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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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迷惑電話?

陽茉梨さん視点です。

♪♪♪♪♪


気がつくと、家の電話がなっていた。

あの人や涼真宛の電話なら個人の携帯にかけるでしょうし、おそらくはセールスか何かかと思って電話に出ると、


「あ、あのっ! 突然のお電話でごめんなさいっ! 天沢さんのお宅ですよね?」


と、相手は女の子だった。

それもかなり動揺しているのか、慌てた様子で……


「え? えぇ、そうですけど……?」

「えっと……その、お話ししたい事がありまして、お時間を頂きたいのですが……」

「……はい?」

「あの、その……」


何か落ち着かない様子ではあるけれど、とても丁寧に話してくれている。

そんなに悪い子ではないのでしょう。

ただ、聞こえてくる声の感じからして、向こうはこの電話をスピーカーにしているのが分かる。

私の通話相手はこの女の子だけじゃない。


「どういったお話でしょうか?」

「それは……」

「なんですか?」


話がしたいというから話の内容を聞いただけなのに、言い淀まれた。

しかも、


「む、娘さんについてのお話を……」


なんて事をいう。


「……娘?」

「はい、えっとハル……あ、いやっ、その……」

「あの、さっきからなんでしょうか? うちに娘はおりませんし、間違い電話ではありませんか?」

「間違いじゃないですっ! 私は天沢さん家の娘さんの知り合いで、それでっ!」

「すみません、お電話変わりました。いきなりで大変申し訳ありませんがお話したい事がありまして、お時間頂けませんでしょうか?」


動揺して言葉に詰まっていたところから、急に向きになったような様子に変わり、電話相手も落ち着いた女性へと変わった。

最早怪しさしかないし、どういう類のものかは分からないけど、新手の詐欺か何かだと思って、


「よく分かりませんが、他を当たって下さいっ! 失礼します」


と、電話はきった。


娘について話したいだなんて……

娘さんの知り合いだとか言っていたし、適当な家に電話をかけて、その家の人が娘に何かあったのかと心配しだしたらお金を取ろうとか、そういう感じの……

せめて家族構成くらい調べてからかけて来ればいいものを。

うちには女の子なんていない……の、に?


「ただいまー。ん? どうした母さん。そんな電話の前に突っ立って」

「あぁ涼真、おかえりなさい。その……今ね、ちょっと変な電話があってね」

「何? 迷惑電話?」

「ねぇ、涼真? うちに娘はいないわよね?」

「はぁ? 恵美(めぐみ)の話か?」


恵美ちゃんの話だったのかしら?

でも、それならそれで名前をいうでしょうし、名前も言わずに娘さんについて話したいだなんて、やっぱり迷惑電話だったとしか……


「いえ、恵美ちゃんの事ではないと思うわ。間違いなく天沢さんの家の娘さんの知り合いとか言っていたし、本当に恵美ちゃんの知り合いなのなら、まだ結婚してない事も知っているでしょう」

「まだとかやめろよ、照れるだろ。だけどそうなるともう、父さんに隠し子がいるとしか」

「冗談を言ってないで、真面目に考えて頂戴。何だか胸が落ち着かないのよ……」


あんな変な電話、無視して着信拒否でいいはずなのに、何故かそうしてはいけない気がして……

変に心がざわつくような……


「そんな深刻な顔して……相手、怖かったのか?」

「そういう訳じゃないんだけど……」

「まぁとにかく、変な電話は着信拒否だ! うちには娘なんていないんだから……いないよな?」

「えぇ、いないわ……よね?」


どうしていない事が間違いないと分かっているのに、こうもいない事を否定出来ないのかしら?

涼真も同じように悩み出してしまったみたいだし……


「女の子なんて、いないはずなのに……何故かいないという確信が持てないの……」

「そうだな……自分でいないって言うと、違うって言い返してくる自分がいる感じ……何なんだよっ!」

「はぁ……はぁ……」


呼吸がしにくい……

どんどん胸が苦しくなっていく……


「母さんっ、大丈夫か?」

「え、えぇ……」


カタッ!


「あ、写真が……」


私がしゃがみこんだ事で、心配して涼真が支えに来てくれた。

その拍子に棚に当たったようで、飾ってあった涼真のまだ幼かった頃の家族写真が倒れてしまった。


「あぁ、俺が直すよ……ん?」

「涼真?」

「な、なぁ、母さん? この写真、なんで俺と父さんはこんな変な隙間をあけて立ったんだっけ?」

「……え?」

「この隙間……まるで、子供がもう1人いたみたいな……」

「あ、あぁ……うぅ、うっ……」

「母さんっ!?」


何故かは分からない……

ただ、涙が止まらなくて……

私を心配している涼真も涙目になっていて……

でもその涙目の理由が、私を心配しているからじゃないのは分かって……


頭が整理出来ない。

心が落ち着かない。


「娘……私に、娘?」

「……かけ直そう、その変な電話相手に」

「で、でもっ! でも、でも……」

「あぁ、そうだよな。俺達が落ち着いていないのに、そんな変な電話、出来ねぇよな……」

「……あの人を待ちましょう。待って、ちゃんと話し合ってから、どうするのかを決めましょう?」

「そうだな……」


きっと今の私達は、正常な判断が出来ていないんだ。

こんなわけの分からない事で悩むだなんて……


そういえばあの電話相手の女の子、動揺してた時に"ハル"って言ったのよね……

意味のない単語だった可能性もあるのに、何故か耳に強く残っている気がして……

それを思うと、また涙が溢れてきてしまった……

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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