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桜色のネコ  作者: 猫人鳥


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お兄ちゃん

珠鈴視点です。

ハル姉がお兄ちゃんの事で悩んでる。

私にはどこからどう見ても、お兄ちゃんはハル姉の事が大好きだとしか見えないのに、ハル姉は最近のお兄ちゃんの態度に不安になってしまっているみたいだ。


確かに最近のお兄ちゃんは変だ。

どことなくハル姉への態度がよそよそしいし、さっきだって無理矢理話題を変えて逃げるように出ていった。

あれだけを見ていたら、今のハル姉のように避けられていると勘違いしてしまうのも仕方ない。

なんか、キスもお兄ちゃんからはしたことないらしいし……


でも私はこの間お兄ちゃんがハル姉へのプレゼントを選んでいるところを偶然目撃してしまった!

まぁ正確にいうと誰へのプレゼントかは知らないんだけど、あんなプレゼントを選ぶ相手となればハル姉以外には考えられない。

だから私からするとお兄ちゃんはただ照れているだけなんだけど……ハル姉、かなり深刻に悩んじゃってるんだよなぁ……


「お兄ちゃんってさ、昔っから凄く心配性なの」

「え?」

「本当に子供の頃からさ、自分の事とかそっちのけで私の心配ばかりしてて、でもそれを自分ではあまり自覚してなくてね。困ったもんだよ」

「ふふっ、圭君がとても心配性なのは、私もよく知っていますよ。私も必要以上に心配されましたからね」

「でしょでしょ! 気にかけてくれるのは嬉しいけど、流石にちょっと心配しすぎだよね」


やっぱりハル姉も無駄に心配されていたみたいだ。

本当に子供の頃からずっとお兄ちゃんは私の事を気にかけてくれていて、両親よりも親のような存在だった。

私に構ってばかりだったから友達がなかなか出来ないんだって私が気付いたのは、小学5年生の時。

それまでは本当にお兄ちゃんはずっと私といてくれた。


「今思い返すと、本当に酷いシスコンだったと思うよ。ちょっとでも時間があるとすぐに一緒に遊ぼうとしてきてさ、特にお人形遊びとかおままごととかね、全然自分は興味ない癖におもちゃを持ってきたりとか」

「あー、分かりますよそういうの。ボール遊びでボールを弱くしか投げて来なかったりとか」

「そうそう! こっちに合わせて遊んでくれようとして、失敗してるパターンね!」


私は別に、無理に私に合わせて遊んでくれなくても、お兄ちゃんが楽しいと思っている遊びに誘ってくれたらそれでよかったのに。

私がパティシエになりたいって思い初めて、お菓子をたくさん作るようになった時も、ずっと一緒に作ってくれていた。

なんなら私よりパティシエに向いてるんじゃないかと思うくらいには、お菓子ばっかり作ってる時期もあったし、本気で料理人の道を目指すつもりなのかと思わせられる程に料理も極めているように見えたのに、全然そうでもなくて……

あれもただ単に、私を喜ばせようとしてくれていただけだったんだよね。


「あと、ちょっと出掛けただけで凄く聞いてくるのもね。何処へ誰と行って何をしたのか、怖い思いはしなかったのか、困った事は起きなかったのかってさー」

「少しでも帰る時間が遅くなると、本当に大変ですよね」

「そうだよねー。何処へ行ったかも知らないのに、走って探し出したりしてさ」

「でも、そのお蔭で助かったりもしますよね。急に雨が降って来た時に傘を持ってきてくれたり」

「あるね、そういうのも」


過保護というのかなんなのか……

常に自分よりも私を優先してくれていた。

でもそんなのはお兄ちゃんにとってよくないと気付いた。

だから……


「小学5年生の時にね、お兄ちゃんに言ったんだ。もう私の事を気にしなくていいよって。このままだとお兄ちゃん、彼女も出来ないままだよって」

「圭君が、中学3年生の時ですか……」

「そう。丁度お兄ちゃんが色々悩んでいた時期だね。お兄ちゃんはあんまり自分の事を話してくれないから、これは私の推測だけどね、多分私がそう言った後に、学校で色々あったんだと思うよ。だから私が言った事もプラスされて、お兄ちゃんは凄く悩んだんだと思う。今まで自分にとって当たり前だった日常が全部壊れちゃったんだから……」


詳しくは知らない。

でも、この街はなんだかんだ噂が広まるのが早い。

だからお兄ちゃんが友人だと思っていた人達が友人ではなかった事や、心のないロボットだと言われていた事を知った。

この街から逃げたとか、家族を捨てたとか、ついに家族からも見放されたんだとか、散々噂されていた事も……


「それでも私にとってのお兄ちゃんはね、いつも何でも出来る人だったから、都会でも上手くやって行けてるって信じてた。全然連絡してきてくれないのも、相当忙しいからなんだろうって……私から自分の事を気にしなくていいって言ったんだし、連絡して欲しいなんて言って心配かけるのも嫌だったし……」

「珠鈴ちゃんの気持ち、とても分かりますよ」

「ありがとうハル姉。まぁ結局何が言いたいのかって言うとね、お兄ちゃんとハル姉が出会ってくれて、本当に良かったって事なんだよ。お兄ちゃんはハル姉に出会えたお蔭で、本当に幸せそうで……ちょっとヘタレだけどね」

「ヘタレではありませんよ?」

「うん! とにかくね? ハル姉は変な心配しなくていいからって事!」

「はい、ありがとうございます」


なんかいつの間にか話が脱線していて、今のお兄ちゃんの話というよりは、あの頃に私がお兄ちゃんに何を思っていたのかって話になっちゃったけど、これはこれで良かったかな?

ハル姉もお兄ちゃんの話が聞けて嬉しそうだし、少しとはいえ不安も拭えたように思う。


それと話してて思ったけど、ハル姉はお兄ちゃんのいる妹あるあるに詳しいみたいだった。

となると、もしかしてハル姉にもお兄ちゃんがいるのかな?

そういえばハル姉の家族構成とか全然聞いたことなかったな。


「ねぇ、ハル姉? ハル姉ってさ……」


ピーッ! ピーッ! ピーッ!


「あ、焼けましたー!」

「本当だね。うん、綺麗な焼き色!」

「あとは生チョコの方ですね!」

「そっちは……」

「ただいま~」

「あ、お母さんだ! お帰りなさーい」

「今日はとっても豪華なご飯にしないとだからね! 2人共、手伝ってね!」

「もちろんです!」


タルトも焼けて、夜ご飯の用意もして、お兄ちゃんの誕生日へ向けての準備が着々と進んでいっている。

若干今のお兄ちゃんとハル姉はすれ違い気味ではあるけど、そんなに問題視することもないはずだ。

お兄ちゃんには今までのお礼も兼ねて、絶対に最高の誕生日だと思ってもらう予定なんだから、残りの準備も頑張らないと!


そういえばさっきハル姉に何か聞こうと思ったんだったけど、なんだったかな?




読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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