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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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238/331

血縁関係

ハルさん視点です。

圭君が瑞樹家の事を継ぐかどうかという話は、今まで全くされていなかったみたいです。

圭君のお祖父様は継いで欲しかったそうですが、純連さんとは子供達に好きな事をして欲しいという思いから対立していたようですし、そんな2人に挟まれていた健介さんも大変でしたでしょうね。

ですが今、圭君が継ぐ事を前向きに考えていると分かり、安心出来たと思います。

それも私の為にと……照れちゃいますね!


「圭の気持ちは分かった。だがまだまだこれからなんだ。今すぐにどう変わるという事もない」

「うん、ありがとう」

「大学で他にやりたい事を見つけたら、それを目指してくれてもいいし」


強制されないというのは、本当にお2人らしいですね!

私も圭君には圭君のやりたい事をして欲しいと思っていますし、その支えになりたいと思っています。

それが農家さんでも、違う事でも全力で協力する所存ですからね!


「なんならハルが家を継いでくれてもいいしな! ははっ!」

「私がですか!?」

「ちょっとあなた、そんな勝手な事を言って。ハルちゃんのご家族からの許可もまだもらっていないのに」

「そうだったな。圭も認めてもらっていないんだろ?」

「え、そうだったの?」

「違うのか? だから手を出さないんじゃ……」

「あなたっ!」

「おっと、悪い悪い」


さっきまでは少し暗めに真剣な話をしておられた健介さんは、今はとても上機嫌に話されています。

楽しそうで何よりなのですが、その話はちょっと避けさせて頂きたいので、話題の変更を……


「……ハルさん」

「はい?」


どうにか話題を変えようと思っていると、圭君に呼ばれました。

でも圭君は何かを思い詰めたように下を向いていて……?


「圭君? どうしました?」

「実は、ずっと言い出せなかったんですけど……」

「なんでしょう?」


圭君が私に何かを言いたいのだという事は分かっていました。

それを今言う気になったみたいですが、そんなに言いにくい事なのでしょうか? と、心配していると、


「僕、ハルさんのご両親に挨拶がしたいですっ!」


と、圭君は私を真っ直ぐに見つめて言ってきました……


「両親に、挨拶……」

「はいっ!」


……ど、どういう事でしょうか?

以前にも私に家族がいないという話はしたはずなのですが、忘れてしまったんですかね?

でもあの圭君が? それはおかしい気がします……

というか今、それ系の話から逃れる話題探しをしていたところだったんですが、これではもう逃れようが……


「そうだそうだ、ちゃんと行って来い」

「野菜も持って行く? 果物の方がいいかしらね?」

「これでちょっとはヘタレも払拭かな?」


皆さんとても楽しそうに話されていますので、この空気を壊すのは本当に忍びないのですが、流石にもう急な話題変更は出来ませんからね……


「あ、あの……圭君? 私に家族はいませんよ?」

「……」

「えっ……」

「それって……」

「そうだったのね……」


やっぱりこういう空気になっちゃいますよね……

申し訳ないです……


「違いますよね、ハルさん」

「はい?」

「いえ……ハルさんにとったらそれが真実ですか。ハルさんは嘘を言いませんもんね」

「け、圭君?」

「では、言い方を変えさせて下さい」


圭君は少し悲しそうですが、今度は何か意を決したような真剣な面持ちで、


「ハルさんと血の繋がりのある方に、挨拶がしたいです。何処にお住まいなんですか?」


と……


「圭?」

「お兄ちゃん?」

「な、何を言って……」

「ごめんなさい。こんな事を言ったらハルさんが困るのは分かってたんです。でも、僕は知りたいです。ハルさんの大切な人達の事を!」


流石は圭君ですね……

さっきのは私に家族がいないという事を忘れてしまっていた訳ではなく、わざとその話を振ったという事なのでしょう。

そして嘘を付けない私に言い逃れが出来ないような質問を……


私の言動が迂闊だったのでしょうね。

だから圭君は気付いてしまった……

そして、それを聞く事が私を困らせると分かっていたからこそ、ずっと悩んでいたんですね。

あれだけ悩ませてしまったのですし、今こうして聞いて下さった圭君の気持ちも無碍には出来ません。


「……引っ越し等をされていなければ、幼少期に私が育った家で今も暮らしていると思いますよ」

「そうなんですね……」

「ちょっと待ってハル姉! その人達は、ハル姉にとって家族じゃないの!?」

「私にはもう、あの方々の家族だと名乗る資格はありませんから……」

「ど、どうして?」

「あの方々には記憶が無いんですよ。私を産んだ記憶も、私を育てた記憶も。私という存在の記憶は何一つ、残っていないんです」

「記憶が、ない……?」

「えぇ、全て消してもらいましたから」


……そうです。

私はあの方々の家族ではありません。

あの方々はもう、自分以外のものに化ける力を持っていたり、世界の浄化なんて事をしていたりするような、こんな変な存在とは一切関わり合いがなくなったんですから……

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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