知識の活用
ハルさん視点です。
今日もいつものように圭君家にお邪魔しています。
毎日美味しいお昼ご飯を頂いていますし、本当にお世話になってます。
そして毎日、キャベツ入ってます。
圭君のご実家から野菜がよく届くとのことでしたが、そんなにキャベツばかり届きませんよね?
多分圭君、私の為にキャベツ買ってますよね?
確かにキャベツは好きですが、無いものをわざわざ買って頂いてまでとかは、さすがに申し訳なさ過ぎます……
それにいつも違う料理にキャベツを使ってくれてます。
多分そんなにキャベツを使った料理ってないですよね?
あまり料理に詳しくないので分かりませんが。
今日のご飯もホイコーロー? とかいう名前ですし……
よく分かりませんが、キャベツ料理を調べてくれてるとかなら本当に申し訳ないです。
一応圭君に聞いてみたら、料理のレパートリーを増やしてるだけだと言ってくれました。
本当に優しいですね。
私は確かにキャベツが1番好きですし、野菜全般好きですが、別に他の料理が嫌いというわけでもないですからね。
キャベツ縛りとかなしで全然大丈夫です。
明日はマーボードーフ? とかいう名前のを作ってくれるそうです。
その料理がキャベツ料理なのかは知りませんが、キャベツ無しでいいとお伝えしましたから。
その方が圭君も色々な料理作れて楽しいと思いますし、私も圭君の色んな料理を食べてみたいですからね、楽しみです。
あ、もちろんキャベツ入ってても大歓迎ですけどね。
「じゃあ、今日はフィナンシェ作ってみましょうか」
「えっ? 昨日のですか?」
お昼ご飯を食べ終わったところで、圭君はそういいました。
昨日の美味しかった焼菓子を作らせてくれるみたいです。
「昨日のほど美味しいのは出来ませんよ。それにうちにはフィナンシェ型がないので、完璧なフィナンシェは作れませんよ」
「型? ですか?」
「フィナンシェは"金持ち"とかの意味があって、フィナンシェ型って呼ばれる金塊の形の型で作るですよ」
「あー、あれは金塊の形だったんですね」
なるほど、金塊の形ですか。
確かにあれが積んであったら、金塊の山みたいに見えますね。
でも形が違うだけですよね?
それで完璧が作れないとは、圭君は料理の形とかも気にするみたいですね。
「フィナンシェ型はありませんが、普通の焼菓子型で作っていきましょうか」
「はい。またクッキーの時みたいに、オーブンは先につけますよね?」
「そうですね。あと、今回は型にそのまま生地を流して作るので、先に型にバターを塗っておきます」
「はい」
圭君は一緒に型にバターを塗ってくれていますが……
これだと圭君は勉強、出来ませんよね?
「あの、圭君? 圭君の勉強の邪魔はしたくないので、いつもみたいにやり方さえ教えて頂ければ、あとは頑張りますよ!」
「いえ、フィナンシェはちょっと、説明しづらい工程があって……なので最初は僕も一緒にやりますよ。勉強もたまには息抜きしたいですから」
「そうですか? それならよろしくお願いしますね」
クッキーの時は、作り方だけ教えてもらいましたが、フィナンシェは一緒に作ってくれるみたいです。
勉強の邪魔になると思ったのですが、息抜きしたいと言われてしまいました。
確かに毎日ずっと勉強は疲れますよね……
「最初に、1番説明しづらい焦がしバターをつくっていきますね」
「焦がしバターですか?」
「はい。フィナンシェの1番の特徴ともいえるのは、焦がしバターです。バターを焦がして茶色くするんですが」
「あぁ、メイラード反応ですか」
「さすがですね。そうです、これがフィナンシェの芳ばしさの決め手になるので難しいですよ。少し色が付き始めたと思ったら、すぐに色が変わってくるので」
メイラード反応を実際に使った事はありませんが、知識としては知ってますよ。
タンパク質やアミノ酸と糖が、熱したりすることで褐色物質を作る反応ですね。
芳ばしくするのに利用されているそうです。
「どれくらい焦がすんですか?」
「僕は結構濃いめに焦がしてある方が好きなので、今日は少し濃く焦がしますね。でも好みにもよるので、色々試してみてハルさんの好きなように作って下さいね」
圭君は濃く焦がしたのが好きと……
覚えておきしょう!
「焦がしているときは常に混ぜてて下さいね。火の通り方にムラができてしまうので」
「はい!」
「こんなもんですかね、っと」
圭君は結構焦がしたバターの入った鍋を、火を止めてコンロからはずすと、
ジュー
と、濡らしておいてあった布巾の上にのせました。
そして1度その布巾をとり、もう1度濡らしてまたその上に鍋をおいて、
ジュッ
と、してます。
「これくらい鍋のあら熱がとれてれば、置いている間に鍋の熱がバターを余計に焦がしてしまうのを防げます」
「なるほど~、今のは鍋を冷ましてたんですね」
「布巾をもう1度濡らす時は多少熱いので、気をつけて下さいね」
「はい」
確かにこれは、実際にやって見せてもらう方が分かりやすいですね。
「じゃあ、このバターはとりあえず置いておきます。次は生地の方ですが、こっちも少々難しくて」
「頑張りますっ!」
「ハルさんがやる気満々みたいで良かったです。とりあえず先に、薄力粉とアーモンドプードルを混ぜて、一緒にふるいます」
「はい! 何故別々にふるわないんですか?」
「粉を均一にするためにと、後のグルテンの形成を抑制するためですね。あ、グルテンは」
「粘りけですね?」
「そうです」
グルテンもちゃんと知識としては分かってますよ。
パンとかには大事ってことも知ってますが、フィナンシェにはグルテンは必要ないようです。
「では、次は卵白ですが、これはあんまり泡立てないように混ぜてください。空気を含んでしまうと、焼いたときに変な風に膨らんでしまいますから」
「泡立てないように、ですね! 了解です!」
「卵白がほぐれたら、砂糖を入れて下さいね。今日は砂糖ですけど、よりしっとりとさせたかったら、ハチミツとか使っても美味しいですよ。その辺もハルさんの好きなようにアレンジしてくださいね」
「おぉ~、いいですね。ハチミツ」
焦がしバターに、ハチミツにと、フィナンシェもまたクッキーみたいにアレンジが色々と出来そうですね!
楽しくなってきました。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




