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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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ババ抜き

ハルさん視点です。

この後の誕生日パーティー用のタルトも完成して、純蓮さんと珠鈴ちゃんと一緒に食事の準備をしていると、


「ごめんくださーい!」


と、お客さんがみえました。


「あー、珠鈴」

「無理!」

「ハルちゃん、ちょっと見てきてくれる?」

「はい、分かりました」


手が話せない純蓮さんと珠鈴ちゃんに代わって玄関に出迎えに行くと、麗華さんと康司さんと何故か困惑した様子の圭君がいました。


「はは、ついさっきぶりですけど、ただいまです」

「自分の誕生日でまで仕事ばっかりしようとしてたんで、強引に連れて来ました」

「そうだったんですね」


圭君が一番後ろで少し困惑したようにしていたのは、2人に連れて来られたからだったんですね。

そもそも圭君が2人を招待したのなら、麗華さんはごめん下さいとは言わないでしょうからね。


「ハル姉? お客さん誰だっ……げっ!」

「珠鈴お嬢さん、『げっ!』は止めて下さいよ」

「何しに来たんですか? 帰って下さい」

「嫌われてる自覚もありますし、嫌われていて当然だとは思うんですけど、ちょっとだけお邪魔させて下さい」

「……」

「珠鈴、前にも話しただろ? 康司君とは友達になったんだから……」

「はいはい、分かってますよー。じゃあどうぞ、上がって寛いでいて下さい」


珠鈴ちゃんはまだ麗華さんと康司さんを嫌っているみたいですね。

2人にも色々な複雑な思いがあって、それによって圭君と和解出来ないままでいたわけですが、だからといってすぐには受け入れられませんよね。

私もあの時の康司さんの態度を許したかと言われると微妙な心境になりますし、圭君がいない間にもああいう事が何度かあったんだと思うと、珠鈴ちゃんは相当に複雑な心境だと思います。


「なんか凄くいい匂いがするね。ケーキ焼いてたの?」

「タルトですよ!」

「へー、いいね。あ、じゃあ今はお邪魔しちゃったかな?」

「いえいえ、丁度完成したところでしたから。良かったらお2人も一緒に……」

「ハルさん、それはダメだよ! 流石に珠鈴ちゃんが噴火しちゃうから」

「ふ、噴火……」


確かに噴火、してしまうかもしれませんね……

一緒に圭君の誕生日をお祝いして、少しは仲良くなれたらと思ったのですが……


「そうっすよ。俺達はちょっと遊んだらお暇するんで……」

「ゆっくりしていってもいいんだよ?」


康司さんもすぐに帰るというような事を言っていて、それを圭君が否定したのですが、その言葉を聞いた康司さんは圭君の自分とは遠い方の肩に手をかけてから耳元に顔を近づけて、圭君にだけ聞こえるような小声で何かを言い出しました。

何を話しているのかはよく聞こえませんが、圭君は少し楽しそうに見えます。

色んなすれ違いはあったようですが、今はこういう仲のいい友人となれているのですから、本当に良かったと思います。


「とりあえず上がらさせてもらっちゃったけど、何しようか?」

「なんか、パーティーゲームとかないのか?」

「トランプならあるよ」

「じゃあババ抜きをしよう! 負けた人は罰ゲームね!」

「えっ……」

「ハルさん、どしたの?」

「あの……私、ババ抜き弱いんです……」


まさかここであの最悪のゲームをする事になるとは……

これまで私は、ババ抜きで勝った試しがありません。

そんなによくやっていた訳ではありませんが、やると毎回必ず私が負けます。

"ジョーカーに愛された女"という二つ名までつけられた事があるんですから……


「へぇー、弱いんだ……じゃあやろう!」

「やるんですか……罰ゲームというのは何にしますか? 猫のモノマネですか? 猫のモノマネでお願いします」

「ハルさんの猫のモノマネも気には鳴るけど、今回は一番最初にあがった人が、負けた人に何か質問をする事にしよう!」

「質問? それは罰ゲームなのですか?」

「うん。負けた人はどんな質問でも答えないとダメだよ? どれだけ恥ずかしい事を聞かれてもね!」


私が負ける事が確定している以上、私に出来る範囲での罰ゲームにしてもらいたかったのですが、これは困りましたね。

麗華さんは私に恥ずかしい質問をしてからかおうとこのルールにされたんでしょうが、答えないといけないというルールなのが困ります。

普通に恥ずかしい事を聞かれるくらいならいいですけど、私の事では話せない事も多々ありますからね……


「……で、では私は料理の手伝いに戻りますので、あとは3人で……」

「ふっふっふっ。残念だったね、ハル姉。お母さんが私にも遊んでおいでってさ。はい、お茶です」

「ありがとう」


部屋から出ていこうとした私の行く道を塞ぐように現れた珠鈴ちゃんは、不敵に笑っています。

確かに珠鈴ちゃんまで料理のお手伝いを断られているのなら、私も断られる事は目に見えていますね。

これは逃げ場がないという事でしょうか……


「必ず答えないとダメっていうのは止めて、答えたくなかったら答えなくてもいいっていうルールならどうですか?」

「え……あ~、まぁそれなら……って、何でそんなにやる気なんですか! ババ抜き以外にしましょうよ!」


私が困っているのを察してくれた様子の圭君が助け舟を出してくれたのですが、それならそもそものババ抜きを止めようと言って欲しかったです……

そう言ってくれないという事は、圭君も私に恥ずかしい質問をしたいという事で……


「勝ったらハル姉に何質問しようかな~」

「どうして私に質問する事が前提なんですか! まだ勝負は始まっていないのに!」

「え、だって……ねぇ?」

「ハルさん、ごめんなさい。なんとなくですけど、ハルさんがババ抜きにどうして弱いのか、もう分かってるんです」

「そんなっ! じゃあそれを教えて下さいっ!」

「とりあえず1回やってみましょう。それで分かると思うので……」

「そんな確認は必要ありませんからぁ!」


そうして何故か私以外の全員がやる気満々で始まったババ抜きでしたが、結果は案の定私の負けでした……


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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