猫に詳しくなくて、やっぱり魚が好きですか? それともこっちの方が良かったですか?」
「ね、こ……?」
キャットフードを見せられながら言われた"猫"発言。
まるで私の事を猫だと言っているみたいですね?
はっきりと思い出した訳ではないのですが、何となくの状況は理解しました。
つまり、見られた……と?
「あの……猫というのは、私の事でしょうか?」
「そうですね、ビックリしましたよ。猫が人になったので」
あまりビックリしていないように見えますが……
感情が顔に出ないタイプの方なんでしょうか?
う~ん? 頭が痛くて思い出せないのですが、私が猫に化けている時に拾われてしまったのでしょうか?
「体は大丈夫ですか? 足は一応手当てをしましたけど、他に痛い所とかはないですか?」
「足?」
足を見ると、とても綺麗に包帯が巻いてありました。
それに、さっきまではなんとも思わなかったのに、少し足を動かしただけで滅茶苦茶痛いです。
怪我に気がつくと痛くなる、と言う奴ですかね?
そもそも私は、何故足を怪我したんでしたっけ……?
「あっ!」
そうです! 撃たれたんです!
あの猫嫌いっぽい人に!
段々と思い出してきました……
「どうしました? 大丈夫ですか?」
私が急に大きな声をあげてしまったので、驚かせてしまいましたね。
あまり驚いているようには見えませんが……
「ごめんなさい、手当てをして下さったんですね。ありがとうございます」
「いえいえ、お気になさらず」
「こんなに美味しいスープまで貰ってしまって大変申し訳ない限りなのですが、お礼には後日参りますので帰ります!」
私はここで美味しいスープを頂いている場合じゃありませんでした。
早く帰って警察に連絡しないと……
「んっ……」
私は立ってすぐに帰ろうとしたのですが、踏み出した足が思いの外痛くて、よろけてしまいました。
情けない限りです……
「大丈夫ですか? 急に動いたら危ないですよ」
「で、でも、早く帰らないと……」
「何か、早く帰らないといけない用事があるんですか?」
「……急いで電話を掛けなきゃいけないんです……でも電話が家にあって……」
「電話? どうぞ、使って下さい」
そう言って携帯を渡してくれました。
本当に優しい人ですね。
でもこの携帯じゃダメなんですよ……
「あの、お気持ちは大変ありがたいのですが、この携帯だと足がついてしまいますので……」
思わずそう言ってしまいましたが、この台詞だと私が悪事に手を染めてるみたいですよね……
読んでいただきありがとうございます(*^^*)