年齢
ハルさん視点です。
「お邪魔しまーす!」
「いらっしゃい、珠鈴ちゃん。よく来てくれたわね」
「圭君の妹は僕達にとっても娘だ。遠慮せず、寛いでね」
「ありがとうございます!」
お昼が過ぎた頃、圭が駅まで迎えにいって、珠鈴ちゃんを連れてきてくれました。
持ち前の明るさでお母さんとお父さんに挨拶をした珠鈴ちゃんは、本当に嬉しそうに笑っています。
「おー、珠鈴。よろしくな」
「涼兄! めっちゃイケメン!」
「よく言われるぜ」
「だろうね! まぁでもハル姉のお兄さんだもんね。イケメンで当たり前か」
「珠鈴も可愛いぞ」
「ありがとー!」
昨日電話で少し話しただけのはずですが、涼真兄さんと珠鈴ちゃんは既に仲良しです。
珠鈴ちゃんの頭を優しく撫でている涼真兄さんは、2人目の妹が出来た事をとても喜んでいるみたいです。
「珠鈴、あまりはしゃぎ過ぎないよう……」
「はしゃいじゃうのは仕方ないでしょ? もう少しは騒がせて!」
「開き直ってるな……」
「まぁねー」
「圭君、いいんだよ?」
「そうだぞ、圭。お前ももっと騒げ」
「僕はその……昨日たくさん騒いだから」
「あんなのは騒いだうちに入らねぇよ」
楽しそうに話しながらリビングに入ってきた珠鈴ちゃんは、
「わぁー! 凄い絵!」
と、家族の絵に見入っていました。
やっぱりあそこに飾ってもらって良かったです。
今まで私だけが勇気をもらっていましたが、この絵はもっとたくさんの人に見てもらうべき絵ですからね。
「ハール姉っ!」
「え? はい、なんですか?」
「もう絶対に、変な勘違いをしたらダメだからね?」
「はい……」
「何かに悩んだら即相談!」
「はい」
「りぴーとあふたーみー! 悩んだら相談!」
「悩んだら相談」
「1人で解決しようとしない!」
「1人で解決しようとしない」
「自分を大切にする!」
「自分を大切にする」
「強いからって過信しない!」
「してませ……」
「してるからっ!」
それからも珠鈴ちゃんに続いていくつもの公約を言わされました。
誰も止めてくれなかったというのは、皆も珠鈴ちゃんと同じ思いだからなんでしょうね。
私はまだまだ反省する事が多いみたいです……
「そういえばさ、ハル姉って何歳?」
「え?」
「自分の歳が分からないって言ってたよね? 今なら分かるでしょ? 何歳?」
「えっと……」
「遙花は今、21歳よ。来月の誕生日で、22歳になるわ」
「そうだったんですね」
あまり気にしていなかったので、珠鈴ちゃんからの質問に答えられませんでしたが、お母さんが私の歳を教えてくれました。
私はもうすぐ22歳になるみたいです。
ということは、圭とは3歳差だったんですね。
「22歳っ! それなら"にゃんにゃん"だね! ハル姉、アレやって!」
「あぁ、アレですか? 恥ずかしいですよ……」
「でも折角のにゃんにゃん歳なんだよ? やらないと勿体ないよ!」
「うぅ……ですが」
「珠鈴は遙花に何をやらせようとしてんだ?」
「ハル姉がめっちゃ可愛い事!」
「それは気になるな」
「どんなのかしらね?」
「圭君は知ってるのかい?」
「はい。でも遙花の特別な力を使う事なので、やらなくても……」
「いえっ! この程度は力を使ったうちにも入りません」
「本当に?」
「本当です!」
「それなら、やってやって〜」
「……分かりました」
かなり恥ずかしいのですが、皆が見たいと思ってくれているのなら、私の羞恥心なんて二の次です!
「眩しいと思うので、目は閉じていて下さいね?」
皆が目を閉じてくれたのを確認してから、化ける力を使います。
以前珠鈴ちゃんに頼まれてやった事のある"化け猫"へと……
「あの、もう大丈夫ですよ」
「ん? これは……」
「ね? ねっ! 可愛いでしょ? 化け猫ハル姉!」
「可愛いな」
「可愛いわね、あら? 尻尾もあるの? 耳はどうなってるの?」
「えっと、耳はこっちになってて、聴覚も猫の状態ですね。尻尾は、うっ……あ、あまり触らないで下さい。くすぐったいです……」
「神経も通ってるんだね」
「はい」
お父さん達の前で何かに化けたりという事は、あまりしていませんでしたからね。
こうして化けた姿を喜んでもらえるのなら、これからも定期的にやっていこうと思います。
この力は、私らしさでもあるんですから。
「ほらほら、ハル姉? 挨拶して〜」
「挨拶?」
私が首を傾げると、珠鈴ちゃんが耳打ちして教えてくれました。
かなり恥ずかしいのですが、これも皆に喜んでもらうためです!
「よ、よろしくにゃん……」
珠鈴ちゃんに言われた通りに手を招き猫のように曲げながら挨拶すると、
「ダメだ、遙花。それは可愛い過ぎる」
と、涼真兄さんに抱き締められてしまいました。
「あーあ、涼兄に先を越されちゃったね? お兄ちゃん」
「う、うん……」
涼真兄さんは私を抱き締めながら頭を撫でてくれていて、圭に得意げな顔を向けています。
そんな涼真兄さんを圭は羨ましげに見ていて、お父さんとお母さんも笑っていて……
カチャ……
ん? 玄関の方から物音が?
ドアが開いて誰かが入ってきたみたいですが、忍び足にしているようで足音が微かにしか聞こえません。
私が今猫の聴覚だから聞こえるのでしょうが……って、考えている場合じゃないですよね!
謎の不法侵入者なんですから!
「りょ、涼真、兄さん……」
すぐに声を発したかったのですが、涼真兄さんに結構キツめに抱き締められていたのですぐには声が出せなくて……
ガチャ
「こんにちはー! って、え?」
「恵美っ!?」
遂に足音の主がリビングの扉を開けて、私達は見られてしまいました。
忍び足での侵入からの、急にドアを開け、大きな声での挨拶……
きっとこの方は驚かせたかったんですよね?
そして今、驚いた涼真兄さんは、この女性を"恵美"と呼びました。
それは涼真兄さんの彼女さんの名前だったはずです。
今日来る予定で私を紹介すると朝話していましたし……
というかさっきから若干現実逃避をしていたのですが、これはいわゆる修羅場という奴ですよね?
彼氏が見知らぬ女を抱き締めてしまっているのですから……
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




