結論
ハルさん視点です。(回想)
闇を倒せた事に安堵し家に帰った私が見たのは、泣きじゃくるお母さんと、お母さんを支えながらお父さんを睨む涼真兄さん、そして、呆然と立ち尽くしていたお父さんでした。
でもそれは今思えばそんな状況だったというだけで、当時の私は闇に憑かれた事で生命力を吸われてしまったお父さんの心配しかしていなかったんです。
「ただいまです。お父さん、体調はどうですか?」
「……は、はる……?」
「生命力は食事や睡眠で回復します。今日はゆっくり休んで下さいね」
「あ、あぁ……」
「お母さんも涼真兄さんも、怖い思いをさせてしまってごめんなさい。ちゃんと倒して来たので、安心して下さいね」
「え、えぇ……」
「……そ、そうか……」
その日のその後の事は、いつもより静かな食卓で夕食を食べて、そのまま寝ました。
静かなのは、馴れないことに驚いたからだと思って、あまり深く考えていなかったんです。
でも、その日からお父さんもお母さんも涼真兄さんも、全員変わってしまいました……
お母さんはお父さんを避けるようになりました。
私にも笑いかけてはくれなくなって、周りに人がいないところではいつも泣いていました。
涼真兄さんはあまり家に帰って来なくなりました。
一緒にも遊んでくれなくなって、探すと公園で1人で遊んでいたんです。
それも、遊びと言うよりは、暴れているようで……
そしてお父さんは……私を怖がっていました。
少し近づいただけでも怯えたように逃げてしまって……
それでも無理をして触れようとしてくれていたのですが、その手は震えていて……
私達にとっての闇というのは、わりとよく発生する敵に過ぎません。
ですが、闇を知らない人からしたら恐ろしい化け物です。
その感覚のズレに気付いたのは、もう怯えきってしまった後の事で……
だから私は決めたんです。
もう家族を私の事情に巻き込まないようにする為に、家を出ようと。
でも、衝動的なその判断が正しいかどうかは不安だったので、会社の世界で皆に相談しました。
「今日は皆に、相談にのってもらいたくて……」
「ハルからの相談なんて珍しいね」
「そうだね……ごほっ」
「まぁでも、この間の事なんでしょ?」
「はい……先日の一件以降、私の存在は家族を苦しめています。何より私がいれば確実に闇に狙われてしまいますが、今の私には闇を撃退する力もありません……このままでは、私は家族に迷惑をかける存在でしかないんです」
当時の私達に残された力では、自分の世界の浄化すらも行えませんでした。
となると闇はまた発生する事になりますが、そうなれば闇に狙われるのは家族達です。
闇は浄化出来る存在の近くにいる者を操ろうとしますからね。
「だから家を出ようと思うのですが、どう思いますか?」
「んー、私は賛成だよ。っていうか実はね、私も同じ事を相談しようと思ってたんだ。力が足りなくて浄化出来ないから、これから闇に狙われるよって家族に話したら、皆顔が青ざめちゃってさ……ちゃんと皆が私を襲っても大丈夫って説明したのにさ」
「私はもう出るって決めてたから、ハルの意志も尊重するわ。浄化が出来ない上に、こうも体が動かしづらいとね、皆が襲ってきた時に誤って殺しちゃいそうだし」
「そっちは、体の状態が魔力に影響しちゃう世界だもんね。それは確かに殺っちゃうわ」
「でしょー?」
相談した結果、家族と離れるという決断を肯定してもらえました。
というよりも、2人とも同じような状況で、同じ事を考えていたみたいでした。
2人の世界は私の世界よりも淀みが溜まるのが早いですからね。
闇に狙われる頻度も高いですし、早々に人と関わらない生活に切り替える必要があったんでしょうね。
「ごぼっ……わ、私は、闇はミオが担当してくれる事になったけど、この血を吐く体質に……なっちゃったから、げほっ、げほっ……」
「ちょっと! 大丈夫?」
「う、うん……大丈夫、大丈夫〜。大丈夫なんだけどね、大丈夫だって事を分かってくれないから、無駄に心配されてるの……」
「そりゃそうでしょ……」
「事情を知ってる私達ですら心配になるんだから」
「ごぼっ……はははは、だよね〜」
目の前で血を吐いているのに、大丈夫と言われたところで信じられる訳ありませんよね。
一応私達は、血を吐いてもすぐに回復しているという事を知っていますが、そう話したところで家族の方々は納得出来ないでしょう。
私以外の3人も皆、力を使いすぎた影響で、家族と上手くいっていませんでした。
だからこの話し合いでは、全員家族から離れて暮らす事にするという結論で終わったんです。
ただ、家族から離れる事で解決出来る3人とは違い、私の場合は家族から記憶を消さなければいけませんでした……
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




