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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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強引

圭君視点です。

「ではでは、ハル姉さん? 心の準備はいいですか?」

「よくないです……」

「バッチリという事で!」

「……」

「繋げますね!」

「……はい」


 ハルさんの意見を全く聞く気がないミオさんは、また空間を歪めてくれた。

 ここに入れば、天沢さんの家に繋がっているんだ。


「ハルさん、行きましょう?」

「いえ、先に珠鈴ちゃん達の方に行かないと……」

「あ、そうでしたね! ではちょっと失礼して……」


パチッ!


「はいっ! これで問題ありませんね!」

「おぉ……凄いですね」


 ミオさんが指を鳴らすと、ハルさんがもう1人現れていた。

 もう1人のハルさんとは言っても、多分このハルさんはミオさんの分身さんがハルさんに扮しているんだろうけど。


「私が珠鈴さん達の方へと戻り、用事が出来たからと別れてきます。ですのでハル姉さんは安心してご自宅に向って下さいね!」

「で、でも、本当にあの方々の記憶を戻すのなら、メモリアにも連絡をとらないといけませんし……」

「そこもご安心下さい! 既に連絡済です」

「……」

「ハルさん、行きましょう?」


 時間稼ぎをしたって変わらない事は分かっているんだろうけど、それでも素直に行くとは言えないみたいだ。

 それなら、少し可哀想だとは思うけど、強引にでも手を引いてあげるべきだろう。

 ハルさんが恐れているような、皆さんに拒絶される未来なんてあり得ないんだから。


「ハルさんっ!」

「あっ!」


 ハルさんの手を引きながら、歪みに向って飛び込んだ。

 そして、次に僕の目に映った光景は、僕が行く時と同じ状態のままの皆さんで……


「え……」

「け、圭……?」


 そういえば、ミオさんの生み出した空間内にミオさんがいる時は、他の世界の時間は止まるんだった。

 だから皆さんからしたら、僕は瞬きをする間もないほどの一瞬でハルさんを連れてきた事になってるんだろうな。


「あ、えっと……ただいまです」

「……」

「うん、おかえり。それと、君がハルなんだね?」

「……」


 ハルさんは俯いていて、誰とも顔を合わせようとはしていない。

 僕を握る手も弱々しくて、僕が離してしまえば、すぐに何処かに消えてしまいそうだ。


「その……会いたかったよ」

「……」

「圭君から話を聞いてね、君に会える事をとても楽しみにしていたんだ」

「……」

「こんなに可愛らしいお嬢さんだとはね……ん? いや、君……前にも会った事があるね……」

「あぁ、そうね。どうも見覚えがあると思ったのよね」

「俺も覚えてるぜ、あの時の子だろ?」

「ど、して……?」

「印象が強かったんだ。走り去って行く君から、どうしても目が離せなくてね……あの時は、僕達から記憶が消えたかの確認に来ていたんだね?」

「つまり、あの日に消したって事か……」

「……」


 皆さんはハルさんが記憶の確認に来た日の事を覚えていたみたいだ。

 10年以上も前の、その日の幼い女の子の事を……

 その事実はハルさんにとっても予想外だったようで、ずっと下を向いていたハルさんは顔を上げて驚いたけど、またすぐに俯いてしまった……


 でも、そんなハルさんに陽茉梨さんは近づいていき、


「ねぇ? もっとよく顔を見せてちょうだい?」


と、ハルさんの頬に手を添えて、視線を合わせてくれている。

 ハルさんは必死に目を逸らそうとしているけど、次第に涙が溜まっていく陽茉梨さんを見て、目が逸らせなくなってしまったみたいだ。


 そして遂に、陽茉梨さんの瞳からは大きな雫が溢れていった。


「うっ……あ、会えて嬉しいわ!」

「あ、あのっ、えっと……すみません……」

「謝らなくていいから、だから……少しだけ、こうさせていて……」

「っ、…………はい」


 ハルさんを抱きしめて泣く陽茉梨さん……

 そんな陽茉梨さんの背に手をまわす事が出来ず、どうしたらいいのかも分からず、ハルさんは固まってしまっている。

 まぁハルさんの片手は僕が握っているままだから、両手で抱きしめ返す事は出来ないんだけど。


 そんな進展のしない空間に、


「わわっ!」


ドサッ……


「ちょっと、押さないでよっ!」

「あははー、ごめんごめーん」


 という、明るい声が聞こえたと思ったら、見覚えのない女性が1人リビングで倒れていて、その後ろでミオさんが立っていた。

 今までの会話の流れからして、今倒れている女性が天沢さん達からハルさんの記憶を消したという、メモリアさんなんだろう。


「って、ちょっとやめてよ。超間が悪いじゃん」

「そうみたいだね」

「ちゃんとしたかったのに……やり直させてよ」

「じゃあ今見られたの、記憶消しとく?」

「あのねぇ、そんな簡単に使っていいものじゃないのよ? 記憶消去ってのは」

「そうだねー。あのメモリアが今はそう思ってくれているなんて、私も嬉しいよ」

「昔の話はやめて」

「はいはーい」


 何か色々ミオさんと言い合いながら立ち上がったメモリアさんは、僕達の方へと近づいてきて、


「お初にお目にかかります。私が皆さんからハル姉さんの記憶を奪った張本人。メモリアです」


と、とても綺麗なお辞儀をしながら自己紹介をしてくれた。

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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