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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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憧れ

ハルさん視点です。

 これまでにもユズリハ様の話をした事はありましたが、お父さん達には幼い私の拙い語彙力で語ったのみですし、圭には悲しい出来事しか話していませんでした。

 なので私達のユズリハ様への思いを語るのは初めてですね。


「憧れのユズリハ様に近づけるようにと、私達は努力していたんです。でも、努力の方法を少し間違えてしまったようで……」

「間違えた?」

「友人の1人は、ユズリハのように聡明になりたくてたくさん勉強しています。でも研究熱心になりすぎて、ユズリハ様のような聡明さとは少し違う、研究者のようになりました。渾名は"歩く辞書"です」

「お、おう……」


 私のこの簡易的な説明でちゃんと伝わったとは思えませんが、涼真兄さんはかなり驚いてくれています。

 彼女は自分の世界の事だけでなく、他の世界の知識も殆ど知らない事はないでしょうからね。

 本当に凄いですし、聞けばすぐに教えてくれるので助かってます。


「もう1人はユズリハ様のように強くなりたくて、ユズリハ様に戦い方を習っていました。本当はユズリハ様と同じ武器を用いて、ユズリハ様と同じような戦い方をしたかったそうなのですが、当時の幼い彼女にはユズリハ様のように大刀を振る事が難しかったんです。だから代わりに短刀を振り回していまして、その結果短刀の方が自分に合う事に気付き、今は短刀使いになっています」

「短刀を振り回して?」

「はい! あ、武器は違いますが、動き方とかは結構ユズリハ様に似てるんですよ! ユズリハ様程の強さはまだありませんけどね」

「そ、そうなんだ。凄いね……」


 圭も珍しく驚いてくれていますが、彼女の凄さはきっと1%も伝わっていないのでしょう。

 戦闘とはほぼ無縁とも言えるこの世界では、強さを理解してもらう事は難しいですから。


「あとの1人はユズリハ様のような美しい容姿を目指し、髪型や服装を真似ていました。ですが、顔の印象や普段の仕草が違い過ぎて、あまり似ていないんですよね。ユズリハ様は凛々しく品のあるお顔立ちでしたが、その友人はのほほんとした可愛い系ですので」

「遙花も可愛いわよ」

「ありがとうございます」 


 お母さんは私の事も可愛いと言ってくれますが、違うんですよね。

 彼女の可愛いさは、なんというか守ってあげたくなるような、庇護欲を唆られるような可愛さなんです。

 まぁ戦闘能力で言えば、私の数倍強いのですが。


「最後に私ですが、私はユズリハ様の口調を真似していたんです。ユズリハ様は常に敬語で、誰に対してもとても丁寧に対応されていました。あの気品に溢れる姿に私も近づきたくて真似ていたのですが、段々と崩れてしまって……」

「それで今の話し方が楽になったのか?」

「そうです! 気が付いたら、これが楽でした」


 私は敬語のように喋ってはいますが、かなり中途半端な敬語です。

 何より品がありません。

 だからユズリハ様とは全然似ていないのですが、これはこれでいいと思っています。

 いくら憧れているからといって、その存在と完全に同じである必要性はないんですから。


「遙花達は、本当に皆ユズリハ様の事が大好きなんだね」

「はいっ! ユズリハ様はですね、私達にとっては第2の母のような、姉のような存在です。困った事があれば助けて下さって、相談にも乗って下さって、いつも誰かの為に行動されていて……完全無欠の存在でした」

「……遙花」

「はい……」

「よく、頑張ったね」

「……っ、はい」


 今度は流石に、自分が泣いている事に気付きました。

 そして、そんな私をお父さんは抱きしめてくれて……

 楽しくユズリハ様の話をしたかったのに……上手くいきませんね。


「は、話し方なんて、直そうと思えば簡単に直せるものだと思うんです……」

「うん」

「で、でもっ……なんか、その……この話し方のきっかけがユズリハ様への憧れだったからこそ、直してしまえばユズリハ様との繋がりを、失ってしまう気がして……」

「いいよ、無理に直さなくて。それも遙花らしさなんだから」

「……ありがとう、ございます」


 お父さんの腕の中はとても温かいです。

 あの時も、私はこの温もりを求めて帰ってきたんですからね。

 もう吹っ切れたものだと思っていましたが、まだまだですね……


「さぁ、そろそろ朝ご飯を食べようか。ユズリハ様との楽しい思い出話も、もっとたくさん聞かせてくれるかな?」

「もちろんですっ! 皆でお花見や紅葉狩りをした時の話とか、皆で新しい世界の散策に行った話とか、面白い話がたくさんありますからね! 是非聞いて下さい!」

「それは楽しみだね」

「面白そうだな」

「そういえば土地神様も、遙花達がよく遊びに来てたって言ってたね」

「あら、圭君は土地神様にお会いした事があるのね」

「はい。遙花達は土地神様の背中の上でよく遊んでいたそうですよ」

「土地神様の背中の上!? お、おい……大丈夫なのか?」

「大丈夫ですよー」


 朝から二度も泣いてしまいましたが、それ以上にたくさん笑う事も出来ました。

 もちもちパンのサンドイッチも相変わらず美味しくて、本当に最高の朝でした!

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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