分身体
圭君視点です。
メモリアさんからハルさんは"真実"をとても大切にしているのだと教えてもらった。
ミオさんは"崇高"で、メモリアさんは"記憶"らしい。
皆それぞれ自分の役割を持っていて、それに基づいた行動をしているんだろう。
「ミオはその……何人もいるんです」
「は?」
「皆さんが先程会っていたのは、メインのミオです。よく笑っていて、人を誂うのが好きな傾向にありますね。だから崇高というものとは結び付きにくいところがあるんでしょう」
「その言い方だと、まるでメインではないミオさんは、全く笑わない人のようだね?」
「そういう訳でもありませんが……でも、メインのミオよりも感情が乏しいですね」
涼真さんがミオさんが崇高だという事が理解出来ないと言っていたからか、メモリアさんはミオさんについてを教えてくれた。
少し言いにくそうに話しているみたいだし、会社の世界の方の決まり事で話せない事も多いんだろう。
でも、今の発言はちょっと気になるな……?
「あの? 僕は以前、ミオさんの分身さんに会った事があるんですけど、今日のミオさんとあまり変わらない感じでしたよ?」
「それは、メインのミオの分身体だからです」
「えっと……?」
「まず、大元のミオがいます。その大元が分身体をたくさん作りまして、その中の1人をメイン……リーダーと定めました」
「さっきのメインのミオって奴も、結局は分身体って事か?」
「そうです。だから圭さんが以前会っているのは、ミオの分身体の分身体です」
「な、なるほど……」
あのミオさんも分身体だったのか。
ハルさんの闇堕ちを警戒して、たくさんの事をしてくれていたあのミオさんが……
それなら最初に僕を夢で応援してくれたミオさんや、闇堕ちについてを教えてくれたミオさんも分身体だったって事なんだろうな。
となると、僕は未だにミオさんの大元の本体には会っていないという事になるのか。
ん? だったら……?
「答えられない事なら答えなくてもいいんですけど、大元のミオさんって活動しているんですか?」
「はは……流石ですね。そんな鋭い事を聞いてこられるとは……」
「じゃあやっぱり……」
「はい。圭さんのお察しの通り、大元のミオは活動していません。自身の力の殆どをメインのミオに託して眠りに着いています」
「なんでそんな……」
「まぁ色々とあるんですよ。ですから、あのミオがあまり崇高らしくないのは仕方のない事なんです。大元のミオは、本当に崇高な感じの存在ですよ」
ハルさんの闇堕ちをあれだけ警戒していた人が、分身体にその重役を任せる訳はない。
それにミオさんの家だと言っていた空間だって、あのミオさんを軸に動いていたんだ。
分身体にそこまでの権限を渡しているのは、自身が全く動く気がないからだろうと思ったけど……
「一番安全にハル姉さんに埋め込まれた闇を取り除く方法は、大元のミオが分身体に分散させている力を収束して、その力で闇を打ち消すというものでした。ですがそれは、大元のミオを目覚めさせる事になります」
「ダメなのか?」
「ダメという事はありませんが……その、かなり大がかりな事になりますし、各地にいるミオがいなくなるというのは……」
「世界に悪影響なんだね?」
「そ、そうです。私達がミオの代わりに行く事で、なんとかミオを収束させられないものかと考えてはいたのですが……」
「ハルさんに知られれば、そんな無理をしなくてもいいからと、自分が危険になる方法を取ろうとしてしまうから出来なかったんですね」
「はい……」
それでこの方法に切り替えたのか……
ハルさんに皆さんとの関係を取り戻させる事も出来るし、多少危険だとはいえ、事前に闇堕ちに備える事も出来るから。
「……ん?」
「どうした?」
急にメモリアさんが誰もいない方を向いたので何かと思うと、その空間が歪んで、
「度々どーもー。そろそろ話は終わりましたー?」
と、ミオさんが現れていた。
「ミオ!」
「とりま用事片付いたから、戻ってきたよー」
「あっそ」
「なになに? メモリアが素っ気なーい」
「よう、崇高なミオちゃん」
「ん? 崇高な……メーモーリーアー?」
「なによ。話しちゃダメなんて言われてないから!」
「確かに言ってないけどねー? まぁいいや。そろそろ帰るよ」
「あ、うん」
涼真さんの挨拶でメモリアさんに自分が"崇高"なのだと話されている事が分かったみたいで、ミオさんはメモリアさんを睨んだ。
だけどそんなに怒っている様子はなく、相変わらずの雰囲気だ。
さっき消えた時は、真面目な感じだったのに。
僕達にとったら数分前とはいえ、ミオさんは今、どれだけの時間を別の世界で過ごしてから来たんだろうか?
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




