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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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後継者

圭君視点です。

康司君と如月さんが、僕がハルさんにしたい質問をしやすくするために始めてくれたババ抜きは、結局僕が1位上がりすることはないままに終わった。

もともとこの勝負で勝ったからと言って聞けるような事ではないから、勝っても聞くつもりはなかったけど、だからといって聞かないままでいるつもりもない。

康司君達も帰っていって、珠鈴がハルさんと2人きりにしてくれたけど、それでもやっぱり聞けないまま時間が過ぎていった。


明らかにハルさんは僕の事を不思議に思っている。

僕の態度をよそよそしく感じてしまっているんだろう。

それでもその事を言及しないのは、僕を気遣ってくれているからで……


「帰ったぞー」

「あ、お父さん! おかえりなさい!」

「早かったわね」

「そりゃあ今日は大切な日だからな! 圭は部屋か?」

「健介さん、帰ってこられたみたいですね」

「そうですね」


部屋の扉が少し空いていた事で、父さんが帰ってきた声がはっきりと聞こえた。

夕食もそろそろ出来上がるだろうし、勉強も切り上げよう。


「お兄ちゃんはハルちゃんと2人で部屋にいるよ」

「ご飯も出来上がるから、呼んで来てくれる?」

「邪魔はしない方がいいだろ」

「大丈夫だよ、お父さんが思ってるような状況じゃないだろうから」

「そうなのか?」

「お兄ちゃんはヘタレだからね〜」


パタパタと珠鈴がこっちに向かってくる音が聞こえる。

またヘタレって言われちゃったな……


「お兄ちゃん、ハル姉、ご飯だよー」

「うん、今いくよ」

「ありがとうございます」

「おぉ~これは豪華だな」

「腕によりをかけたわ! もちろん、ロールキャベツもあるからね!」

「ありがとう母さん」

「ん? 圭がリクエストしたのか?」

「うん。ハルさんの好きな食べ物だからね」

「わ、私の為にですか? 圭君の誕生日なのに……」

「喜んでいるハルさんが見られるのは、最高の誕生日ですからね」

「圭君……」


ハルさんは顔を赤らめて少し俯いた。

さっきのババ抜きでも散々はずかしめてしまったけど、これは大切な事だ。

ただでさえ僕の行動を不思議に思われてしまっているところなんだから、こうしてちゃんとハルさんへの好意を伝えていかないといけない。


「凄く美味しいよ、ありがとう」

「こっちのはどう? ハーブに拘ってみたのだけど」

「うん、面白い味付けだと思うよ。家で育ててるやつ?」

「そうなの。まだ販売にまでは着手できていないんだけど、話は進めていこうと思ってて……あっ、ごめんなさいね。仕事の話になっちゃって……」

「いいよ。母さんの趣味にも繋がるし、上手く進むといいね」

「えぇ!」


母さんも楽しそうだな。

元々植物とかが好きな人だし、その繋がりで父さんと結婚したんだから。


僕は特に家を継いで欲しいとかは言われていないし、珠鈴もパティシエになりたいと言っている。

だから仕事手伝いを僕達の方からする事はあっても、父さんと母さんの方から言われたりはしないし、2人共あまり仕事話を僕達にしようとはしない。

でもこうして仕事の話をしたことを謝ってくるというのは、やっぱり僕達を自分達の都合に巻き込まないようにと気を使ってくれているんだろうな……


「圭君はお家を継がないんですか?」

「え?」

「あぁ、そういえばそれね。私の中で自己完結してたから話してないままだった」

「……何の話?」

「ハル姉が若干勘違いしてるって話」

「私が勘違いですか?」

「うん」


僕と母さんの会話を見ていたハルさんに家を継がないのかと聞かれて、急だった事もあって答えに少し戸惑っていると、珠鈴がよくわからない事を言った。

ハルさんが何かを勘違いしてるとか……?


「お兄ちゃん。今は生物の勉強に力を入れてて、志望大学も生物系に変更したでしょ?」

「言ったっけ?」

「ハル姉から聞いた。で、ハル姉はお兄ちゃんが家を継ぐ為に生物に力を入れ始めたんだと思ったんだよね?」

「そうですね?」

「あぁ、そういう事か」

「そういう事」


よくよく考えたら、どうして僕が志望大学を変更したのかって話はハルさんにしてなかった。

だから僕が家を継ぐものだとずっと思っていたのか。

ちょっと恥ずかしいけど、ちゃんと話さないと。


「僕が生物に力を入れ始めたのは、少しでもハルさんのお役に立てたらと思ったからですよ。ハルさんが動物になってる時とか、その動物の特徴を僕も知っていた方がいいじゃないですか。だから植物の事よりも動物についてを専門的に学びたくて」

「えっと……私の、為に……?」

「ハルさんの為というよりは自分の為ですね。その方がハルさんの事をより知ることができますし」

「やっぱりね。お兄ちゃんに確認しようと思ってたんだけど、確認するより先にハル姉が動物に変身出来るって聞いたから、お兄ちゃんが生物の勉強をしてるのはそのためだってすぐに分かったよ」

「そうだったんですね。では、あの頃の圭君は……」


本当に珠鈴には何でも見抜かれているんだな。

そしてハルさんは、僕が生物の勉強に力を入れ始めたのがいつ頃だったのかを思い出して、また照れてくれている。


ただ、そんな微笑ましいハルさんとは対照的に、父さんは少し険しい顔をしていた……

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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